AIvs弁理士を観戦した感想

10月10日に渋谷で行われた「AIvs弁理士」を観戦してきましたが・・・会場はすごい熱気でした!また、特許の鉄人と比べると若い人が目立った気がしました。そして何より、特許の鉄人に引けを取らず楽しいイベントでした。

イベントの概要

今回のイベントの概要は以下の通りです。
第1試合「画像商標対決」 実際に出願された画像商標1つに対し、似ている画像を三つを見つける。三つの中に特許庁の審査官が似ていると判断した画像が含まれていれば勝利。(制限時間10分)
第2試合「類否判断対決」 実際に出願された商標を2つ提示し、それが似ているかどうか(類否)を判断する。(お題10問、各問1分)正答率が高い方が勝利。
第3試合 「識別力対決」実際に出願された商標とその商品・サービスを提示し、特徴があるかどうか(識別力)を判断する。(お題10問、各問1分)正答率が高い方が勝利。

いずれも、審査官の第1回拒絶理由通知が基準となるということで、会場からは「審査官基準で大丈夫か?」の声も・・・(確かに意見書などで覆る可能性が低くないので正しい答えといえるのか微妙ですが、イベントの性格上仕方がない気がします)。

第1試合

感想として、AIの画像検索は非常に速いという印象です。対して、中村先生も10分でよく見つけてくるなと感心しました。また、第2,3試合と比較すると、動きがあるので見ていて楽しかったです。今回の企画では、クレームの作成経過を見せる特許の鉄人と比べて動きがないので、その辺りをどうフォローするのか気になっていたのですが、さすがに宮崎先生は見せ方を考えていますね。結論を言うと人間の勝利なのですが、AIの可能性を感じた試合でした。宮崎先生によると画像の類否判断はAIが得意とするところということでしたが、今回はあまりよい結果を出せなかったようですね。

問題

人間回答(正解)

AI回答(はずれ)

第2試合

第3試合でも共通の感想ですが、商標の背景情報(商標を付す商品の情報とか、取引態様の情報とか)がないので弁理士には非常に不利なお題だと思いました。審査基準を引っ張ってくると「商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。」ですので、単に商標を見比べて類否を判断しても、審査官と同じ結論をだすことは至難です。この辺りが、弁理士、AI、一般人(観客)の間で正答率に差が出なかった理由かと思います。結果的には、人間(弁理士)の勝利なのですが・・・。

なお、見せ方の問題として、第2,3試合は司会と解説の腕次第という感想でした。観客参加型にしたのはさすがに飽きさせないやり方がうまいと思いましたが、私みたいに見るだけを楽しみにしている人間にとっては少々退屈でした。ただ、解説しようにも一問一分では難しいので、弁理士がその回答に至った理由を詳細に聞きたかったなぁと(これだと一般の人はつまらないかも?)。

問題
1問目「minorie」vs「minoria」
2問目「リビール」vs「RibiL」
3問目「もちもち~ず」vs「MOCHIMOCHIEETS」
4問目「クリアリューシュ」vs「ClearReju/クリアリージュ」(二段併記)
5問目「晴れる家」vs「ハレの家」
6問目「エンゲート」vs「N-Gate」
7問目「サンテヴェール」vs「santebelle/サンテベル」
8問目「ZEENY」vs「Jinnee」
9問目「グランミール」vs「グランソール」
10問目「foriio」vs「FORii」

回答
1問目 類似「人間はずれ」vs「AIはずれ」(私正解)
2問目 類似「人間正解」vs「AIはずれ」(私はずれ)
3問目 非類似「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
4問目 類似「人間はずれ」vs「AI正解」(私正解)
5問目 非類似「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
6問目 類似「人間正解」vs「AI正解」(私はずれ)
7問目 類似「人間正解」vs「AIはずれ」(私正解)
8問目 類似「人間はずれ」vs「AIはずれ」(私はずれ)
9問目 非類似「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
10問目 非類似「人間正解」vs「AI正解」(私正解)

補足
8問目「ZEENY」vs「Jinnee」で瀬戸先生が類似の答えに疑問を呈していましたが、「ZEENY」(登録第6139268号)の称呼は「ジーニー」であるところ、「Jinnee」(登録第5152482号)の称呼は「ジニー」であるので、称呼類似ということでしょう。とはいえ、外観が大きく異なり且つ「ZEENY」が造語であって特定の観念を持たないことからすると、非類似という瀬戸先生の判断(意見書で逆転可能)には同意します。

第3試合

第3試合で初めてAI勝利となりました。第2試合も通じて、今回は『プロ(弁理士)も案外大したことないな』という感想を持った方もいるかなと思いました。ただし、上述した通り、(AIと対等に対決してAIの力を見せる趣旨からするとしょうがないけれども)人間不利な状況でしたので、これが先生方の実力ではないはずです。もっと言えば、自分が意見書を書けばひっくりかえせるという自信が、弁理士に正しい判断をできなくさせる要因になった気もします。

問題
1問目「Mexican」(区分:25 指定商品:履物)
2問目「メッシュ美人帽」(区分:25 指定商品:帽子)
3問目「ほっと安心帽」(区分:25 指定商品:帽子)
4問目「ダブル盛」(区分:25 指定商品:被服)
5問目「ふわふかスリッパ」(区分:25 指定商品:スリッパ)
6問目「わたしのぼうし」(区分:25 指定商品:帽子)
7問目「快頭ずきん」(区分:25 指定商品:ずきん)
8問目「ヤンバルクイナ」(区分:25 指定商品:被服)
9問目「DIAMOMDHEAD」(区分:25 指定商品:被服)
10問目「発電下駄」(区分:25 指定商品:げた)

回答
1問目 識別力なし「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
2問目 識別力あり「人間はずれ」vs「AI正解」(私正解)
3問目 識別力あり「人間正解」vs「AIはずれ」(私正解)
4問目 識別力なし「人間正解」vs「AIはずれ」(私はずれ)
5問目 識別力あり「人間はずれ」vs「AI正解」(私正解)
6問目 識別力あり「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
7問目 識別力あり「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
8問目 識別力なし「人間はずれ」vs「AIはずれ」(私はずれ)
9問目 識別力なし「人間正解」vs「AI正解」(私正解)
10問目 識別力あり「人間はずれ」vs「AI正解」(私正解)

補足
8問目「ヤンバルクイナ」(商願2018-110324)で識別力がない理由に疑問がありました。拒絶理由通知書によると『「ヤンバルクイナ」をデザインした商品が広く取り扱われている実情があります。』とのことなので、これを当てるのは難しい・・・というか問題が悪いと言いたい。あと、4問目「ダブル盛」(商願2018-119888)についても、『バストを下からと脇からのダブル方向で押し上げるタイプのブラジャーを「ダブル盛」と称している実情が認められます。』とのことなので、男性には厳しい問題だよなぁ。

まとめ

Togetterでまとめられていましたので、会場の雰囲気をお楽しみください。
AIは弁理士を超えるのか?? AI vs 弁理士 商標調査対決

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