1月17日に渋谷で行われた「第2回「特許の鉄人」~クレーム作成タイムバトル~」に解説者として参加してきました。今回もチケット完売ということで、ご来場の皆様には感謝いたします。
第1回からの改善点
①審査員制の導入
第1回で選手としてご参加いただいた、高橋政治先生(ソナーレ特許事務所)、奥村光平先生(特許業務法人 IPX)、松山裕一郎先生(アステック特許事務所)、及び狹武哲詩先生(特許業務法人プロテック)に、審査員としてご参加いただきました。
審査員の先生方は各自10ポイントを、いずれかの先週に投票頂きました。そして、観客の投票結果と合計して、より獲得ポイントが多い選手が勝利となる制度です。クレーム作成に縁が薄い観客も少なくないのですが、単なる好みでジャッジするのではなく、専門家の観点からの評価を加えて修正することができたのではないかと思います。
②投票中のクレーム閲覧
今回は、投票中にスマホなどでクレームを閲覧できるようにしました。第1回では投票中に選手がスクリーンに表示されていたため、投票中にクレームを見ることができませんでした。特に、ソフトウェア対決では、クレームが長く且つ作成速度も速いため、試合中にクレームを追いかけることが困難でした。
そこで、投票中にクレームを見返して、より適切な投票ができるように改善されました。この改善は、概ね好評であったように思います。
③ヒアリング誘導
選手から発明者(出題者)に対して質問を行うヒアリングをよりやりやすいように台本を修正しました。第1回では、選手が質問するタイミングが不明確であり、また選手自身もヒアリングできるのか分からない(若しくは忘れてしまう)ことがありました。そこで、今回は司会が選手に対して質問を促すことによって、選手がヒアリング機会を確実に得ることができるように調整しました。
今回はヒアリング誘導自体は成功したように思いますが、予想以上にヒアリングする余裕がなく、またヒアリングできたことをクレームに盛り込む余裕もありませんでした。この点は、次回の課題になると思います。
④解説のカットイン
解説が自身の判断でコメントすることができるように台本を修正しました。第1回では司会から発言を促されたタイミングで解説がコメントするという流れでした。そのため、観客に分かりにくい場面又は特に注目すべき場面で、解説が適切なコメントをすることができませんでした。そこで、今回は、司会からの促しをトリガーとするのではなく、解説が自由なタイミングで発言できるようにしました。
解説として、概ね伝えたいことをしゃべることができたと思いますが、司会との連携がもう少し上手くできればよいと思いました。特に、お互いの喋り出しのタイミングが被ってしまう、無言の時間が生じるなど、解説素人の弱点が露見した部分もありました。解説としては、試合の解説のほかに、背景の解説などのネタを事前に準備するという課題が残ったと思います。
試合の内容
1.日用品対決
お題は、なでるとしっぽを振るクッション型のロボット「Qoobo」でした。また、従来技術は、「AIBO ERS-111」(尻尾を振るアクションをする犬型ロボット)と、「パロ」(撫でると後ろ脚を動かすアクションをするセラピー用のアザラシ型ロボット)でした。なお、第1戦、第2戦の出題の詳細については、下記リンク先に詳しいです。
・「第2回特許の鉄人、観覧メモ」
解説として考えていたポイントは、①Qooboの癒し効果を発揮する構成をどのように定義するか、②どの構成を従来技術との相違点とするか、③カテゴリーをロボットにするかクッションにするか、の3点です。
①及び②については、人工毛皮による手触り(クッション性)、尻尾の動かし方(喜びの表現態様)等があると想定していました。ただし、クッション性については、「パロ」との関係から、これが単独で新規性に寄与するようには思っていませんでした。仮に新規性を見出すとすると、動物ではないクッションから尻尾が生えているというあたりでしょうか。尻尾の動かし方についても、「AIBO」が感情を表現する動作を行う関係から、単に喜びを表現するように尻尾を動かすという観点では、新規性を見出すことが難しいと思われます。一例として、感情を表現する複数の動作パターンがあるという点で新規性を見出すことができると思います。
③については、あの場でカテゴリーを「クッション」とする発想をするのは難しかったかもしれません。しかし、従来技術がいずれも「動物型ロボット」であるところ、「Qoobo」は、使用者自身の想像力によって「何であるのか」が変わります。これによって、より感情移入しやすくなるという効果を奏する点で、犬である「AIBO」、アザラシである「パロ」とは大きく異なる特徴となると考えていました。個人的には、「尻尾付きクッション」(癒し効果の観点からは、尻尾に限定してもよいと考えます)を、作用効果を奏する相違点として主張することもありだと思っています。
2.ソフトウェア対決
お題は、大規模データの送付サービス(簡単に言うと、暗号化したデータを記憶媒体に保存し、当該媒体と輸送し、受取人が復号化することによってデータを受け取るサービス)でした。また、従来技術は、「AWS Snowmobile」(トラックが牽引する輸送コンテナでデータセンターまで輸送するサービス)と、「セキュリティー便」(開封不可能なパスワード設定がされたジュラルミンケースで記憶媒体を配達するバイク便サービス)でした。
解説として考えていたポイントは、①どの構成を従来技術との相違点とするか、②送り主、受け手、サーバーのいずれの観点からクレームするか、の2点です。
①については、ずばり位置情報の判定結果に応じてパスワード(解除キー)を送付する点であり、これは両選手とも認識されていたように思います。②については、サービスの売りの観点から、いずれを選択したのかを、プレゼン時に明らかにして頂ければ、どの観点であっても説得力があったように思います。
裏方からのコメント
Q1『問題が難しすぎない?』
A.確かに難しいですが、実際に解いた上で難易度調整はしています。ただし、ある程度の難易度を超えてしまうと、檀上で回答するのはかなり困難になります(先割れスプーンのようなかなり簡単な構造物であっても、25分でクレームするのは難しい)。 そのため、単純に簡易化すればよいというものではないと思っています。とはいえ、難易度は次回の課題にはなると思います。
Q2『プレゼンの後攻が有利じゃない?』
A.後攻が明らかに有利ですね。プレゼン内容を考える時間的余裕があるだけでなく、先攻選手の不利な点を捉えたプレゼンができます。ただし、プレゼンは先に回答を完成させた選手が先攻or後攻を選択できます。 少しでも相手選手より早くクレームを完成させてプレゼン後攻を獲得するという戦略を考えると、クレーム作成時間が短くなるというデメリットもありますので、バランスはとれているように思います。次回は、先攻用のプレゼン検討時間があってもよいかもしれません。
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