弁理士が説明する「それってパクリじゃないですか?」第4話の専門用語

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商標法 独学 チワワ

!ネタバレ注意!※ネタバレを含みますので、未見の方はTverでドラマをご覧になってからお読み下さい。
5/3放送の「それってパクリじゃないですか?」第4話は、炎上商標がテーマでした。最近の事例では、アマビエ商標出願事件がありましたね。というわけで、今回も専門家として、初学者にもわかりやすいよう条文を交えて説明していこうと思います。

炎上商標とは?

過去の事例としては、上述した「アマビエ」の他に、「ゆっくり茶番劇」、「のまネコ」、「PPAP」などがあります。大まかに言えば、自らが有名にしたわけではなく且つ関係者でもない第三者が、名称・ロゴを商標登録出願する場合に、不特定多数の一般人から批判される現象です。ドラマの中では「ツキヨン」という、縄文土器に描かれた絵のキャラクタをプロジェクトのイメージキャラクターに採用するという設定でした。商標登録出願で炎上する事例が毎年のようにありますので、弁理士としては、「炎上リスク」を考慮したアドバイスが必要な場面です。

なお、炎上するタイミングとしては、商標登録出願・商標登録が公開されたタイミングと、商標権に基づき警告したタイミングとがあると思います。この点、ドラマの中では自社が商標登録出願をしたことを公表するという謎の行為で炎上しました(「ゆっくり実況」の例など、登録されないことを確認するために出願したことを公表した事例はあります。)。また、炎上するかどうかは時期と周知性により、どの商標が炎上してどの商標が炎上しないという予測は基本的には困難であると思います(例えば、著名でユーザーも多い「フォートナイト」というゲームのタイトルが、第三者によって商標登録されていますが、炎上したという話は聞かないです)。

予測が困難であるとしても、他人が有名にした(又は勝手に有名になった)名称等を商標登録出願をする場合には、炎上する可能性があるので基本的には避けるべきかと思われます。炎上によるデメリットは、誹謗中傷が集中することの他に、企業・商品イメージが低下することが挙げられます。今回のドラマの事例では、商品の販売開始時のプロジェクトのイメージキャラクターということですので、商品イメージの低下は避けるべきであるという判断が妥当かと思われます。

炎上商標の拒絶理由① -第3条第1項第6号–

炎上商標が多数の人間に使用されている場合には、「誰の業務に関する商標であるのかを認識できない(識別力がない)」として拒絶されることがあります。簡単に言えば、あまりにも多数の企業・人が使用しているので、商標が使用されても、それを見た人が、その商標から誰の業務に関するのかを理解できないということです。商標制度は、商品・サービスに対して使用されることによって、誰の業務であるのかを明らかにする機能を発揮するための制度です。そのため、そのような機能が発揮できない商標が登録されないように、拒絶理由となっています。

炎上商標の拒絶理由② -第4条第1項第10号–

炎上商標が誰かに使用されていて周知である場合には、「他人の業務に係る商品・サービスを表示するものとして周知である(未登録周知商標である)」として拒絶されることがあります。商標登録されていないとしても、他人の周知商標であれば登録できないということです。商標制度は先願主義を採用しており、先に出願をした者が商標権を取得できます。しかし、他人の周知商標を第三者に登録させるわけにはいかないので、拒絶理由となっています。

ただし、特定の誰かの業務に係る商品・サービスを表示するものとして、出願の時に周知となっている必要があります。また、周知となっている商標と炎上商標とが、同一又は類似である必要があります。そのため、出願の時に周知でないような場合、及び誰かの業務に係る商品・サービスを表示するものとして使用されていない場合には、この拒絶理由に該当しません。

炎上商標の拒絶理由③ -第4条第1項第15号–

炎上商標が誰かに使用されていて周知を超えて著名である場合には、これが炎上商標と同一又は類似でなくとも、「他人の業務に係る商品・サービスと間違える(混同を生ずるおそれがある)」として拒絶されることがあります。例えば、著名な企業の社名を含む商標については、炎上商標と同一又は類似でなくとも、当該企業が提供する商品・サービスと間違えるおそれがあります。そのため、そのような間違いが生じないように、拒絶理由となっています。

炎上商標の拒絶理由④ -第4条第1項第19号–

炎上商標が誰かに使用されていて周知を超えて著名であり且つ不正の目的がある場合には、これと間違えるおそれがなくとも、「不正の目的で使用するもの」として拒絶されることがあります。例えば、購入者の層が異なるために、消費者が間違えるおそれがないとしても、不正の利益を得る目的や、他人に損害を加える目的で使用される商標を第三者に登録させるわけにはいかないので、拒絶理由となっています。

炎上商標の拒絶理由⑤ -第4条第1項第7号–

炎上商標が公共の利益に反したり、一般的道徳観念に反する場合には、誰かが使用する商標として周知・著名でなくとも「公の秩序又は善良の風俗を害する」として拒絶されることがあります。伝家の宝刀とか最終手段と言われていますが、実際に目にすることがある拒絶理由です。一例としては、著名な故人の略称、歴史上の人物の名前等は、公の秩序又は善良の風俗を害することを理由として拒絶されます。その他に、他人が使用する商標が出願及び登録されていない隙を狙って、不正な目的で出願した場合には、これが周知・著名でなくとも拒絶されることがあります(ティラミスヒーロー事件)。

区分とは? –第6条第2号–

商標登録出願は、一つ以上の商品又はサービス(役務)を指定してしなければなりません。この一つ以上の商品又はサービスは、法律(政令)で区分されており、これが出願時に指定する「区分」です。具体的には、第1類から第45類までの区分があります。商標は、区分の中から選択した商品又はサービスを指定して出願されますし、この指定した商品又はサービスと同一又は類似する場合にのみ、商標権を行使できます。例えば、ドラマの例では、「お茶」に対して使用する商標でしたので、第30類の「茶」を指定することになります。

Youtube動画で登録商標を使用できるか?

「ゆっくり茶番劇」事件の時によく言われていましたが、基本的にはYoutube動画の中で商標の名前をしゃべってもこれが登録商標の商標権の侵害になることはありません。理由としては、動画の中の商標が、特定の商品・サービスに対して使用されているわけではない(商標的使用ではない)からです。

逆に、商標が登録されたからといって、全ての使用を禁止出来たり独占出来たりするわけではないです。そのため、倫理的な問題を除けば、商標登録出願をすることが、共有の財産である名称やロゴを奪ったり独占したりするというわけではないです。ただし、そのように誤解されることが少なくないので、避けるべきであるというのは変わりませんが。

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