弁理士が説明する「それってパクリじゃないですか?」第9話の専門用語

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!ネタバレ注意!※ネタバレを含みますので、未見の方はTverでドラマをご覧になってからお読み下さい。
6/7放送の「それってパクリじゃないですか?」第9話は、著作権利用契約とノウハウ管理がテーマでした。いよいよ次回が最終回ですが、挫折あり、怒りあり、悲しみありの急展開で非常に面白い内容でした。というわけで、今回も専門家として、初学者にもわかりやすいよう条文を交えて説明していこうと思います。

著作権利用契約と著作者人格権 -著作権法第20条–

今回のドラマでは、適切な著作権の利用契約を結んでいたにも関わらず、著作物の改変等に著作権者である作者が怒ってしまうという話が展開されました。一般に、著作権の利用契約又は譲渡契約を結ぶ際には、著作者人格権を行使しない旨の規定を盛り込みます。この著作者人格権には、公表されていない著作物の公表内容を決める権利(公表権※著作権法第18条)、著作物に著作者名を表示する権利(氏名表示権※著作権第19条)、及び著作物の内容等を改変されない権利(同一性保持権※著作権法第20条)があります。

契約当初は、改変が予定されていなかったり、又は改変が予定されていてもその程度が分からなかったりということがあります。しかし、著作物、例えば、イラストは、イラストを利用するメディアに応じてトリミングや色の変更などの改変が行われる可能性があります。そして、改変の程度が著作者に与える印象は、予想が難しいものです。そのために、予め争いが起きないようにしているわけです。ドラマでは、同一性保持権の不行使が契約にあったものの、月夜野ドリンクが、月夜ウサギのイラストの背景を変える等の改変を行ったことに、作者が怒ってしまいSNSでの炎上につながりました。

これは、契約書の内容の誤解ということで話が進みましたが、仮に誤解がないとしても著作者が許せない改変というものもあります。実際の事例では、招き猫をモチーフにしたオブジェが、黒を基調としたデザインに改変されて、著作者が企業に抗議するという事件がありました。この事件では、同一性保持権の不行使が契約にあったかは不明ですが、仮にあったとしても著作者に許されない改変であった可能性が高いと思われます。契約があることによって、「何でもやってよい」という誤解が生じることもありますので、敢えて著作者人格権を不行使の規定を盛り込まないという姿勢もあると思います・・・が、私であったら怖くてなかなかそこまでは踏み込めないですね。

スーパー早期審査

今回のドラマでは、ノウハウとして秘匿化を試みた発明が、ライバル企業に特許を取られてしまうという例が登場しました。 この時に、三カ月で特許を取得する方法として使われたのが、スーパー早期新審査です。スーパー早期審査とは、その名の通りスーパーな早期審査であって、特許庁から審査結果を受け取るまでの期間は、平均1か月以下となっています。なお、通常の早期審査という制度もあり、この場合に特許庁から審査結果を受け取るまでの期間は、平均3か月以下となっています。

また、早期審査は、実施している発明や、外国に出願した発明、中小企業による発明等が対象となります。そして、スーパー早期審査は、実施している発明であって、且つ、外国に出願した発明又はベンチャー企業による発明が対象となります。これらとは別に、優先審査(特許法第48条の6)という制度もあります。優先審査は、出願公開後に第三者が発明を実施している場合に、優先的に審査を受けられるという制度です。

先使用権とは? –特許法第79条–

さて、ライバル企業に特許を取られてしまったので、月夜野ドリンクが発明を実施するためには実施をするための権利が必要となります。ここで登場したが、先使用権(先使用による通常実施権)です。簡単に言えば、他人が特許を出願した時に、発明を実施していたか又は実施する準備をしていた場合に、継続して発明を実施できる権利です。

ドラマの中では実施はしておらず、実施の準備であるのですが、実施の準備をしていたと認められるのは簡単ではありません。具体的には、即時実施の意図を有し、且つ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていなければならないからです。例えば、事業に必要な機械を発注して完成している場合、雇用契約を結んで相当の宣伝活動をしている場合等が実施の準備に当たります。一方、機械購入のための資金の借り入れの申し込みは、実施の準備に当たりません。

ドラマの設定では、相当の宣伝活動をしていたようですので、その証拠を用意できれば先使用権が認められる可能性がありそうです。なお、ノウハウとして秘匿する場合には、万が一他人に特許を取られてしまったことを考慮して、実施又は実施の準備をしていた証拠を残しておくのが常道です。例えば、公証人役場において、発明や製品に関連する資料の確定日付の公証を得るという方法があります。

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