弁理士試験-審査の20年放置

審査の20年放置
保護期間 – いかちん
2010/01/29 (Fri) 12:19:16
くだらない質問ですが、審査請求した出願であって、出願から20年間出願が放置されていた場合、出願人はどういう対応をすればよいのでしょうか?
Re: 保護期間 – 管理人
2010/01/30 (Sat) 19:22:31
特許法上は、優先審査(特48条の6)の上申書を提出するか、早期審査請求をするしかないですね。
早期審査請求ができないのであれば、上記事情を説明する上申書を提出することになると思います。
なお、特許庁の不作為(ミス又はサボリ)による審査の遅延によって損害が生じていれば、特許庁に対する損害賠償を請求できる可能性があります。
Re: 保護期間 – ペンキ
2010/02/01 (Mon) 12:29:02
審査官の懈怠の問題は別として、特67条1項の趣旨から、出願日から20年を経過した特許出願は、出願に係る発明について独占かつ排他的な権利を発生させるべきでなく、またすでに発生している権利を消滅させることにあると解されると考えます。したがって、その期間経過後にたとえ当該出願に係る発明がいわゆる特許要件を具備していたとしても特許査定をし、権利を発生させることは、特67条1項の趣旨を没却するこことなり許されないものであると考えます。
また、発明の内容が、出願後20年を経たものは、社会の技術水準に比して相当低いものとなっていると考えられます。それにもかかわらず、なお引き続き独占権を付与し、権利行使されることは本来社会の技術進歩のための制度であるべき特許制度が技術進歩の障害となりかねず、社会一般の蒙る迷惑は少なくなく、特1条に規定する特許制度趣旨からもそのような出願に係る発明に独占かつ排他的な権利を付与させることは妥当ではないと解されます。
したがって、出願日から20年を経過した出願については、特1条に規定する制度趣旨及び特67条1項の趣旨により、出願人が、特許法上採りえる措置は残念ながらないと解されると考えます。
なお、出願日から20年間も放置されていた場合、出願人の蒙る不利益は大きいものがありますので、審査官の懈怠による損害が発生していることを立証できれば、国家賠償法第1条1項に基づく損害賠償を請求できると考えます。
Re: 保護期間 – 管理人
2010/02/01 (Mon) 21:52:14
一応補足します。
ペンキさんがおっしゃるように、特67条1項により、出願から20年を経過した出願について特許権は発生しないのは明らかです。
しかしながら、補償金請求権の発生要件となっているため、特許査定をすることは妥当な行為であると思われます。
Re: 保護期間 – ペンキ
2010/02/01 (Mon) 22:40:50
>しかしながら、補償金請求権の発生要件となっているため、特許査定をすることは妥当な行為であると思われます
いえ、出願日から20年を経た出願に特許査定を行うことは、特許制度の趣旨及び、特67条1項の立法趣旨を没却するものであり妥当ではありません。以前から申し上げている通り、単に表面上の文言にとらわれることなく、制度趣旨全体を考慮して法解釈を行い、個別具体的な出願事件を解決してゆく必要があります。弁理士として、実務を行われる際にもこのことだけは肝に銘じていただければと切に希望するものです。
なお、特67条1項の立法趣旨については、いわゆる逐条解説(17版)に簡略した説明がなされていますが、現行法制定時の趣旨については、機会がありましたら、旧法の問題点を含めて改正経緯と立法趣旨について詳しく説明したいと考えます。
Re: 保護期間 – 管理人
2010/02/02 (Tue) 00:39:13
ペンキ様
まず、以下においてご気分を害されるであろう発言を致しますことを伏してお詫び申し上げます。
なお、当BBSにおいては、通説、有力説に限らず諸説混合での議論を行う場でありますことを最初に申し上げます。
そのため、どの説を採用するのかは、本BBSをご覧の方の判断に委ねられるべきものであります。
さて、ペンキ様にご指摘されるまでもなく、私自身の法知識が未熟であることは十分に理解しております。
しかしながら、弁理士として仕事をする以上、一法律家として制度趣旨、法解釈等に十分に注意を払って実務を行っている点は断言することができます。
そのため、弁理士として上記点をおろそかにしたまま実務を行っているという前提のご指摘、「単に表面上の文言にとらわれることなく、制度趣旨全体を考慮して法解釈を行い、個別具体的な出願事件を解決してゆく必要があります。弁理士として、実務を行われる際にもこのことだけは肝に銘じていただければと切に希望するものです。」は、許容できるものではございません。
また、弁理士として実務を行われている方にご批判頂くのであれば納得もいくのですが、仮にそうでないのならば、いささか不遜に過ぎるようにも思われます。
最後に、出願日から20年が経過した出願に対して、特65条1項の規定による請求権の行使に必要な特許権の設定の登録を受けるために、実体審査を受ける利益を有することを認めた知財高裁の判例があることを付言いたします(平成17年(行ケ)10516号)。
※遡及出願日が1986年2月26日で、特許査定が2007年11月28日です(特許第4059419号)。
ペンキ様の説には相当の根拠があるように見受けられますので、制度趣旨全体を考慮した法解釈に基づくとどのような意見になるのか、当該判例に対するご意見をご説明いただければ幸いです。
Re: 保護期間 – ペンキ
2010/02/03 (Wed) 21:46:43
ご返事が遅くなりました事、また、私の内容で管理人さんが「不遜」と感じられた事についてまずお詫びさせていただきます。ただ、私の思いは、ここに質問される皆さんが、私の説明で少しでも疑問が解消され、将来弁理士として実務を行われる際の法解釈において、法制度全体の理解と本来の立法趣旨に立って、個別具体的な事件に当てはめ、事件をより良い方向へ解決を図っていただければという、熱意からきていることをご理解していただければ幸いです。さて、ご指摘いただいた点につき、以下に説明させていただきます。なお、ご質問の趣旨は、特許出願を行い、審査請求を行ったが、出願の日から20年間、何ら行政処分をされずに経過してしまった。この際に出願人はいかなる措置がとれるか?という内容の理解で説明いたします。
特許法は、発明と保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的としています(特1条)。そして発明の最終的保護形態として発明についての独占的かつ排他的支配権としての特許権を付与して、発明者及び出願人の利益を保護していますが(特68条)、これも究極的には発明の奨励、産業技術水準の向上と促進を図り、もって産業の発達に寄与することと一致するものでなれけばなりません。特許権が与えられると特許権者は業としてその発明を実施する権利を有するものであり、他人(第三者)は、別個独立にそれと同じ発明をしてもそのことだけでは特許権者に無断で実施することはできず、また後願の特許権者の特許発明を実施するため先願の特許権者の特許発明を実施しなければ実施できない場合には、後願の特許権者は、先願の特許権者の許諾を得なければ、その実施をすることはできません(特72条)。このように一旦特許権が付与されると第三者は営業活動上制限ないし不利益を受けることとなりますので、第三者はそのような制限ないし不利益を除去しいたと望むこと、また、特許制度の意図する発明の利用の促進の観点からは、特許権はなるべく早く消滅させ、何人も自由にその発明を実施できるものとする必要があります。
そこで特許法は、特許権を付与して発明者及び出願人の利益を保護することにより発明の保護及び奨励を図り産業技術の向上に資するとともに、特許権という独占かつ排他的支配権の付与による第三者の営業活動上の制限ないし不利益、及び発明の実施の促進による産業の発達に寄与するという目的との調和を図ったのが特許権の存続期間(特67条1項)であると考えます。したがって、特許出願の日から20年を経過した後は、当該出願に係る発明についての独占かつ排他的な権利を発生させるべきでなく、またすでに発生している権利(補償金請求権も含まれるものと考えます)を消滅させることにあると解されますので、その存続期間経過後に特許査定をし、権利を発生させることは、上記特67条1項の趣旨を没却することとなり許されないものであると考えます。仮に、存続期間経過後の当該出願に係る発明に特許査定をし、特許権を付与した場合、その発明の内容は既に社会の技術水準に比して相当低いものとなっています。それにもかかわらず、なお引き続き独占権を行使されることは本来社会の技術進歩のための制度であるべき特許制度が逆に技術進歩の障害となりかねません。このことは、特許法の目的を意図するものではないと考えます。したがって、存続期間を経過した発明は、特定の者に独占させるよりも人類共通の財産として、万人に自由に利用させ、産業技術の促進に役立だたせた方が、特許法の理念にもかなうものと考えます。
最後に、ご教示いただいた判例ですが、この事案は、審査官が下した補正却下の決定という行政処分に対する取消事件であり、ご質問の内容の事案と趣旨が異なると考えます。したがって、本判旨の射程範囲が及ぶかどうか疑問に感じます。また、判決文の中で「・・・しかしながら、本願に関する権利存続期間が満了したとしても、原告は、特65条1項の規定による請求権の行使に必要な特許権設定の登録を受けるため、本願につき実体審査を受ける利益を有するから、本訴における訴えの利益を有するものと認められる」と原告の主張を容認していますが、その理由(法的根拠)については述べられていません。裁判長であった三村先生らしからぬ判示であるのが残念です(三村先生の判例評釈や論文は、理路整然とし傾聴に値する見解が多いのですが。)
今後は、管理人さんの指摘がありましたので、書込みは控えたいと思います。
Re: 保護期間 – 管理人
2010/02/03 (Wed) 22:58:29
ペンキ様
ご回答いただきありがとうございます。
まず、私としては書き込みを拒否する旨の指摘をしておりませんので、その点は誤解なきようにお願い致します。
さて、おっしゃる通り、この判例の射程範囲がどの程度かは議論になることだと思います。
しかしながら、現実に出願日から20年経過後に特許査定がなされておりますので、「出願日から20年を経た出願に特許査定を行うことは、特許制度の趣旨及び、特67条1項の立法趣旨を没却するものであり妥当ではありません。」との法解釈は、少なくとも実務及び弁理士試験的には誤りだと思われます。
もう一つ、特65条6項の規定から、補償金請求権を出願日から20年経過後に行使し得るのは明らかです。
従って、「特許出願の日から20年を経過した後は、当該出願に係る発明についての独占かつ排他的な権利を発生させるべきでなく、またすでに発生している権利(補償金請求権も含まれるものと考えます)を消滅させることにあると解されます」とのご理解は誤りです。
(善意に解釈すれば、不法行為の時から20年で請求権が時効消滅しますので、出願日に出願公開及び侵害がなされたケースに関しては、おっしゃる事例が成立し得ます。)
最後に、失礼ながら一合格者としてアドバイスをさせて頂きます。
法解釈は最終的には各人の判断に委ねられるべきものですが、試験では通説や実務が重視されるのが現実です。
従いまして、自説に拘泥することなく、時には他説を採用することも早期合格には有効であると思います。
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なお、本日の本室更新は「商標法34条」です。
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