職務発明取扱規程例第9条 (権利の処分)

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以下に、職務発明取扱規程例を掲載するが、これは一例に過ぎず、特許法第35条に適合すること、及び現実の職務発明等を取り扱うために必要十分であることを保証するものではありません。実際に職務発明取扱規程を策定・改定するに際しては、弁理士等の専門家の見解を仰ぎ、企業毎に適した規程及び制度を策定して下さい。なお、本職務発明取扱規程例では、汎用性を高めるために細かい手続的規程は別途細則にて定めるという形式を採用しています。

第9条 (権利の処分)

会社は、取得した特許等を受ける権利について、特許出願等、特許等を受ける権利の譲渡、実施権の設定又は許諾、若しくはその他の処分を行うことを自由に決定できる。

2 会社は、第1項に定める特許出願等の形態、内容又は特許出願等を行う国等についても自由な判断によって決定できる。

3 従業者等は、会社が行う特許出願等又はその他の手続に協力しなければならない。

4 会社は、取得した特許等を受ける権利に基づいて特許出願等を行った場合、当該特許出願等の放棄又は取下げ、若しくはその他の手続を行うことを自由に決定できる。

5 会社は、取得した特許等を受ける権利に基づいて特許出願等を行って特許権等を取得した場合に、当該特許権等の放棄、譲渡、特許料納付の停止、実施権の設定又は許諾、若しくはその他の処分を行うことを自由に決定できる。

解説

・法律上、会社は取得した特許等を受ける権利及びそれに基づく特許権等を、制限なしに処分できる。しかし、例えば、出願をしない旨の決定、出願取下げ、補正等その他の手続等を行う場合は、実績報奨の金額が変わる可能性があるため、従業者等がそれらの行為に異議を出すことも想定される。そのため、自由に使用処分できる旨を定めておくことが望ましい。また、手続に対する協力義務を定めることも望ましい。なお、対価の額に変動が生じる場合は、発明者等に対して通知を行うなどの配慮が必要である。

・第1項の実施権とは、特許等を受ける権利に基づいて取得すべき特許権等についての仮専用実施権及び仮通常実施権のことである。なお、難解な文章となることを避けるために、単に「特許等を受ける権利について・・・実施権を設定又は許諾」とのみ記載している。

・放棄又は取り下げる特許出願等について、発明者等が継続を希望した場合は、発明者等に譲渡する旨を定めても良い。なお、取得した特許権等を放棄し又は特許料納付の停止をする場合も同様である。

・取得した特許権等を第三者へ譲渡する場合にも、実績報奨の金額が変わる可能性がある。そのため、第三者へ譲渡する場合は、将来の対価請求権の取り扱いについて従業者等と覚書を交わすことが望ましい。

・発明者等に通知する条項としては、「会社は、第1項に定める譲渡の決定及び特許出願等を行う若しくは行わない旨の決定、第4項に定める放棄又は取下げの決定、第5項に定める放棄、納付停止又は譲渡の決定を従業者等に通知する。」というものが考えられる。

例文

仲裁センター例:第9条 (権利の処分)
 会社は、職務発明について特許を受ける権利を承継したときは、当該職務発明について特許出願を行い、若しくは行わず、又はその他処分する方法を決定する。
 2 出願の形態及び内容については、会社の判断するところによる。
 3 職務発明について特許を受ける権利を会社に譲渡した従業者等は、会社の行う特許出願その他特許を受けるために必要な措置に協力しなければならない。
 4 会社は、特許を受ける権利を承継した職務発明について、特許権を取得し又は特許権を維持する必要がないと認めたときは、当該特許を受ける権利を放棄し、当該特許出願を取り下げ、又は当該特許権を放棄することができる。
 5 職務発明ではないと認定した発明については、会社は従業者等の自由処分権を侵してはならない。

発明協会例:第8条 (特許を受ける権利の処分)
 発明者は、会社が当該発明者の発明について、職務発明でないと認定をし、または職務発明であるがその特許を受ける権利を会社が承継しないと決定した後でなければ特許出願をし、または特許を受ける権利を第三者に譲渡してはならない。

特許庁例:第5条 (権利の処分)
 会社は、職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当該職務発明について特許出願を行い、若しくは行わず、又はその他処分する方法を決定する。
2 出願の有無、取下げ又は放棄、形態及び内容その他一切の職務発明の処分については、会社の判断するところによる。

特許庁例:第6条 (協力義務)
 職務発明に関与した従業者等は、会社の行う特許出願その他特許を受けるために必要な措置に協力しなければならない。

総合センター例:第5条 (権利の処分)
 会社は、職務発明について特許を受ける権利を取得したときは、当該職務発明について日本又は外国において特許出願を行い、若しくは行わず、又はその他処分する方法を決定する。
 2 出願の有無、取下げ又は放棄、形態及び内容その他一切の職務発明の処分については、会社の判断するところによる。

総合センター例:第6条 (協力義務)
 職務発明に関与した従業者等は、会社の行う特許出願その他特許を受けるために必要な措置に協力しなければならない。

参考集

・IP評価研究会作成「新職務発明制度への対応」 2005年5月30日 発行(例文中、仲裁センター例として引用)
・社団法人発明協会研究部編著「職務発明ハンドブック」2000年9月19日発行 (例文中、発明協会例として引用)
・ 特許庁作成「中小企業向け職務発明規程ひな形」2016年4月1日更新(例文中、特許庁例として引用)
・ 東京都知的財産総合センター作成「職務発明制度改正対応の手引」2016年9月作成( 例文中、総合センター例として引用 )

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