NEW 平成30年(ワ)第7456号:令和元年7月18日判決言渡
「職務発明対価金請求事件」
職務発明規程がない企業において、特許を受ける権利を譲渡しておらず且つ特許出願もしていない発明(考案)に対して元従業員がその譲渡対価を請求した事例。顕著な業績を残した商品の開発への報奨金が支払われていても、特許を受ける権利が譲渡されたとは認められないとして、相当な対価の支払請求権が否定された。
平成30年(ネ)第10087号:令和元年6月27日判決言渡
平成29年(ワ)第27980号:平成30年10月25日判決言渡
「債務不履行に伴う契約解除により返金請求と, その契約不履行と相当因果関係にある損害の賠償請求控訴事件」
特許翻訳(明細書等の英語翻訳)を依頼してこれを承諾した書面を交わさない契約が請負契約であり、翻訳会社は誤訳等の瑕疵の担保責任を負うとされた事例。
訴訟においては、本契約における翻訳が、特許発明の技術的意義や内容を踏まえた英語として意味が通用するものを作成することを意味しており、そのすべてを正確に反映し且つ文法や語彙の誤りがない完璧なものを作成することまでは求められていないとして、翻訳の瑕疵が否定された。とはいえ、翻訳会社に瑕疵担保責任を問えるというのは結構怖い話。なお、請負契約と判断要因となった事実は、一定の報酬支払を約して翻訳を依頼し、これを承諾したこと、契約の対価を支払いこれを異議なく受領したこと、です。
平成30年(行ケ)第10179号:令和元年7月11日判決言渡
「審決取消請求事件」
カタログオーダーギフト(ギフトカタログの販売)が、小売の業務と認定された事例。
取消審判の請求人(原告)は、「商品の配送業務は,ギフトカタログの販売に付随するものであって,独立した商取引の対象となってない」「被告の事業が印刷物の販売である」等と主張したが、業として、ギフトカタログを利用して、一般の消費者に対し、贈答商品の譲渡を行っていると認定された。
平成30年(行ウ)第424号:令和元年6月18日判決言渡
「異議申立棄却決定取消請求事件」
第4年分特許料納付書の却下処分の取消等を求めたが、気力がなかったことに起因する期間徒過について「正当な理由」がないとして却下処分が維持された事例。
原告の年金納付担当者の電子メールの本文には「いつもは注文書の国名の横に特許番号を記入しているのですが,そうする気力がありません」などと記載されていたこともあって、「正当な理由」が否定された。気力は大事。
平成29年(ワ)第14637号:平成30年7月26日判決言渡
「商標権侵害行為差止等請求事件」
被告標章「〇〇〇」の後に空白部分がある等の態様の表示(「〇〇〇 取付互換性のある・・・」)について、商品の出所を示すものであると認定した一方、被告標章「〇〇〇」の後に助詞がある態様の表示(「〇〇〇に使用出来る・・・」「〇〇〇の浄水器に使用できる・・・」)については、商品の出所を示すものではないと認定された事例。
浄水器及びその交換用カートリッジを製造販売する原告は、インターネット上のショッピングモールの店舗において、原告浄水器に使用可能な交換用カートリッジを販売する被告に対して、原告登録商標と類似する被告標章の使用が、不正競争又は商標権の侵害に当たると主張した。東京地裁は上記のように判示して不正競争行為を認定した。なお、助詞が付加された場合には、当該商品が原告商品に対応するものであるという、商品内容を説明するまとまりのある文章が表示されているとして、商品の出所を示すものではないと認定しているが・・・助詞の有無に関わらずまとまりのある文章だと思う。周知商標である等の諸事情を鑑みた結果であろうか?周知でなければ、結果が異なったかもしれない。
平成29年(行ケ)第10107号:平成30年1月15日判決言渡
「審決取消請求事件」
商標権の共有者の一部が単独で不使用取消審決の取消しを請求することを認めた事例。知財高裁は、このような取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たるから単独でもすることができると判示した、また、請求認容の判決が確定した場合、再度特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われ、請求棄却の判決が確定した場合、取消審決が確定して商標権は消滅したものとみなされるため、合一確定の要請に反する事態は生じないとされた。
なお、無効審判の審決取消訴訟については、単独でもすることができるという判例が存在する(最高裁平成13年(行ヒ)第142号)。
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