有名Youtubeチャンネルがパクリ商標登録出願されてます

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商標法 独学 チワワ

有名なYoutubeチャンネルの先取り出願

Twitterの情報で知ったのですが、有名なYoutubeチャンネルを(恐らく)勝手に商標登録出願している方がいるようです。

商標は選択物なので、冒認出願という概念はなく、非登録先使用商標を勝手に出願することは先取り出願(又は剽窃出願)と表現します。
過去には、大量の先取り出願が問題となり、特許庁が異例のアナウンスをしたこともあります。
ただし、先取り出願は、倫理的な問題は置いておくにしても、違法な行為ではなく、拒絶理由に該当しなければ普通に登録されます。
例えば、ティラミスヒーロー事件でも、先に使用していた企業の商標が勝手に出願されましたが、登録自体はされています。

被害チャンネルの一覧

なお、出願では14類(貴金属等の商品)となっていますが、41類(動画視聴サービス等の役務)となるように誤記が補正されています。
商品役務に変更はないので、要旨変更補正ではなさそうです。

商願2020-123168 :くまクッキング 登録者数 23.1万人
商願2020-123833 :きまぐれクック 登録者数 415万人
商願2020-123834 :バズレシピ 登録者数 170万人

※(チャンネル名ではない)
商願2020-123835 :ノーブランニング(るみちゃんねる) 登録者数 11万人

ところで、そもそもYoutubeチャンネル名が商標なのか?という点には議論があります。
例えば、本のタイトル(「坊ちゃん」等)は、本の内容を示すものであって商標ではないと解釈されます。
同様に、番組のタイトル(「バズレシピ」等)も、商標ではない(商標的には使用されていない)と解釈する余地があります。

番組のタイトルが商標でないと解釈されると、タイトル自体は、単に役務の質(内容)を表すにすぎないものとなります。
したがって、タイトルを商標登録出願しても、商3条1項3号に該当します。
そして、タイトルが示す役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商4条1項16号に該当します。

では、今回のYoutubeチャンネルのタイトルが商標となるかどうかですが、必殺仕事人事件が参考になります。
当該事件では、以下のように判断され、商標登録が認められました。

「サブタイトルが付され、作品毎にその内容が異なっていることから、「必殺仕事人」の文字からは、時代劇番組の具体的な内容が特定された不変なものということができず、また、登場人物、配役、基本的なストーリー展開等において共通するところがあることをもって、テレビ放送番組の内容が特定されるものということもできない。
そうとすると、「必殺仕事人」の文字からは、テレビ時代劇番組の具体的な内容を看取させるとはいい難いことから、本願商標は、特定の役務の質を直ちに認識し、理解させるものということはできない。」

不服2012-2622

Youtubeチャンネルにおいても、各動画にはサブタイトルが付され、配信毎に内容が異なっています。
そのため、チャンネル名からは、動画の具体的な内容が特定されません。
そうとすると、チャンネル名は、役務の質(内容)を示すものではなく、商標となる(商標登録されうる)と考えられます。

今回の先取り出願に対する拒絶理由

有名なYoutubeチャンネルを勝手に商標登録出願している場合、その登録を認めるのは商標に化体した信頼を守るという商標法の趣旨に反します。
そこで、登録を認めず拒絶する理由が、いくつか考えられます。
具体的には、商4条1項7号、10号、15号、19号が考えられます。

商4条1項7号は、公序良俗違反と言われる拒絶理由で、先のティラミスヒーロー事件でも触れられた理由です。
簡単に言えば、他人の未登録商標を先取りする悪質な権利の濫用行為である場合、公序良俗違反に該当して商標登録が認められません。
このとき、他人の未登録商標が周知でなくとも(例えば不特定多数の者が使用している場合等)、公序良俗違反に該当することがあります。

商4条1項10号は、他人の未登録周知商標に類似する場合の拒絶理由です。
周知である必要があるので、他人が使用していない商品役務については商標登録されてしまいます。
また、通常は周知であることの立証が困難です。
とはいえ、出願段階であれば、情報提供などで周知性を簡単に説明すれば、後は審査官に立証責任がありますので、Youtuberの側としてはアクションがとりやすいと思います。

商4条1項15号は、他人の業務に係る商品又は役務と需要者が混同する場合の拒絶理由です。
基本的には、他人の商標が周知著名であるときに、混同が生じます。
また、他人が使用している商標と異なる商品又は役務に対しても、混同が生じることがあります。
そのため、使用していない商品役務についても商標登録を防ぐことができます。

商4条1項19号は、他人の周知商標を不正の目的で使用する場合の拒絶理由です。
不正の目的とは、例えば、高額で買い取らせる目的で先取り的に出願した場合などです。
不正の目的が認められれば、混同が生じない場合であっても商標登録を防ぐことができます。

パクられたYoutuberができること

情報提供をすることが考えられます。
情報提供とは、先取り商標が登録できない旨の情報を特許庁に提供する手続きです。
なお、情報提供は、匿名ですることもできますので、一視聴者として商標登録を防ぎたいというような場合にも利用できます。

仮に情報提供が間に合わず、先取り商標が登録されてしまった場合には、異議申し立てをすることが考えられます。
異議申し立ては、商標権の設定登録後に、商標が登録できない旨の異議を特許庁長官に対して申し立てる手続きです。
異議申し立ては、誰でもすることができますので、一視聴者として商標を取り消したいというような場合にも利用できます。
ただし、商標掲載公報の発行日から二カ月以内にしなければなりません。

なお、先取り出願されたしまったYoutuberの方々には、この機会に商標登録出願をすることも考えて欲しいです。
(バズレシピは、すでに出願されていますが、残念ながら後出しになっています)

代理人の責任

先取り商標が悪意によって(知っていて)出願したものである場合、そのことを代理人である弁理士が知っていれば、倫理上の問題が生じます。
具体的には、弁理士会から、戒告、弁理士会会員としての権利停止、懲戒請求、及び退会等の処分を受ける可能性があります。
今回のような先取り出願の場合、これを知りながら、又は重大な過失意により知らないで出願すれば、信用失墜行為となり、弁理士会会員の権利が2年の停止となる可能性があります。

とはいえ、弁理士が積極的に悪意の有無を調べるのは難しいので、全ての出願に調査義務を課すのは行き過ぎだと思います。
そのため、先取り出願については、弁理士本人が出願人として出願したような場合を除いて、処分の対象にはならないように思います。

なお、今回はバスレシピがすでに出願されていて、出願人であろうYoutuberの方に先取り出願の存在が知られる可能性が高いです。
さらに、被害者がインフルエンサーですので、先取り出願の事実が広く一般の方に知られるような事態も容易に想像できます。
となると、炎上の危険性はかなり高く、代理人としては、社会的な制裁を受ける形で責任を取ることになる可能性もあります。

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