守秘義務に反する公知が、意に反する公知として認められた事例

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特許法 独学 チワワ

拒絶理由通知に挙げられた文献が、守秘義務に反した意に反する公知に係る文献であることを主張して、登録に至った事例(再表2020/095356)を紹介します。

当初の出願人の主張

本事例は国際特許出願であり、国際段階(国際調査機関の見解書)において公知のウェブサイトが挙げられてちます。そのため、出願人は、早期審査請求時に提出された上申書において、意に反する公知であると説明したようです。その主張は、拒絶理由通知に基づけば、以下のようなものであると推測されます。

1.提出した秘密保持契約書の写しに基づいて、『出願人と公開者との間には、出願に係る発明を秘密にするという契約があった』との主張
2.『発明者且つ当初出願人は、 公知のウェブサイトに記載されているイベントに出展する資格がなかった。このため、当初出願人は、知人の名義にて共同で出展した』

審査官の判断

出願人の主張に対して、審査官は拒絶理由通知において以下のように判断して、意に反して公開されたことが、合理的に説明されているとは認められないと判断しています。

1.秘密保持契約書の写しには、新規な加工食品に関する情報が秘密情報として規定される旨が記載されている。しかし、この新規な加工食品と、公知のウェブサイトに記載の食品との対応関係を裏付ける具体的かつ客観的な証拠は示されていない。そのため、出願人と公開者との間に、出願に係る発明(公知のウェブサイトで公開された発明)を秘密にする契約があったことが証明されているとは認められない。

2.本願の発明者は、出展の当時、別のレストランの店長であったことを考慮すると、知人の名義にて共同で出展したという説明は、合理性を欠くと言わざるを得ない。

最終的な出願人の主張

拒絶理由通知に対する意見書で、出願人は以下のように主張しています。なお、(資料1)発酵フムスのレシピの写しと、(資料2)出展者が公開者に開示したことを示す念書写しとを提出しているようです。

1.資料1及び2に基づいて、秘密保持契約書の写しに記載の新規な加工食品と、公知のウェブサイトに記載の食品とは対応する。
2.イベントの出展資格がなかったために、知人の名義で共同出展するという主旨の説明は誤りである。発明者は、独自にイベントの出展を予定していたため、知人との共同出展に至った。

まとめ

最終的な出願人の主張が認められ、審査官は引用文献を取り下げたようです。本事例から、守秘義務契約を提示するのみでは、意に反する公知であることを立証できないことが分かります。そのため、守秘義務契約(又はその添付文書)において、守秘義務を負う発明の内容を明確にすることが重要と言えます。

また、そもそも守秘義務に反する行為について、相手方(今回は共同出展者)に対して具体的に説明をしていれば、このような事態は、未然に防ぐことができたものと思われます。なお、そもそも、出展前に出願をすることが重要でありますが、加工食品という発明の性質からは、出展してその反響を見極める必要性もあったかと思われます。

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