商標の不使用取消審判の請求は、発信主義ではないとされた知財高裁事例

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商標法 独学 チワワ

・令和元年(行ケ)第10133号『審決取消請求事件』

商標の不使用取消審判の請求は、発信主義(特19条)ではなく到達主義であるして、審判請求の却下審決が取り消された事例です。今後の試験問題及び実務に影響する可能性がありますので、判決の一読をお勧めします。

ポイントは、「不使用取消審判(商50条1項)の請求については民97条1項の到達主義の規定が適用され、特許庁に請求書が到達した日を基準として審判請求の効力を判断する」です。

事件の流れ

①商標が、平成28年7月1日に設定登録を受ける
②不使用取消審判の請求書が、令和元年7月1日に郵送によって発送される
③不使用取消審判の請求書が、令和元年7月2日に特許庁に到達する
④不使用取消審判の請求が、令和元年8月29日に却下される

却下審決の理由

1.不使用取消審判は、登録商標の設定登録の日から3年を経過した後でなければ請求できない(商50条1項)。
2.商50条1項の不使用取消審判の請求についても、発信主義を定める特19条が適用される
3.本件審判の請求日は、商標の設定登録の日から3年の期間を経過する前の日(令和元年7月1日)にされた不適法な審判請求であり、その補正をすることはできない。
4.したがって、商56条1項において準用する特135条の規定により審判の請求を却下する。

裁判所の判断

1.商50条1項の「継続して3年以上登録商標の使用をしていないとき」は、登録取消の実体的要件である。
2.そして、商50条1項は、不使用取消の審判請求が商標の設定登録の日から3年が経過してからされなければならないことを定めている。
3.本件審判の請求書は、設定登録の日から3年が経過する前の日に発信され、設定登録の日から3年が経過した日に特許庁に到達した。

4.特19条は、「提出の期間が定められているもの」について、発信の日をもって特許庁に到達したものとみなしている。この規定の趣旨は、当事者の居住地と特許庁との間の地理的間隔の差異に基づく不平等を排除するため、発信の日を特許庁に到達した日とみなしたものと解される。
5.商50条1項は、所定の期間内に審判の請求をすべきことを定めていないから、地理的間隔の差異に基づく不平等を排除する要請はない。したがって、不使用取消審判の請求は、特許19条の規定を準用すべき前提を欠く
6.よって、不使用取消審判の請求については、意思表示の原則規定である民97条1項の到達主義の規定が適用されるべきであり、特許庁に請求書が到達した日を基準としてその効力を判断する

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