以下に、職務発明取扱規程例を掲載するが、これは一例に過ぎず、特許法第35条に適合すること、及び現実の職務発明等を取り扱うために必要十分であることを保証するものではありません。実際に職務発明取扱規程を策定・改定するに際しては、弁理士等の専門家の見解を仰ぎ、企業毎に適した規程及び制度を策定して下さい。なお、本職務発明取扱規程例では、汎用性を高めるために細かい手続的規程は別途細則にて定めるという形式を採用しています。
第13条 (審査委員会)
会社は、第11条第3項及び第4項の決定、又は第12条第1項又は第3項に定める異議の申立ての審査を行うために、審査委員会を設置する。
2 審査委員会は、異議が申立てられた日から九十日以内に、会社及び異議を申立てた従業者等に異議の申立てについての審査結果を通知しなければならない。
3 会社は、審査結果に従い、各報償金の再算定、認定又は決定の変更等の必要な手続を行わなければならない。
解説
・異議申立て等についての審査委員会の条項である。なお、実績報償金の決定を行う委員会と兼務するのではなく、異議申立てについての審査委員会は別の者が担当することが望まれる。例えば、実績報償金の決定を行う委員会は経営会議が対応し、異議申立てを審査するための委員会は別途メンバーを決めておくことが考えられる。なお、当該委員会には、知財部門の人間だけでなく、外部専門家(弁理士、弁護士)、人事部(人事労務担当者)、会社OB等が含まれていることがより好ましい。また、「社外専門委員制」(社外の人を審査委員とする)等の第三者評価を導入する方法もある。
・日本知的財産仲裁センターIP評価研究会作成の「新職務発明制度への対応」によれば、異議申立ての審査委員会は、外部のADR機関が好ましいとされている。なお、費用及びマンパワーの観点からも、守秘義務契約を結んだ上で、社外の専門家(弁理士等)を利用することが好ましい。
・審査委員会に関しては、その手続の詳細を含めて細則で定め、機関としての独立性・手続の詳細の周知徹底を図ることが、手続保証の視点からは望ましい。特に、対価額の認定や、当該発明の技術的及び財産的価値評価については、第三者を構成員とすることが対価額の正当性、公平性、客観性を担保するために有効である。
・細則を決める際には、委員会の権限として、①自ら再算定を行うことができる、②再算定を要請するのみである、のいずれの権限を持たせるのかについて、検討する必要がある。なお、外部メンバーは秘密情報にアクセスできないので、兼務する場合を除き、②を採用するものと考えられる。
・第3項は注意的な条項である。審査委員会の審査結果に従わないのであれば、そもそも審査制度自体が無意味となるばかりか、訴訟において不合理な対価算定と判断されるおそれもある。
例文
仲裁センター例:第15条(発明審査会の設置)
本規程および算定基準細則を実施するため、発明審査会を設置する。
2 発明審査会は、非公開とする。
仲裁センター例:第16条(発明審査会の組織)
発明審査会は、会長、副会長および委員若干名をもって組織する。
2 会長は、知的財産担当役員がこれにあたり、会務を総理する。
3 副会長は、知的財産部(課)長とし、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代行する。
4 委員は、会社の職員および社外有職者あるいは専門家のうちから社長が任命する。
5 従業者等は、会長の許可を受けて職務発明審査会に出席し、その発明について意見を述べることができる。
仲裁センター例:第17条 (発明審査会の審議事項)
発明審査会は、次の各号に揚げる事項についての権限を有する。
(1)職務発明の認定
(2)職務発明を承継するか否かの決定
(3)各従業者等の寄与率の決定
(4)対価額の決定
(5)職務発明に関する異議の申立て
(6)職務発明規程および算定基準細則の改定
(7)その他職務発明に関連する事項
2 発明審査会は、審査会長が召集し、議事は委員の過半数が出席し、その過半数で決する。
3 発明審査会は、第1項による認定、決定、措置を行ったときは、遅滞なくその旨を届けた従業者等に通知しなければならない。
発明協会例:第13条 (職務発明審査会の設置)
この規程を実施するため、職務発明審査会を置き、その事務は知的財産部(課)においてつかさどる。
発明協会例:第14条 (審議事項)
職務発明審査会は、社長の諮問に応じ、次の各号に掲げる事項を審議する。
(1)第5条第1項の規定による届出にかかわる職務発明の認定および特許を受ける権利の承継の決定に関すること。
(2)補償金に関すること。
(3)発明者の異議申立に関すること。
(4)職務発明規程の改正および運用に関すること。
(5)その他社長が必要と認めること。
発明協会例:第15条 (職務発明審査会の組織)
職務発明審査会は、会長、副会長、および委員若干名をもって組織する。
2. 会長は、知的財産担当役員がこれに当たり、会務を総理する。
3. 副会長は、知的財産部(課)長とし、会長を補佐し、会長に事故あるときは、その職務を代理する。
4. 委員は、会社の職員のうちから社長が任命する。
5. 発明者は、会長の許可を受けて職務発明審査会に出席し、その発明について意見を述べることができる。
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