特許の鉄人の感想

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6月19日に渋谷で行われた「第1回「特許の鉄人」~クレーム作成タイムバトル~」に解説者として参加してきました。まさか観客が集まるとは・・・まさかこんなに面白いとは・・・まったくの予想外で非常に楽しいイベントに仕上がっていて驚きでした。

イベントの概要

まず謝罪から。本当は失敗すると思っていました。関係者の皆様ゴメンなさい。あと、実際に見るまでこんなに面白いとは思っていませんでした。見るのとやるのでは大違いで、見るイベントしてはめちゃくちゃ面白いです。

さて、 今回のイベントは概要は以下の通りです。
・第1試合は日用品発明対決、第2試合はソフトウェア発明対決
・発明品は当日始めて出場選手に紹介される
・25分間に発明者へヒアリングして、クレームを作成する
・ヒアリングはクレーム作成中でも可能(←これ大事!)
・1試合で作成できる請求項は5個まで
・終了後に出場選手は持ち時間3分で クレーム に関してプレゼンする
・どちらのクレームが優れているのか、会場の投票で決定する
・評価ポイントは、①発明のポイントを的確に抑えてしっかりと文章にできているか? ②従来技術との差異を明確にできているか?③実際のビジネスに役立つクレームになっているか?の3点

裏方からのコメント

観客の皆様もいろいろ不満や疑問を感じられたかと思いますので、想定されるものに対していくつかコメントさせて頂きます。

Q1『投票する時にクレームが見れないんだけど何で?
A.観客の投票中にクレームが見れないという課題がありました。これは選手が使い慣れた自身のPCで参加して頂いておりましたので、観客用に別画面でクレームを見せることができなかったという環境上の問題です。また、投票中の選手の様子を見せるという演出上の理由もあるかと思います。主催者も課題として把握していたので、第2回では改善されることを期待します。

Q2 『新規性がないクレームになるのは何で?
A.一番の原因は選手から発明家への質問時間を十分に取れなかったことです。そのため、従来技術のヒアリングが不十分になり、また従来技術を説明するタイミングが遅くなりました(開始10~15分経過してようやく説明)。そのため、クレームに盛り込むことができなったと思われます。なお、今回はネットの利用を禁止していましたので、従来技術を検索するとかその公報を読むとかはできませんでした(できたとしても時間内にそこまでやるのは不可能でしょうが)。あと、やってみればわかりますが、25分だとクレーム書くだけで精いっぱいで従来技術との相違点を組み込むのは至難の技です。

Q3『便利ツール使ってないのは何で?
A.今回はツール(明細書作成支援ツール及びワードマクロ)の使用が許可されていましたが選手の方は使用されていないようでした。推測ですが、通常はデスクトップで作業をされているため、ラップトップにはツールを入れてなかったのではないかと思われます。

Q4『クレームが理解できないんだけど?
A.クレームの内容について説明(解説)ができず申し訳ありません。作成後に説明するとなると時間もないうえにダレてしまうので、今回はできませんでした。また、クレーム作成中に飽きさせないように、司会者の方と協働して解説するスタイルをとっていましたので、特に第2戦目のソフトウェア発明のクレームについては、都度解説が難しかったです(ただ、あのスピード感だと解説しても間に合わなかった可能性があります)。なお、第1戦目では観客席で勝手に実況していましたが、実況スタイルでやればかなりの部分で解説ができそうです。

Q5『結局どちらのクレームが優れていたの?
A.クレームの良し悪しはクライアントによって評価基準が異なるので、一義的に定めることができませんので、分かりません。例えば、第1戦目の高橋先生は、発明家の想いを汲み取るようなクレームを作られていましたので、発明家からの評価が高くなると思います。また、過去に同様のイベント(クレームドラフティングコンテスト)を主催した経験からいうと、イベントで票を集めるクレームは、実務的に優れたクレームとは必ずしも一致しません。具体的には、面白いクレーム、意外な観点からのクレームの方が評価が高い傾向にあります。したがって、今回は勝敗を決しましたが、それが直ちに実務的に優れたクレームを意味するわけではありません。

観戦のポイント

今回のイベントで私が面白いと感じたのは以下の点です
①客観的にクレーム作成過程を観ると、作成者の思考の経緯が文章の変化に現れるので、思考をトレースするという体験が楽しい
②当事者ではない一般観客(発明者でも、弁理士でも、審査官でもない)に評価されるポイントが読めないので、評価者を考慮した選手の戦略を推理するのが楽しい

なお、リハ経験者としてはいろいろ戦略があると思っています。例えば、
・従来技術、外国出願の可能性等のクレームに影響することは敢えて前半に聞かず、後半に質問する
・クレームのポイントを(クレーム作成の目的)を書いてからクレーム作成をすることによって、観客に対してプレゼン前にアピールする
などが考えられます。

第2回も検討中であるとのことですので(選手4名が集まったら開催するそうです)、今後に期待が持てますね。なお、個人的には、口述試験後の11月1日を希望します。でも、今秋には「AI vs 弁理士」の商標対決も予定されているので、これとぶつからないのが一番の希望ですね。

選手のクレーム紹介

出場選手の方々がクレームを公開していますので紹介します。

高橋政治先生 :勝ちました!(化学、材料、食品系特許の実務)
松山裕一郎先生:クレーム解説前編解説後編(FaceBook)
奥村光平先生 :特許の鉄人で書いた請求項を公開します。(爆速!知財のIPX ~COO/CTOのブログ~)

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