弁理士が説明する「それってパクリじゃないですか?」第5話の専門用語

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!ネタバレ注意!※ネタバレを含みますので、未見の方はTverでドラマをご覧になってからお読み下さい。
5/10放送の「それってパクリじゃないですか?」第5話は、著作権と拒絶理由通知がテーマでした。そして、第5話から空気が変わりましたね!こういう北脇さんを見たかった・・・!というわけで、今回も専門家として、初学者にもわかりやすいよう条文を交えて説明していこうと思います。

無料公開作品と著作権

たまに事件になるのですけれど、無料で公開されているとしても、他人が創作した写真又は絵等の作品を無断で利用することはできません。もちろん、引用(著作物は引用して利用できる※著作権法第32条)、私的使用(著作物は個人的ならば複製できる※著作権法第30条)などの例外はありますけれど、基本的には無断で商業的に利用をすることはできません。

作中では、他人の作品をポスターに利用するということでしたので、複製権(作品のコピーを作成する権利※著作権法第21条)、翻案権(作品を改変できる権利※著作権法第27条)、同一性保持権(作品を改変されない権利※著作権法第20条)、氏名表示権(著作者として表示される権利※著作権法第19条)などの侵害に当たる可能性があります。

また、ドラマでは権利者から利用許諾を得る「調整」というキーワードが出てきました。実際には著作物の利用の場合には、知的財産部以外の部門(例えば広報部)などが「調整」する場面も多いかと思います。

拒絶理由通知とは? -特許法第50条–

特許出願をすると、特許庁の審査官は、出願された発明に拒絶の理由がないかを審査します。そして、審査官は、拒絶の理由(例えば、新しくない、容易に発明できるなど)を見つけた場合には、出願人に対して拒絶の理由を通知します。これに対して、出願人は、特許を受けることができる理由を記載した意見書を提出できます。また、出願人は、拒絶の理由が解消するように発明の内容を修正する補正(特許法第17条の2)をすることもできます。

ドラマの中では、特許法第36条第4項第1号の実施可能要件の不備(他社が発明を実施できる程度の情報が出願書類に開示されていない)が通知されていました。ただし、作中では、発明の効果が分からないという話でした。そのため、実際の場面では、特許法第36条第6項第1号のサポート要件の不備(発明が出願書類に記載されていない)が通知されるのではないかと思います。

このサポート要件は、条文上は発明が出願書類に記載されていればよいのです。しかし、現在の確定した運用では、発明によって課題を解決できる(十分な効果を発揮できる)と認識できる程度の記載が出願書類にない場合には、サポート要件の不備が通知されます。そのため、効果の説明が足りないというドラマの設定では、サポート要件の不備の方が妥当であるように思われます。ただし、出願書類に記載がない場合であっても、特許出願の時の技術常識から、発明によって課題を解決できると認識できれば、サポート要件を満たすと解釈されます。

面接とは?

「面接」とは、特許庁の審査官と出願人又は代理人弁理士等とが、審査に関わる意思疎通を図るための面談を意味します。面接の方法としては、電話面接、オンライン面接、出張面接、及び特許庁での面接などがあります。基本的には、審査において一回の面接機会が保証されていますが、二回以上の面接も、審査官の裁量で認められることがあります。また、試作品を面接に持参することもできます。また、特許庁の地下には、来庁者も利用できる食堂があります。

なお、ドラマでは知財部員と発明者のみで面接をしていましたが、実際には代理人弁理士の同席が要求されます。ただし、やむを得ない事情(代理人弁理士が病気により面接への応対ができない等)がある場合は、知財部員が面接を行うことも例外的に可能です。そのため、ドラマの中では、何らかの事情があって、代理人弁理士が同席できなかったのでしょう。もちろん、事前に電話でアポイントを取ることが必要ですので、ドラマのように突然押しかけてはいけません。

クロスライセンスとは? -特許法第78条–

クロスライセンスとは、一般には、特許権者同士が互いに所有する特許発明の実施を許諾することを言います。この場合、それぞれの特許権者は、相手の特許発明の通常実施権(非独占的に発明を実施できる権利)を得ることになります。ドラマの例では、著作権と特許権のクロスライセンスということでした。なお、可能性としてはあり得るのですが、私自身は聞いたことがありません。とはいえ、発明の実施に、著作権(特にプログラムの著作権)の実施・利用許諾が必要となる場面は十分に考えられます。

分割出願とは? -特許法第44条–

出願書類には、二つ以上の発明が記載されていることがあります。この場合には、出願書類に記載されている一つ又は二つ以上の発明を、新たな特許出願として出願することができます。この新たな特許出願のことを、分割出願といいます。通常は、審査の過程で特許される可能性が高い発明を残し、拒絶の理由が通知されている発明を削除補正して分割出願します。これにより、拒絶の理由が解消(削除)されるため、特許を早期に取得できます。

ドラマの中では、分割出願によって特許されるという設定でした。そのため、効果が分からない発明を削除して、分割出願したものと考えられます。なお、分割出願の方では、効果が分からないという拒絶理由が残ったままです。しかし、効果の記載を追加してしまうと、新規事項の追加(出願時に記載されていなかったことを出願書類に追記してはいけない※特許法第17条の2第3項)という別の拒絶理由が生じてしまいます。そのため、特許出願の時の技術常識を従来技術として追加したのだと思うのですが・・・どうなんでしょうね?

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