特102条2項の利益の額、及び同3項の実施料率に関する大合議判決です。
結論としては、『特102条2項の侵害者が受けた利益の額は、侵害品の売上高から、侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除して算出する。また、特102条3項の侵害者の実施に対し受けるべき料率は、通常の実施料率に比べて高額になることを考慮すべきである』です。
・平成30年(ネ)第10063号『特許権侵害差止等請求控訴事件』
管理部門の人件費や交通・通信費が、特102条2項の侵害者が受けた利益に含まれるか否か等が争われた事例。
大合議は、特102条2項の侵害者が受けた利益の額は、侵害品の売上高から、侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり、その主張立証責任は特許権者にあると判断しました。また、例えば、原材料費、仕入費用、運送費が、控除すべき経費に当たり、通常管理部門の人件費や交通・通信費はこれに当たらないと例示しました。
また、大合議は、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情が、推定覆滅の事情として考慮でき、侵害者が主張立証責任を負と判断し、例えば、
①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性)、
②市場における競合品の存在、
③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、
④侵害品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)、
⑤特許発明が侵害品の部分のみに実施されていること(ただし当該部分の侵害品中における位置付け、特許発明の顧客誘引力等の事情を総合的に考慮する)、
を考慮すると判示しました。
特102条3項については、侵害者の実施に対し受けるべき料率は、通常の実施料率に比べて高額になることを考慮すべきであると述べて、
①実際の実施許諾契約における実施料率(これが明らかでない場合には業界における実施料の相場等)、
②特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、
③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、
④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等の訴訟に現れた諸事情、
を考慮して料率を定めると判示しました。
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