くまクッキングパクリ商標の異議取消理由とは何かについてスペースで話してみた

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商標法 独学 チワワ

有名Youtubeチャンネルがパクリ商標登録出願されてます」の続報と、「くまクッキング商標」の登録査定に対する弁理士有志による異議申し立てに関してTwitterのスペース(「例の異議について話をしようじゃないか」)で意見交換をしましたので、その報告です。

状況のおさらい

まずおさらいですが、有名Youtubeチャンネルに対して、無関係と思われる第三者によって商標登録出願がなされていました。※「くまクッキング」、「きまぐれクック」、「バズレシピ
このうち、「くまクッキング」については、2021年8月20日に登録査定が出されてしまい、弁理士有志による異議申し立てをしようという呼びかけがなされました。
ところが、2021年9月1日に「くまクッキング」を除く一連の商標登録出願は取り下げられました。
現状で、出願を取り下げた事情は不明ですが、くまクッキングの公式Twitterで話題になるなど、出願人が何らかの危機感を抱いたのか、又は出願人が特定されて何らかの警告を受けた等の事情が考えられます。

くまクッキング商標だけが取り下げられていない理由

くまクッキングだけが取り下げられていない理由ですが、まず登録査定が出されていて審査に係属していない「くまクッキング」商標を取り下げできるか?について考えます。
この点、スペースでの議論では、昭和44(行ケ)58号の高裁判決に基づいて取り下げできるという点で見解が一致しました。

続いて、「くまクッキング」商標だけが取り下げられていない点の評価については、取り下げ手続きが面倒であるから、登録料の未納付による出願却下を狙っている可能性が高いという点で、概ね見解が一致しましたられました。
つまり、「くまクッキング」商標には登録査定が出ていますが、登録料は納付されない可能性が高そうです。
そして、登録料が納付されない場合、商標登録出願が却下されますので、「くまクッキング」商標の商標権が発生することはありません
なお、出願取下書が提出されているが、特許庁側の処理が遅延していて、それが公開されていない可能性もあります。

取消理由について

というわけで、商標権は不要になりそうですが、取消理由について検討しました。
具体的にスペースでは、周知・著名性に起因する取消理由と(商4条1項10号、同15号、同19号)、使用意思(商3条1項柱書)、公序良俗違反(商4条1項7号)が挙げられました。
このうち、優先的に主張すべきは、周知・著名性に起因する取消理由であるものの、Youtube全体を需要者層とすると「くまクッキング」の周知性を認めさせるのは難しいという見解でした。
そのため、注力要素としては、「くまクッキング」の需要者層を制限して、例えば、料理系動画の配信という程度に市場を限定すれば、周知性が認められる可能性がありそうです。

この場合の証拠ですが、著名な有名人のチャンネルとの登録者数比較、料理系動画チャンネルにおける登録者数比較等の、数値で客観的な証拠を提出することが望ましいということです。
なお、本出願に対しては、商標登録出願をすべきでない旨を説明する刊行物の提出(情報提供)がされています。
しかし、提出されている証拠は、Youtube全体を需要者層とするものであるため、「くまクッキング」の周知性が認められなかった可能性があります。

また、使用意思については、審査段階(特許庁係属中)は、比較的に緩やかに審査されるため、優先順位が低いという話が出ました。
例えば、商標権者が架空の事業計画書を提出すれば、使用意思が認められてしまう可能性があります。
さらに、公序良俗違反については、著名であれば公序良俗違反が認められる可能性があるものの、そうでなければ難しいので、優先順位が低いという話が出ました。

異議申し立ては得策なのか?

さて、「くまクッキング」に関しては、配信者が匿名であって、その名前及び住所を隠したいという事情があります。
そのため、第三者による異議申し立てを行うことが得策であるのか?についても検討しました。
つまり、いずれ信頼できる第三者に出願してもらうならば、商標を買い取ることがが得策という考え方もできるということです。
具体的には、無効審判を請求することを考えれば、数十万で買い取った方がお得ということです。

この点、本件の指定役務には「映画の上映・制作又は配給」があるものの、「インターネットを利用して行う映像の提供」がないため、買い取ったとしても使用可能性が低く(不使用取消の恐れもある)、買い取りは得策ではないという話がありました。
なお、出願人に「不正の目的をもって使用をする意思」があることを確認するために、譲受交渉すること自体は推奨されるという指摘もありました。
また、名前及び住所を隠したいという事情を考慮すれば、利害関係を要する無効審判ではなく、第三者でもできる異議申し立てを行うのが得策であるという話もありました。

まとめ

1.「くまクッキング」商標は、商標権が発生する可能性が低い
2.仮に商標権が発生した場合、取消理由としては、周知・著名性に起因する取消理由を優先的に主張すべき
3.買い取りよりも、第三者でもできる異議申し立てを行うのが得策(ただし、交渉は行うべき)

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