社長判断で特許権を移転すると利益相反になる危険がある

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弁理士 実務 独学 チワワ

社長等の取締役(以下、単に社長という)が、自らのみの判断で特許権等の知的財産権を移転することがあります。
例えば、創業者兼社長が個人で取得していた特許権を、自らが取締役である会社に移転する場合や、親会社又は子会社(いずれも同じ社長が取締役)の特許権を相手方に移転する場合です。
この場合には、利益相反行為(会社法第356条及び第365条等)となり、株主総会・取締役会等の承認が必要となることがあります。
具体的には、取締役が利益を得て、会社が不利益を被るような取引(自己取引)を行う場合、株主総会・取締役会等の承認が必要となります。
そして、利益相反取引によって会社に損害を生じさせると、社長には、任務懈怠として、会社に対する損害賠償義務が発生するリスクがあります。

『無償であるからよい』という考えもありますが、財産権の移転ですので、思わぬ不利益が会社に生じることがあるかもしれません。
また、社長が退任する時などになって初めて問題が顕在化する(特許権の移転が判明する)ことがあります。
そのため、「取締役会が承認するハズ」という前提が覆る可能性も考慮して下さい。

さらに、利益相反行為に該当する場合、以下の書面(原本)が必要となりますので、注意が必要です。
なお、手続きについては、特許庁に問い合わせれば問題なく行えると思います。
しかし、利益相反にはリスクがあるので、弁理士が「(移転手続)できる」と即答する前に、弁護士等の専門家の意見を聞くようにして欲しいです。

・取締役会設置株式会社の場合
取締役会議事録または取締役会承認書
取締役会開催日以降に認証された、開催時の取締役・監査役全員の記載及び「取締役設置会社」の登記のある登記事項証明書

・取締役会設置会社でない株式会社(有限会社含む)の場合
株主総会議事録
株主総会開催日以降に認証された、発行株数の記載のある登記事項証明書

・理事会設置一般社団法人、一般財団法人の場合
理事会承認書
理事会開催日以降に認証された、開催時の理事全員の記載のある登記事項証明書

・理事会設置法人でない一般社団法人の場合
社員総会議事録
社員総会開催日以降に認証された、登記事項証明書
定款又は社員名簿

特許庁HP

なお、会社が不利益を被らない場合(例えば、社長が会社に対して無償で譲渡する場合)には、承認が不要になります。
会社が不利益を被らないケースとしては、無償譲渡が多いように思いますが、この場合には譲渡証などに「無償で譲渡した旨の明記」が必要です。
また、社長がその会社の一人株主である場合にも、株主が不利益を被らないので承認が不要になります。

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