「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂

ニュース
特許法 独学 チワワ

「特許・実用新案審査ハンドブック」が改訂されました。改訂後の審査ハンドブックは、令和5年4月1日以降の審査に適用されます。以下、今回の改定で気になった部分についてご紹介します。
「特許・実用新案審査ハンドブック」の改訂について

出願人による先願の先行技術文献開示の要請終了

「特許・実用新案審査ハンドブック」第I部第2章審査の手順 1204先行技術文献調査結果の記録から、以下の出願人への要請が削除されました。今までは、出願時に公開されており且つ出願人又は発明者が共通する文献であって、当該文献のみで新規性又は進歩性を否定するものがある場合、先行技術文献としての明細書への開示と、特許性についての適切な評価とが、拒絶理由通知書において要請されていました。しかし、今後はこの要請を拒絶理由通知書に記載しないようです。

『3.出願人への要請(以下に該当する場合のみ記載する)
先行技術調査によって、次の条件(1)及び(2)の両方に該当する文献が発見され、当該文献を用いて第29条第1項第3号又は第29条第2項に基づく拒絶理由を通知する場合は、審査官は、出願人への要請を記載する(注1及び注2)。
(1)本願出願時に公開されており、本願と出願人又は発明者が共通する文献(注3及び注4)
(2)本願の一以上の請求項について、当該一の文献のみで新規性又は進歩性を否定することができる文献(PCT国際調査報告におけるX文献に相当する文献)
(注1)複数の文献の組合せにより第29条第2項の拒絶理由通知を行う場合又は、第39条の拒絶理由通知を行う場合は、審査官は、この要請は行わない。
(注2)当該文献が明細書中に先行技術文献として開示されている場合であっても、審査官は、この要請を行う。
(注3)一部共通する場合を含む。なお、表記上一致しない場合は、審査官は、要請を行わなくてもよい。 (注4)電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった情報も含む。』

(特許・実用新案審査ハンドブックより引用)

メールアドレスの一部と審査官名のふりがなの通知

もうすでに変更が適用されていますが、拒絶理由通知の文例に「(PA〇〇)」と「 氏名(ふりがな)」が追加されています。この「(PA〇〇)」は、審査部宛のメールアドレスの「@jpo.go.jp」の前の部分ですので、実質的には審査官への連絡用のメールアドレスが、拒絶理由通知に記載されることになります。また、氏名のふりがなは、外内案件のOA翻訳時に地味に嬉しい変更です。

審判決例集の追加1

「特許・実用新案審査基準」審判決例集に、「カット手法を分析する方法」(令和3年(行ケ)10052号)事件が追加されています。なお、本事件の解説では、「分析の主体が特定されていないことから,人がこうした分析を行うことは排除されていない。」が強調されており、(これまでもそうでありましたが)行為の主体が発明該当性の判断で重視されることが理解できます。

審判決例集の追加2

「特許・実用新案審査基準」審判決例集に、「情報処理装置及び方法、並びにプログラム」(令和3年(行ケ)10056号)事件が追加されています。「サブコンビネーションの発明を他のサブコンビネーションに関する事項を用いて特定しようとする記載」が、請求項中にある場合の、発明の認定に関する判決です。例えば、全体装置の発明であるシステムが観念されるときに、サブコンビネーションの発明である情報処理装置を、他のサブコンビネーションであるサーバに関する事項を用いて特定する場合の、請求項に記載された情報処理装置の発明の認定に関する判決です。

また、本事件の解説では、「・・・という処理は,サーバが独自に行う処理であって,情報処理装置が行う処理に影響を及ぼすものではない」として、情報処理装置の機能・作用を特定しない事項が、発明特定事項とみなされないことが理解できます。
なお、発明者が正林先生であるというのも興味深いですね。

※「サブコンビネーション」とは、二以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明、二以上の工程を組み合わせてなる製造方法の発明等に対し、組み合わされる各装置の発明、各工程の発明等をいう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました