プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査について

プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査について
プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について(特許庁)
プロダクト・バイ・プロセス・クレームの審査が再開されました。
審査基準の改定は10月上旬になるようですが、
当面の審査では、以下のように取扱われるそうです。
プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱いについて
①プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBP)に該当するか否かを、以下の類型に基づいて判断します(技術常識に基づいて異なる判断がされる場合がある)。
類型(1-1):製造に関して、経時的な要素の記載がある場合は、PBPクレーム
具体例:「支持体に塗布し、液晶相に配向する温度で光照射してなる偏光子」
「凹部を備えた孔に凸部を備えたボルトを前記凹部と前記凸部とが係合するように挿入し、前記ボルトの端部にナットを螺合してなる固定部を有する機器。」
類型(1-2):製造に関して、技術的な特徴や条件が付された記載がある場合は、PBPクレーム
具体例:「モノマーA とモノマーB を50℃で反応させて得られるポリマーC」
1~1.5 気圧下で焼成してなる蛍光体」
「外面に粒子状の物質を衝突させた粗化処理が施されたゴム製品」
類型(1-3):製造方法の発明を引用する場合は、PBPクレーム
具体例:「請求項1~8いずれかの製造方法で製造されたゴム組成物」
請求項1~4いずれかの製造方法で製造されたポリマー」
類型(2):単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合は、PBPクレームではない
具体例:「樹脂組成物を硬化した物」
「貼付チップがセンサチップに接合されている物品」
「A がB と異なる厚さに形成された物」
「A とB を配合してなる組成物」
「ゴム組成物を用いて作成されたタイヤ」
「A 層とB 層の間にC 層を配置してなる積層フィルム」
「単離細胞」「抽出物」「脱穀米」「蒸留酒」「メッキ層」「着脱自在に構成」
② PBPクレームと判断したときは、「不可能・非実際的事情が存在する場合」に該当するか否かを、以下の類型に基づいて判断します。明細書、意見書等において当該事情が存在するとの主張・立証がされていれば、それを考慮して判断します。
類型(i):出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であった場合は、「不可能・非実際的事情」に該当する。
類型(ii):特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要する場合は、「不可能・非実際的事情」に該当する。
具体例:新しい遺伝子操作によって作られた細胞等
類型(iii):本願発明との関係が一切説明されていない場合は、「不可能・非実際的事情」に該当しない。
具体例:単に、「特許請求の範囲」の作成には時間がかかるとの主張のみがなされている場合
単に、製造方法で記載するほうが分かりやすいとの主張のみがなされている場合
③ 上記②において「不可能・非実際的事情が存在する場合」に該当すると判断したときは、明確性要件(特許法第36 条第6項第2 号)を満たすこととします。
④ 他方、上記②において、上記事情が存在することの主張・立証がされていない場合は、明確性要件違反の拒絶理由を通知します。また、上記事情が存在することの主張・立証について審査官が合理的な疑問を持った場合も、明確性要件違反の拒絶理由を通知します。
⑤ 今般の運用変更で、出願人の特許出願や研究開発に対する意欲を削ぐことがないよう、拒絶理由通知には、出願人が拒絶理由を解消するために反論以外に、補正、事情の主張・立証等の対応をとることができることを記載します。
⑥ 出願人の反論、補正を踏まえて上記①の判断を行った結果、当該明確性要件の拒絶理由が解消することがあります。
⑦ 最後の拒絶理由通知後、拒絶査定不服審判請求時又は特許法第50 条の2の通知を受けた後に、「その物の製造方法の記載」を、単に、構造や特性といった物としての記載にする補正又は物の発明においてその物の製造方法が記載されている場合に、単に、その物の製造方法の発明にする補正は、通常、明りょうでない記載の釈明(特許法第17 条の2 第5項第4 号)に該当する補正であると認めることとします。
⑧ 出願人による反論、補正があってもなお「その物の製造方法が記載されている場合」に該当し、上記事情の主張・立証がされていない場合は、明確性要件違反のため拒絶査定します。また、上記事情が存在することについて審査官が合理的な疑問を持った場合も、明確性要件違反のため拒絶査定します。
⑨ 出願人から上記事情の存在について主張・立証があった場合において、審査官が合理的な疑問を持たないときには、上記事情が存在するものとします。この場合は、当該明確性要件の拒絶理由は解消します。
補足
2016/3/30に審査運用が変わりました。
「凹部を備えた孔に凸部を備えたボルトを前記凹部と前記凸部とが係合するように挿入し、前記ボルトの端部にナットを螺合してなる固定部を有する機器」は、PBPクレームではないことが明らかになっています。
・「プロダクト・バイ・プロセス・クレームの明確性に係る審査ハンドブック関連箇所の改訂の背景及び要点
【関連記事】
「プロダクト・バイ・プロセス・クレームは原則無効?(最高裁)」
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コメント

  1. 通りすがり より:

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    いつも素早い情報、ありがとうございます。
    しかし、さらっとカテゴリー変更の補正を認めることにしたことには、驚きました。
    ⑦ 最後の拒絶理由通知後、拒絶査定不服審判請求時・・・に、・・・物の発明においてその物の製造方法が記載されている場合に、単に、その物の製造方法の発明にする補正は、通常、明りょうでない記載の釈明(特許法第17 条の2 第5項第4 号)に該当する補正であると認める・・・・

  2. ドクガク より:

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    通りすがりさん
    コメントありがとうございます。
    カテゴリー変更については、新たなサーチが必要とならないから認めるということのようです。
    ということは、少なくともサーチできる程度には明確というわけで・・・
    物自体からその構造又は特性を特定するのが容易であることが多い電気機械分野にまでPBPの射程を広げる意味がないですよね。

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