職務発明取扱規程例第12条 (意見の聴取)

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以下に、職務発明取扱規程例を掲載するが、これは一例に過ぎず、特許法第35条に適合すること、及び現実の職務発明等を取り扱うために必要十分であることを保証するものではありません。実際に職務発明取扱規程を策定・改定するに際しては、弁理士等の専門家の見解を仰ぎ、企業毎に適した規程及び制度を策定して下さい。なお、本職務発明取扱規程例では、汎用性を高めるために細かい手続的規程は別途細則にて定めるという形式を採用しています。

第12条 (意見の聴取)

 第10条第5項に定める通知を受けた従業者等は、その通知の内容に意見がある場合、通知を受けた日から六十日以内に、審査委員会へ異議を申立てることができる。

2 第1項に定める期間内に従業者等が異議を申立てない場合は、支払われた対価の額に意見がないものとみなす。

3 第1項は、(第4条第2項 ※発明者原始取得の場合)、第6条第3項又は第10条第6項に定める通知を受けた場合に準用する。

解説

・特許法35条5項の「意見の聴取」に対応する条項であり、非常に重要である。法上の合理的な対価と認められるための要件という意味もあるが、それよりも、潜在的な不満を早期発見できるというメリットが大きい。このような不満は将来の訴訟リスクとなるので、対価の額で解消できないとしても何らかの手当てが必要となる。具体的には、人事評価や待遇改善等の金銭以外での報償や、適切な説明により従業者の納得を得ること等が考えられる。蛇足であるが、金銭以外の報償を考慮するならば、人事部や対象従業者の上長との面接等も必要となる。そのため、審査委員会には、関係者からの意見聴取権限を持たせることが好ましい。

・第1項の期限は日をもって定めることが計算上望ましい。月をもって定める場合、対応する月に対応する日が無い場合(例えば31日の場合)について定める必要が生じてしまう。

・第2項は早期の異議申立てを促し、訂正が必要な場合に早期の訂正を可能とするための条項である。この点は、協議において説明することが好ましい。なお、最終的には訴訟にて判断されるため、この条項を削除しても実質的な影響はない

・第3項の規程は、対価の算定に影響を与える可能性がある認定又は決定に対して異議申立て機会を与えるための条項である。

・算定時に従業者等の意見を聞きながら算定をする方法もある。

・異議の申立てが可能であることは、報償金の支払いと同時に通知することが望ましい。

・届け出た発明等について会社(審査委員会)が行った認定(職務発明、業務発明又は自由発明の種別の認定、若しくは出願しない旨の決定など)に対しては、従業者等に意見を申し述べる機会を与えることが必要である。これが第3項に定める異議申立てである。

・異議申立てに対する会社の決定に不服がある場合は、従業者等は第三者機関における調停・仲裁によって紛争を最終的に解決する方法もある。この点、事前の仲裁合意の有効性については疑義があるが、従業者等に仲裁の申立てをなす権利を求める旨を定めることもできる。

・異議申立て制度の存在とその適正な運用は、適正手続を保証するうえでも重要な要素である。

・合理的な対価を算定するためには、従業者等に情報開示することにより会社側への情報の偏在を解消すると共に、従業者等の自由な意思決定に基づく意見の表明を可能にする環境整備をすることが好ましい。

・意見聴取は、対価算定時に聴取する方法と、対価算定後に聴取する方法とが考えられる。対価算定時の聴取の方が従業者等の満足度が高いというメリットがあるが、手続が煩雑になるというデメリットもある。よって、異議が申立てられる可能性が低いならば、対価算定後の意見聴取が好ましいであろう。

例文

仲裁センター例:第8条 (異議の申立て)
 従業者等は、第6条第1項各号による決定、認定又は措置に対して、その通知を受け取った日から○○日以内に、発明審査会長に異議の申立てをすることができる。
 2 発明審査会は、前項による異議申立てがあつた場合、発明審査会を開催し、検討の上決定し、理由を付してその申立てをなした従業者等に通知しなければならない。必要な場合、決定をなすに際して、申立てをなした従業者等、その他関係者から意見を聴取し、書面の提出を求めることができる。
 3 従業者等は、前項の決定に対し不服があるとき、日本知的財産仲裁センターに調停又は仲裁の申立てをすることができる。

仲裁センター例:第12条 (従業者等からの意見の聴取)
 第10条1項4号に規定する利益発生時支払金としての対価額の算定にあたって、会社は従業者等からの意見を聴取することができる。
 2 従業者等から要求のあった場合、従業者等に対して、会社が行った対価額の算定の内容についてこれを開示する。
 3 従業者等は、対価の額の算定についての異議があるときは、その内容を知った日から○○日以内に、発明審査会長に対して書面による異議の申立てを行うことができる。この異議の申立てについては、第8条を適用する。

発明協会例:第7条 (異議の申立)
 発明者は、第5条第1項の認定に対し社長に異議の申立をすることができる。
 2.会社は前項の異議の申立につき審査会の審議を経て、職務発明であると再認し、またはその他の発明であると異議を認めたときは、理由を付して、当該発明者に通知するものとする。

特許庁例:第7条第2項
 2 発明者は、会社から付与された相当の利益の内容に意見があるときは、その相当の利益の内容の通知を受けた日から60日以内に、会社に対して書面により意見の申出を行い、説明を求めることができる。

総合センター例:第7条第5項
 5 発明者は、会社から付与された相当の利益の内容に意見があるときは、その相当の利益内容の通知を受けた日から60日以内に、会社に対して書面により意見の申出を行い、説明を求めることができる。

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