平成16年改正法に基づく職務発明の対価の支払いが不合理ではないとされた事例

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・令和4(ネ)10062号等『職務発明の対価請求控訴事件』(原審:平成29年(ワ)第7391号等)

2023/04/04追記
控訴審でも原審の判断が概ね引用されています。ただし、控訴審では、超過売上の割合に代えて、超過売上高を(売上高×0.5%)で算出しています。

会社の従業員であった発明者が、職務発明及び職務創作意匠の対価を請求した事件です。平成16年法が適用され、対価の支払が不合理ではない場合には当該対価を支払えば足りるとした上で、協議の状況・開示の状況・意見聴取の状況は不合理ではないとされた(損害賠償請求が認められなかった)点がポイントです。

裁判所の判断

1.協議の状況
従業員に対する説明及び従業員からの意見聴取は十分に行われた
従業員は、質問等の機会を与えられていたことから、協議に関与している。     
よって、会社は、従業員側の意見を聴取する機会も十分に設け、これに対応した行動を取った。
2.開示の状況
規程に係る基準が開示されている上、従業員は、実際の実績補償金の算定過程についても一定程度理解可能であった。
基準の開示として不合理とすべきほどに特段の労力を要すると見るべき具体的な事情も見当たらない
よって、開示の状況に不合理な点は認められない。
3.意見聴取の状況
従業員との間で意見等の相違は解消されなかったものの、会社からの意見聴取は実質的に尽くされたといってよい状況にある。
会社の一連の対応につき不合理ないし不誠実と評価すべきものはない
よって、意見聴取の手続に不合理な点は認められない。

その他

職務創作意匠に係る意匠権を取得した使用者等が独占の利益を有するというためには、当該意匠に係る物品が、その流通過程において、需要者の視覚を通じて美感を想起させる態様で実施され、これに対して意匠権を行使できる場合に独占の利益を有するとされました。そして、仮に会社が意匠を実施しているとしても、当該実施により独占の利益を得たとは認められないとされました。

会社による一部の職務発明の実施が認められています。また、特許の登録前の実施について、出願公開後の補償金請求権などを理由に、出願公開から登録までの期間において売上の2分の1を独占の利益の検討の基礎としています。

備考

控訴審 で認められた損害額:197万3393円
算定式(自社実施):超過売上高(売上高×0.5%)×仮想実施料率3.5%×被告の貢献割合95%×共同発明者間の貢献割合60%)-既払額

原審で認められた損害額:197万3393円(旧法の適用)
算定式(自社実施):売上合計額×超過売上の割合※1×仮想実施料率※2×本件特許の貢献度※3×(1-会社の貢献割合※4)×発明者貢献度※5-既払額
 ※1.超過売上の割合50%:実施品の販売による市場占有率の上昇、職務発明の技術的意義、及び代替技術等を総合的に考慮した。
 ※2.仮想実施料率3.5%:(経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」を参照した)
 ※3.本件特許の貢献度1%:実施品のカタログで訴求されている代表的な技術に関連する特許等を考慮した。
 ※4.会社の貢献割合95%:量産化及び販売に投入している多額の費用、及び長年にわたりルームエアコンを販売してきたブランドの知名度等を考慮した。
 ※5.発明者貢献度60%:。

消滅時効の起算点:出願日は平成16年3月25日であるが、何らかの事情により、実績補償金を受領することは実際上困難であったとされ、平成30年4月28日が消滅時効の起算点とされた。

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