最高裁判決の紹介:平成28年(受)第632号

最高裁判決の紹介:平成28年(受)第632号
特104条の3第1項の規定に基づく抗弁(無効の抗弁)に関する最高裁判決です。
なお、来年の試験範囲に含まれ、出題可能性もありますので一度は目を通しましょう。
結論としては、『特許権者が事実審(控訴審)の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁(訂正により無効理由が解消される)を主張しなかった場合、その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、特段の事情がない限り紛争の解決を不当に遅延させるものとして許されない』です。
平成28年(受)第632号『特許権侵害差止等請求事件』
シートカッターの特許(特許第5374419号)について、上告審(最高裁)係属中に訂正審決が確定したことが、再審事由になるか否かが争われた事例。
控訴審で無効の抗弁が主張された時点では、別件審決取消訴訟が係属中であったため、特許権者は控訴審の口頭弁論終結時までに訂正審判の請求又は特許無効審判における訂正の請求ができなかった。
その後、上告審(最高裁)係属中に訂正審決が確定した。
この点、最高裁は、
①無効の抗弁が審理を不当に遅延させることを目的として主張されたものと認められるときは、裁判所はこれを却下することができる(特104条の3第2項)。これは、訴訟遅延が生ずることを防ぐためであり、訂正の再抗弁についてもこの理由は異ならない。
②特許権侵害訴訟の終局判決が確定した後に訂正審決が確定したときは、当事者は当該終局判決に対する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することができない(特104条の4)。これは、無効の抗弁に対し
て訂正の再抗弁を主張できることを前提として、特許権の侵害に係る紛争を一回的に解決することを図ったものである
③特許権者は、無効理由を解消するための訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったが、訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない。そして、特許権者が訂正の再抗弁を主張できなかったとはいえず、その他の特段の事情はうかがわれない
④よって、事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして許されない
と判示した。
【関連記事】
「最高裁判決の紹介:平成27年(受)第1876号」
↓クリックありがとうございます。
にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ

なお、直近の本室更新は「H29年短答試験著不問10」です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました