弁理士が説明する「それってパクリじゃないですか?」第8話の専門用語

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!ネタバレ注意!※ネタバレを含みますので、未見の方はTverでドラマをご覧になってからお読み下さい。
5/31放送の「それってパクリじゃないですか?」第8話は、パテントトロールがテーマでした。前回の相手は発明を実施しているということもあって、パテントトロールとは若干印象が違っていました。しかし、今回は本当の(?)パテントトロールが登場し、悪役感を存分に発揮していましたね。というわけで、今回も専門家として、初学者にもわかりやすいよう条文を交えて説明していこうと思います。

出願人名義変更 -特許法第34条第4項–

今回のドラマでは、発明を奪われた事件が登場しました。実際に発明を奪われるというのは、特許出願人(又は特許権者)の名義を他人に変更されてしまうことを意味します。具体的な手続きとして、特許出願後に特許を受ける権利(特許権者になる権利)を譲渡等して移転した場合に、出願人名義変更を行います。特許法では、特許を受ける権利の移転は、特許庁長官に届け出なければ効力を生じないと規定されています。

出願人名義変更をする場合には、出願人名義変更届という書類の他に、譲渡を証明する書類として、譲渡証書又は契約書等が必要となります。例えば、譲渡証書には、「・・・を譲渡したことに相違ありません」などという言葉と、譲渡する者と譲渡された者が実印を押す必要があります。ドラマの中では、色々な書類に押印させていたということでしたので、その中に譲渡証書が含まれていたのだと思われます。ただし、譲渡証書の内容は難しいものではないので、騙されて押印することは考え難いです。そのため、契約書の形で押印させたのかもしれません。

発明者の補正 -特許法第188条–

ドラマの中では、出願引だけではなく発明者も変えられていました。発明者を変える場合には、願書を補正するための手続補正書を提出します。話がズレますが、ドラマではきちんと出願人名義変更届と手続補正書とが映されていて、監修が行き届いていることに感心しました。話を戻して、手続補正書には、発明者を変える理由を記載しなければなりません。

よくある理由ととしては、誤記等の理由があります。発明者の変更は、重大な変更ですので、発明者の追加又は削除をする場合には、変更前の発明者と変更後の発明者との全員による宣誓書が必要となります。ただし、この宣誓書には押印が不要ですので(ドラマの設定の時代は昔なので、その時は必要であったはずです)、出願人名義変更と比べれば偽造が楽だったかもしれません。

なお、発明者は、発明者として公表される権利(発明者名誉権)を持っています。そのため、願書から勝手に発明者の名前を削除した場合には、慰謝料の支払い等を要求される可能性があります。そのため、仮に誤りであったとしても、慎重に手続きする必要があります。

非弁理士が代理してもよいのか? –弁理士法第75条–

総合発明企画代表である芹沢は、過去に「弁理士でもないのに」の出願人名義変更届等を作成して特許庁へ提出していました。弁理士でない者は、特許等の特許庁における手続の代理をすることができません。これは、弁理士法第75条に規定されており、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金になる恐れがあります(弁理士法第79条)。

ただし、弁理士法では、「他人の求めに応じ報酬を得て」代理をすることができないと規定されています。そのため、無償で(つまりはボランティアで)代理をすることは違法ではありません。実際に、無償で代理をする事例も存在しています。とはいえ、ドラマの設定からすると、芹沢が無償で代理をしていたはずもなく、弁理士法違反であったと思われます。

なお、弁理士法違反の罪は、公訴時効が三年ですので(刑事訴訟法第250条)、ドラマの設定であれば、すでに罪を問うことができない状態となっています。

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