・平成30年(ネ)第10090号『自由発明対価等請求控訴事件』
大学の助教授であった発明者が、大学と企業との共同出願について、職務発明の対価、又は(職務発明でない場合)自由発明の譲渡対価を請求した事件の控訴審です。
大阪地裁判決(平成29年(ワ)第6494号)と同様に、発明者の請求は認められませんでした。
結論としては、『大学職員(教授)による特許を受ける権利は大学に譲渡されたのであって、共同出願人である企業に譲渡されたのではないため、職務発明の対価請求権はない。』です。
なお、本件の珍しいところは、自由発明の譲渡について、特35条3項の類推適用により、譲渡の対価を企業に請求し得るという主張がなされた点です。
事件の流れ
①平成17年6月16日:発明者が大学に発明を届け出る
②平成17年6月30日:企業と大学が共同出願
③時期不明:大学が発明者に補償金を支払う
④平成27年2月20日:特許登録
⑤平成29年8月8日:訴状送達
裁判所の判断
1.発明者が、大学の職務として発明したことは明らかであって、発明者の持分に係る部分を、企業を「使用者等」とした職務発明と認めることはできない。
2.企業を「使用者等」とする職務発明ではないから、職務発明の対価請求権はない。
3.特許を受ける権利が共有に係るときは、同権利を譲渡するには、他の共有者の同意が必要である(特許法33条3項)としても、企業内の共同発明者は、特許を受ける権利の持分を大学に承継させることについて同意しているものと推認できる。
4.発明者連名の譲渡証書は、各発明者が、それぞれの持分を大学と企業に譲渡することに同意したことを確認する趣旨で作成されたものと認められる。
5.特許を受ける権利の持分が企業に譲渡されていないから、特許法35条3項の類推適用に基づく相当の対価の請求権はない。
なお、自由発明の譲渡に関して、特許法35条3項の類推適用を否定してはいません。ただし、類推適用を認める趣旨ではないと思われます。
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