PBPクレーム最高裁判決の影響は本当に限定的なの?

PBPクレーム最高裁判決の影響は本当に限定的なの?
PBPクレームに関する最高裁判決の射程について、あらゆる分野のクレームに共通して「製造方法が物のどのような構造若しくは特性を表しているのかを説明することを要求される」という事態があるのではないかと考えている。
まず、「平成24年(受)第2658号」においては、
「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される」
と発明の要旨について判示されているが、物同一性説を採る点は現在の審査でも同じである。
さらに、現在の審査基準においても、クレームに記載された製造方法によって得られる物がどのような影響を受けるのか明らかでない場合には、発明が不明確であるとして特36条6項2号違反で拒絶される。
例えば、請求項1が、「タンクの内壁への米の付着を防止するために、タンクの内壁に油性成分Xを噴霧する工程を設けた無洗米製造方法」であり、請求項2が「請求項1に記載の無洗米製造方法によって製造された無洗米」である場合、請求項2については、タンクの内壁に油性成分Xを噴霧することによって、得られる無洗米がどのような影響を受けるかについて何ら記載されておらず(出願時の技術常識からも明らかではないとして)、特36条6項2号違反となる。
というわけで、特に審査基準を変更しなくとも、最高裁が示した明確性充足の要求を満たすことができるようにも思われるので、その射程は限定されているという判断も十分に首肯できる。
つまり、現状維持で、特に変更がないということもあり得るというわけだ。
若しくは、化学分野において物質等を特定する際に用いられるような、いわば純粋なPBPクレームのみに対して、明確性の充足を厳格に要求するという運用に僅かに修正されるかもしれない。
私自身、このような僅かな修正に留まると考える実務家が多数なのではないかと予想している。
しかし、「物の発明についての特許に係るクレームに製造方法が記載されていると、製造方法が物のどのような構造若しくは特性を表しているのか不明となる」という状況は、あらゆる分野のクレームに共通して生じることであると思われる。
そして、物の発明についての特許に係るクレームに製造方法が記載されている場合、審査段階においては、製造方法が物のどのような構造若しくは特性を表している(に影響している)のか、その説明を要求される可能性もあるように思うのである。
仮にこのような説明を要求された場合、上述の無洗米の例からも想像できるように、その説明は非常に困難である。
そのため、拒絶理由を解消できる場合はほとんどないであろう。
正直に言えば射程が広いと困るのだが、一方で射程が狭いと考える理由が見い出せない。
果たして、どのような理由で射程を狭く解釈しているのかできれば教えて頂きたいくらいである。
それとも、電気機械分野での純粋なPBPクレームって存在しないのかしら?
(電気機械分野では、製造方法が物の構造若しくは特性に影響することが少ないとか??)
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