米国出願で102条(新規性)、103条(進歩性)の拒絶対応の覚書

米国出願で102条(新規性)、103条(進歩性)の拒絶対応の覚書
いまさらだけれど、忘れたときのための覚書。
さて、米国特許出願の新規性・進歩性(非自明性)に対する拒絶理由が、日本実務と乖離する(分野違い又は機能違い等の変な引例で拒絶される)主な原因として、以下のものが考えられる(誤訳もあるけれどそれは無視)。
なお、機能的文言に関しては、ミーンズプラスファンクションクレームと認定されて(MPEP§2181)、同時に112条(不明確であるとか、必須構成要素が不足してるとか)で拒絶されることもあるけれど、それは割愛する。
※参考.日米間の新規性を中心とした内外乖離に関する調査研究報告書(特許庁)
①米国では本願発明が日本よりも広く認定される
米国では、本願発明を「最も広く合理的な解釈」(broadest reasonable interpretation)に基づいて認定する(MPEP§2111)。また、機能的文言(adapted to」、「adapted for」、「wherein節」、「whereby節」等)を構成要素の一部として含む場合、当該機能的文言はクレームを限定しないと判断できる(MPEP§2111.04)。そのため、米国審査官は、本願発明の構成を出願人の予測を超えてはるかに広く解釈することがある。
例えば、クレームの「収納物が離脱されないような突起」という表現は、日本の審査では離脱されないような機能を有する構造を有する「突起」であると解釈される。しかし、米国の審査では機能的文言「収納物が離脱されないような」が無視される結果、あらゆる「突起」であると解釈される。
また、クレームの「電流値を算出するように構成された(configured to)算出ユニット」という表現は、日本の審査では電流値算出機能を有する「算出ユニット」であると解釈される。しかし、米国の審査では機能的文言「電流値を算出するように」が無視される結果、あらゆる「算出ユニット」であると解釈される。
この結果、米国では本願発明の分野を離れた想定外の引例によって新規性・進歩性が否定され得る。
②米国では引用発明が日本よりも広く認定される
米国では、クレームを拒絶する際に、先行技術の明示的、黙示的(implicit)、本来的(inherent)な開示に依拠することができる(MPEP§2112)。そのため、米国審査官は、引用発明の構成を出願人の予測を超えてはるかに広く解釈することがある。
例えば、引用発明の「算出ユニット」という表現は、当該引用発明の明細書等に「電流値を算出する」構成が明示されていなかった場合、日本の審査では電流値算出機能を有さない「算出ユニット」であると解釈される。しかし、米国の審査では引用発明の「算出ユニット」が本来的に電流値を算出できれば(capable of)、示唆が無くとも「電流値を算出するように構成された(configured to)算出ユニット」の新規性を否定する文献として引用できる。
これらに対しては、以下の対応が提案できる
a)機能的文言を削除補正する。
b)引用文献には記載されていない具体的且つ物理的な構成に限定補正する。
c)当該機能を生じさせる構造的且つ物理的な構成を追加補正する。
なお、d)として、第9版の特許審査便覧2111.04(In re Giannelli判決)の記載に基づいて、『本願発明の「configured to」節は、明細書内の記載により「capable of」よりも狭い意味を持つことが明らかである。よって、「configured to」節はクレームを限定している』と反論したことがあるが、審査官にはまるっと無視された。
ただし、相手によっては有効かもしれないので、インタビューなどで試してみる価値はあると思う。
【特許審査便覧(第9版)2111.04の仮訳】
MPEP§2111.04 「Adapted to( ~ に適している) 」、「Adapted for( ~ に適している) 」、「Wherein(そこで)」及び「Whereby(それによって)」節
「クレームの範囲は、示唆する又は省略可能にするが工程が実施される必要はないクレームの文言によって、若しくは特定の構造についてクレームを制限しないクレームの文言によって、制限されない。しかし、次に掲げるクレームの文言は、網羅的ではないが、クレームに用いる文言の制限効果に疑問を起こさせる文言である。
(A) 「adapted to(~に適している)」又は「adapted for(~に適している)節
(B) 「wherein(そこで)」節、及び
(C) 「whereby(それによって)」節
これらの節のそれぞれがクレームにおいて限定となるかどうかの判定は、当該事案の具体的事実に依存する。[例えば、次も参照のこと。Griffin v. Bertina, 283 F.3d 1029, 1034, 62 USPQ2d 1431 (Fed. Cir. 2002)(「wherein(そこで)」節は、その節が「操作のステップに意味及び目的」を示す場合には、プロセスクレームを限定している、と認定している)。In re Giannelli, 739 F.3d 1375, 1378, 109 USPQ2d 1333, 1336 (Fed. Cir. 2014)において、裁判所は、「adapted to (~に適している)」節は、「明細書内の記載により『adapted to』が狭い意味を持つことが明らかである。(つまり、クレームされている機械がローイングマシンとして使用されるように設計又は構築されており、それによってハンドルに引張力がかかっていることを明確にしている。」」場合には、機械クレームを限定していると認定した。]24 Hoffer v. Microsoft Corp., 405 F.3d 1326, 1329, 74 USPQ2d 1481, 1483(Fed. Cir. 2005)において、裁判所は、「『whereby』節が特許性に関係のあるものの状況を述べている場合、当該発明の実体が変化するために無視することができない。同文献。しかし、同裁判所は(引用はMinton v. Nat’l Ass fn of Securities Dealers, Inc., 336 F.3d1373, 1381, 67 USPQ2d 1614, 1620 (Fed. Cir. 2003))、「『方法クレームのwhereby 節は、最終的に記載されたプロセス工程の意図された結果を単に表している場合は重視されない』」同文献。」
(「日米間の新規性を中心とした内外乖離に関する調査研究報告書」より抜粋して引用)
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