意匠法29条の2への判例解釈の適用について – R4年合格を目指すものです
2022/03/03 (Thu) 16:52:11
大変お世話になっております。
以下の点につきお伺いしたく、お時間の許す際にご検討いただけますと幸いです。
【前提】
意匠法29条の解釈について、特許法79条に関する「ウォーキングビーム式加熱炉事件」の解釈がそのまま当てはまるかと思います。
すなわち、「実施をしている意匠の範囲」には、先使用権者が現に実施していた具体的意匠だけでなく、これに類似する意匠も含まれると解釈できるかと思います。
【質問】
以上の解釈を、意匠法29条の2でも適用することはできるのでしょうか。
29条の2柱書の規定ぶりからすると適用できるとするのが妥当と思えますが、一方で同条1号では「当該意匠登録出願に係る意匠の実施」と限定されていることから、通常実施権が認められる範囲は、自らした出願に係る意匠に限られるようにも読めます。
この点、同条柱書でも、「次の各号のいずれにも該当する場合に限り」とあることから、前記判例の解釈を当てはめたところで結局類似する意匠は1号によってはじかれてしまうため無意味と考えて、判例解釈の適用は否定されると捉えるべきでしょうか。
【補足】
H29の意匠法の問題を解いていて、抱いた疑問です。
市販の参考答案を確認すると、類似の意匠については先出願による通常実施権を認めないという結論になっていますが、29条の2への上記判例の適用の可否には言及されていなかったため、お伺いする次第です。
長文失礼いたしました。
Re: 意匠法29条の2への判例解釈の適用について – 内田浩輔
2022/03/09 (Wed) 17:54:08
前提が誤っていて、実施又は実施の準備をしている意匠そのものにのみ通常実施権が認められ、実施又は実施の準備をしている意匠に類似する意匠には認められません。
ただし、私見ですが、ウォーキングビーム式加熱炉事件の射程を考慮すれば、同一と判断できる意匠には通常実施権が認められると思われます。
例えば、色彩のない意匠の図面に基づいて事業の準備をしていた場合、色彩を施した意匠についても通常実施権が認められると思われます。
Re: 意匠法29条の2への判例解釈の適用について – R4年合格を目指すものです
2022/03/10 (Thu) 17:35:33
ご解答いただき、ありがとうございます。
大変わかりやすく、また同一の範囲内であれば多少の幅を認める余地があることも理解致しました。
一方で、「包装用かご」事件(平成12年9月12日
/大阪地方裁判所/平成10年(ワ)第11674号)では、意匠法29条の規定における「実施をしている意匠の範囲」について、以下のように判示されています。
—
「先使用権の効力は、意匠登録出願の際に、先使用権者が現に実施していた具体的意匠だけではなく、それに類似する意匠にも及ぶと解するのが相当である」
—
地裁判決であるため、現在の実務ではこのような判断はあまりされず、29条、29条の2ともに、類似する意匠については考慮しないということでしょうか。
重ねてのお伺いとなり誠に恐縮ですが、ご教示の程よろしくお願い申し上げます。
Re: 意匠法29条の2への判例解釈の適用について – 内田浩輔
2022/03/22 (Tue) 14:15:53
下級審の判決なので、確定的な判断ではないと思います。
とくに、平成10年(ワ)第11674号では、被告の実施意匠と登録意匠とが非類似であって、公然実施によって無効にできないという事情が考慮されたものと思われます。
いずれにしても、意匠の類似範囲を考慮すれば、先使用権の範囲が不当に広くなると思われます(類似物品にまで及ぶ)ので、少なくとも試験上は、類似する意匠については考慮しないと考えた方が良いと思われます。
Re: 意匠法29条の2への判例解釈の適用について – R4年合格を目指すものです
2022/03/23 (Wed) 19:27:34
内田先生
ご多用のところ、丁寧にご回答いただき誠にありがとうございます。
なるほど、意匠の類似範囲は確かにイメージしてみると、特許に比べて通常実施権による実施を認めるには過度に範囲が広くなるような気がします。
実務経験がないため、ご指摘の点非常に参考になります。
ありがとうございました。
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