特許を受ける権利の共有者による実施

特許を受ける権利の共有者による実施に関する質問
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無題 – cos
2009/05/28 (Thu) 20:51:37
特許を受ける権利が共同の場合は、他人の同意なく、出願中の発明について実施ができるのでしょうか?
Re: 無題 – 管理人
2009/05/29 (Fri) 12:08:12
cosさん
ご質問ありがとうございます。
特許を受ける権利の共有者の一人が、他の共有者の同意なく、出願に係る発明を実施ができるどうかという質問ですね?
青本にも記載されているように(特73条の解説)、特73条2項は、注意的に設けられた規定であり、特許発明の場合に限定するものではありません。
よって、原則として、各共有者は他の共有者の同意なく発明を実施できます。
Re: 無題 – 通りすがり弁理士
2009/05/29 (Fri) 13:56:26
出願中の発明には、特許権は発生していないため、誰でも自由に実施できるんじゃないですかね。但し、第三者にについては補償金請求権が行使される余地はあると思いますが。
Re: 無題 – 倭猿
2009/05/29 (Fri) 18:48:11
余計な条件づけになるかもしれませんが、契約自由の原則があります。
特73と同様に、他の共有者(質問における「他人」ですよね?)との「契約で別段の定をした場合を除き」自由に実施できる、というのが正確なところかと思われます(管理人様と同旨です)。
こうなると特許法の枠を超えます。
なお、契約で「同意なしには実施不可」の旨の定めをしたにもかかわらず実施してしまった場合は、債務不履行となり、損害賠償(民415条)の対象になり得ます。
Re: 無題 – cos
2009/05/29 (Fri) 23:31:08
ごめんなさい。ちょっと疑問におもったのですが、
65条は、特許出願人が、特許出願人に対して補償金請求権を行使できないとは書いてないので、出願人の共有者の一人が業として出願にかかる発明をしたら、補償金請求権の行使はできるのではないでしょうか?
Re: 無題 – 管理人
2009/05/30 (Sat) 23:21:40
>65条は、特許出願人が、特許出願人に対して補償金請求権を行使できないとは書いてないので、出願人の共有者の一人が業として出願にかかる発明をしたら、補償金請求権の行使はできるのではないでしょうか?
できません。
発明の実施に権原を有する者の実施が、補償金請求権の対象となるのは妥当ではないからです。
もし、補償金請求権の行使がみとめられてしまえば、共有者のいずれも実施できないという不合理な結果になってしまいます。
Re: 無題 – 通りすがり弁理士
2009/05/31 (Sun) 03:54:48
倭猿さん
ご趣旨がよく分かりませんが、契約自由の原則は関係が無いですよね。試験では契約が無い場合の法律関係が聞かれると思いますので(契約関係がある場合にはそのことが問題文に記載されると思います。)。
私が言いたかったのは、特許権の侵害は特許権が発生してから、すなわち設定登録後に生じ得るものですから、73条は特許を受ける権利には適用されないということです。質問者の方は「出願中」と記載されていますので、設定登録前の状態を聞かれているのだと思われます。
Re: 無題 – 管理人
2009/05/31 (Sun) 21:11:17
通りすがり弁理士さん
ご回答ありがとうございます。
特73条を持ち出してしまったので、かえって分り難くなってしまったかもしれません。
おっしゃるとおり、特73条は特許権についての規定です。
そして特73条は、民法の原則どおり、特許権の共有者が他の共有者に同意なく実施できることを「注意的に」規定しているものです。
つまり、特許権の設定登録前後を問わず、他の共有者の同意が必要であるとする理由がありません。
なお、補償金請求権は、特許権の発生以前に発生し、特許権の設定は単なる行使の条件です。
よって、「特許権は発生していないため、誰でも自由に実施できる」というのは、「発生した後に賠償責任を負うことは考慮しない」ということになるので、試験的にも法律的にも正確ではないと思います。
Re: 無題 – 通りすがり弁理士
2009/06/01 (Mon) 13:58:10
管理人さん、ご返信ありがとうございます。
当方の回答について念のため申し上げると、「但し、第三者にについては補償金請求権が行使される余地はある」と記載していますように、補償金請求権を考慮していない訳ではありません。
条文でも本文を記載して、但し書きで例外を規定しますよね(例えば、特7条や17条)。従って、本文のみを取り上げて、但し書きの事情が考慮されていないとされるのは心外に思います。
なお、補償金請求権が特許権について、「特許権の設定は単なる行使の条件です」と述べられていますが、これには疑問があります。補償金請求権が停止条件付き権利であるとすれば、特許権の設定登録によりはじめて権利が発生することとなるからです。緒論は補償金請求権が解除条件付権利であることを前提とするもののように思われますが、特許出願の約半数について審査請求がなされず、また審査請求されたもののうち約半数が拒絶される社会事情を考慮すれば、当然には解除条件付き権利であるとは言えないように思います。
もっとも、この点については余り議論もされておりませんので、試験において上記のような記載をしても大きな減点事由にはならないと推測されます。
Re: 無題 – cos
2009/06/01 (Mon) 15:12:04
権利化前だと、補償金請求権に伴う権利者側に支払わなければいけない金額は「実施料相当額」だけなんで、それを上回る売り上げを上げれば得しますね。
契約自由の原則について – 倭猿
2009/06/01 (Mon) 15:28:30
通りすがり弁理士様
お返事見落としてました。すいません。
おっしゃる通りだと思います。権利化前の話なので、73条は無関係です。
しかし、契約自由の原則については無関係ではないと思います。実務上も、共有者間で、権利化前の発明の実施制限の契約を結ぶ場合があります。
試験でも、契約関係がある場合の問題設定がされてれば、必要があれば、民415条等まで言及すべきかな、と。
もし、会話がかみ合っていないようでしたら、すいません。
Re: 無題 – 管理人
2009/06/02 (Tue) 12:14:02
通りすがり弁理士さん
ご意見拝見いたしました。
「法律的に正確でない」とまではいえませんね。
訂正いたします。
なお、試験の観点から見た私の見解としては、「実施する場合は、原則として補償金請求権を行使されるおそれがある。ただし、権原又は正当理由を有する者は例外的に実施可能である」です。
どちらを原則にするのかは解釈の問題なので、受験生の方は自分に合うものを選択して下さい。
また、補償金請求権については、出願公開後に出願が放棄・取下等された場合に権利が遡及消滅することから(特65条5項)、解除条件付権利と解しています(停止条件ならそもそも権利が発生しない)。
こちらも解釈の問題なので、受験生の方は自分に合うものを選択して下さい。
cosさん
ご意見拝見いたしました。
確かに、「利益」を下回る「実施料相当額」が認定されれば、侵害者が得をしてしまいますが、必ず得をするとも言い切れないので、抑止力があるのだと思います。
Re: 無題 – 通りすがり弁理士
2009/06/05 (Fri) 16:18:40
倭猿さん
お返事ありがとうございます。
実務的にはそのような場合があるかもしれませんが、民法415条は弁理士試験では必要とされていないように思います。
民法の条文を書く必要がるのは不当利得(703,104)と不法行為(709)ぐらいではないでしょうか。もっとも、最近の事情はよく存じませんが。。
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