同日出願に係る意匠権と特許権が抵触する場合、各権利者は実施できるのか?

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特許法 独学 チワワ

利用抵触について – 弁理士受験生
2023/03/01 (Wed) 23:31:50
ご回答ありがとうございました。質問箱にてお伺いさせていただいた者です。
後半の質問は以下のことをお伺いしたいと思っておりました。

甲の発明A(物A)を利用する乙の発明B(物Aの用途B)がある場合、甲乙それぞれが出願すると以下の3通りが考えられます。
①甲が後願の場合
甲が後願ですと、甲の出願は乙の出願にかかるBに基づき、39条等で拒絶されます。よって甲が発明Bを実施するには乙の許諾が必要になります。

②甲が先願の場合
甲が先願の場合、甲乙それぞれの発明が特許される可能性があります。この場合、ご説明のとおり、甲は、乙から許諾を得なければ、発明Bを実施できません。

③同日の出願の場合
同日の出願の場合でも発明A、Bが共に特許される可能性があります。その場合、同日出願なので、どちらが優位ということはなく、甲および乙は発明Bを自由に実施できることになるという理解でよろしいでしょうか。

もしそうだとすると、甲からすると、乙より後に出しても先に出しても乙の許諾を要するけれども、同日だと許諾が要らないというのは、論理に疑問が残ります。
先願権者でさえ実施許諾を要するのに同日だと不要となる理屈がよく分かりませんでした。
同日出願の場合、相手方の実施許諾がなければ甲乙いずれも発明Bを実施できないのではと思ってしまいますが、考え違いをしているでしょうか。

誤った理解をしていましたらご指摘いただけると幸いです。
よろしくお願い申し上げます。

Re: 利用抵触について – 内田浩輔
2023/03/02 (Thu) 10:23:51
③の理解が間違っています。
同日出願の場合、甲は発明Aを実施できるだけで、乙による利用発明Bを実施するためには実施許諾が必要です。
また、乙は発明Bを実施できますが、発明Aを単独で実施するためには実施許諾が必要です。

一方、発明Aと意匠Bが抵触する場合、甲が発明Aを実施すると意匠Bを実施することになります。
また、乙が意匠Bを実施すると発明Aを実施することになります。
この時は、互いに自らの発明・意匠を実施できますが、結果として相手の発明・意匠を実施することになります。

Re: Re: 利用抵触について – 弁理士受験生
2023/03/02 (Thu) 18:44:38
ご説明ありがとうございます。

同日なら実施できるという説明が理解できていませんでしたが、実施行為が相手方の特許発明の実施になる場合には許諾が必要とのことで承知しました。
実施行為と他人の特許権との関係だけを考えれば良いということで理解しました。
乙は発明Bを実施する場合、発明Aが物の発明になるので、Bの実施には必ず甲から許諾を得る必要があるものと理解しています。

また、抵触についても同様に、自己の発明の実施が同時に相手方の登録意匠等の実施となるので、相手方の許諾が必要になると理解いたしました。
H27-33(5)に同様のケースの問題がありますが、意匠権者は登録意匠を実施できることとされています。
ここでの実施ができるというのは、特許権の侵害になるわけではないということでしょうか。
許諾なしには実施ができないものと思いますが、問題の意図がよく分かりませんでした。

Re: 利用抵触について – 内田浩輔
2023/03/03 (Fri) 12:46:28
同日の場合に実施できるのは、自らが所有する特許権に係る発明のみという意味です。

つまり、乙が発明Bを実施する場合には、発明Aを実施しますが、甲からの許諾は不要です。
しかし、乙は発明Bを実施する場合を除いて、発明Aを実施することができません(例えば物Aの用途Cは実施できない)。

また、同日の場合の抵触についても同様に、自己の発明等を実施でき、相手方の許諾は不要です(正確には、許諾を要する旨の条文がない)。

そのため、H27-33(5)の問題で、実施ができるというのは、特許権の侵害になるわけではないということで、意匠権者は許諾なしに実施できます。
http://benrishikoza.web.fc2.com/kakomon/h27tanto/h27toi33.html

Re: Re: 利用抵触について – 弁理士受験生
2023/03/04 (Sat) 09:00:33
ご説明ありがとうございます。
とてもわかりやすく事案をイメージしながら整理することができました。
利用抵触関係にある同日の場合はあくまで自己の発明を実施できるのみで、相手方の発明等については実施ができないと理解いたしました。

特許権を排他的権利として同日についても互いに排他しあう関係にすればシンプルだったかなと思いますが、68条が実施権としての性質を規定しているようにも読め、72条で同日が規定されていないことから、上記のように判断するのが望ましいということかと思います。

またご質問させていただけますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

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