先使用又は先出願による通常実施権

先使用又は先出願による通常実施権に関する質問
なお、ご質問は「独学の弁理士講座BBS」でお願いします。
無題 – トキ
2009/04/22 (Wed) 15:23:24
「意匠法においての先使用による通常実施権と先出願による通常実施権についての質問なのですが・・・
どうして意匠法上において、このような2つの通常実施権がわざわざ存在するのでしょうか?また、この2つの通常実施権の違いが良く理解できません。
基礎的な質問で大変申し訳ございませんが教えていただけないでしょうか?」
Re: 無題 – 倭猿
2009/04/22 (Wed) 17:06:45
「先使用権の存在意義については特許法と同じですので、説明を省略します。
問題は、先出願の通常実施権だと思います。
一言でこの存在意義を言えば、特許法には出願公開制度があるのに対して、意匠法にはそのような制度が無く、拒絶が確定した出願は、原則として公表されないため、必要とされたのです。
 先願が、権利化されていない公知意匠Aに基づいて3条1項各号の一に該当し、拒絶が確定したら、「この先願意匠Bは、誰も意匠権を取得できないから、実施しても大丈夫」と感じます。
 しかし、他人が後願意匠Cを出願し、権利化したとします。
 ここで、A≠C,B≒C、です。CはAによっては拒絶されませんがBに類似します。
 仮に、出願公開制度があれば、先願意匠Bは公開されますから、Cが権利化されることはありませんが、そのような制度はありません。
 このままでは、先願者が先願意匠Bを実施すると、後発的に後願意匠Cの意匠権侵害となってしまいます。
①ここで、後願意匠Cの出願前に先願意匠Bを実施等していれば、先使用権によって先願者は救われます。
②しかし、後願意匠Cの出願後に先願意匠Bを実施等すれば、先使用権による救済はありません。また、出願公開されないため、後願Cが存在することを先願者は知る由もありません。
③ただし、後願意匠Cが設定登録した後であれば意匠公報が発行されますので、先願者はCの意匠権を知ることができたはずであり、この時点で先願意匠Bを実施等し始めても先願者を救済する必要はありません。
先出願の通常実施権は、この②の場合に先願者を救おうとするものです。
説明を端折っても、長文になってしまいました。不正確な部分ありますがご勘弁を。
以上の説明によっても、疑問は残ると思います。その点は青本を何度も読み返してください。説明していない「先願の地位」との関係も理解できると思います。
先出願の通常実施権は、条文どおりに読んでも納得できない点が多々ありますので、今回のことが理解できたら、また質問すればよいと思います。
また、先使用権と先出願の通常実施権との違いは、上記①と②の違いです。」
Re: 無題 – 管理人
2009/04/23 (Thu) 12:42:42
「トキさん
ご質問ありがとうございます。
まず、弊サイトの短答用レジュメをお持ちの場合は、意29条の2の解説をご覧下さい。
(http://benrishikoza.web.fc2.com/sample/sample.html)
倭猿さん
ご回答ありがとうございます。
さて、先出願による通常実施権(意29条の2)は、以下の理由で設けられた制度です。
すなわち、
拒絶確定出願に係る意匠に類似する後願意匠は登録される場合があります。
このとき、先使用権が認められない場合(後願の出願前に実施又は実施準備をしていない場合)には、先願の拒絶確定出願に係る意匠の実施が後発的に制限され、その実施者が不測の損害を被ることがあります。
このような問題に対応するために、一定要件下で拒絶確定出願の出願人に、後願に係る意匠権についての通常実施権を認めることとしたのです。
一言でいうと、先願の出願人の期待権を保護し、後願の意匠権者との利害関係を調整しているのです。
このような趣旨から、主に以下の点で先使用による通常実施権(意29条)とは異なります。
すなわち、
①後願意匠権の意匠登録出願からその設定登録までの間に開始された実施等を対象とする点。
②後願意匠権の意匠登録出願日前に自ら意匠登録出願を行い、その出願に係る意匠の実施等をしていることを要する点。
③自らした意匠登録出願について、意3条1項各号に該当して拒絶査定等が確定していることを要する点。
です。」
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