ノウハウに対する対価請求に関して、特許性を有する発明でなければ、対価を請求できないとした事例

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・令和2年(ネ)第10048号『職務発明対価等請求控訴事件,同附帯控訴事件』

会社の従業員であった発明者が、ノウハウと特許発明とについて、それぞれ職務発明の対価を請求した事件です。原審である「平成30(ワ)36424号」と同様に、特許発明については対価の支払い請求が認容されましたが、ノウハウについては認容されませんでした。ノウハウは、特許性を有する発明でなければ、相当の対価を請求できない(独占の利益が生じない)という点、がポイントです。

なお、発明側からは、特許発明について、いわゆる均等論が職務発明対価請求事件にも適用できるとの主張がなされました。しかし、その当否については直接判断されず、均等の範囲に属さないと判断されています。以下、ノウハウ部分の争点について特に絞って説明します。

ノウハウの概要

 プレイヤが育成したプレイヤー馬が参加する競馬のレース結果を予想する競争ゲームであって、
①プレイヤー馬について、「能力値」とは別に、一定の割合でメダル数と相互に換算される「活力値」(育成過程等によって増加する)という指標を導入し、
②レースに出走するために消費する活力値(消費活力値)と、レース結果に応じて増加する活力値(増加活力値)の期待値とを等しくし、
③同じレースに複数のプレイヤー馬が出走する場合、各プレイヤー馬の増加活力値、消費活力値、及び能力値について、一旦暫定値を用いて計算し、必要に応じて各数値を再調整し、
④活力値は、プレイヤーに認識されない形で増減され、次回以降の競馬ゲームに影響を与える、
競争ゲーム。

裁判所の判断

裁判所は、以下のような判断に基づいてノウハウの特許性を否定しました。

①プレイヤが育成したプレイヤー馬が参加する競馬ゲームを設計するのであれば、能力値とは別の指標を導入する必要が生じることは必然である
②能力値の高い馬について、出走のために消費するメダル数よりも、レース結果に応じて獲得するメダル数の期待値の方が大きくなることが不公平さの原因となる。そして、消費メダル数と獲得メダル数の期待値とが等しくなるように数値調整をすればこの問題が解消することは、誰もが容易に思い付く
③必要に応じて数値を再調整することを前提として、一旦暫定的な数値を用いて計算を行うことは、通常よく採られる方法である
④活力値がプレイヤーに認識されない形で増減され、次回以降のゲームに影響を及ぼすことは、活力値を導入したことによる当然の結果である

その他

原審において、会社側は、ノウハウについては届出もなく、会社に譲渡された事実もないと主張しています。この主張の当否については判断されておりません。

備考

(特許発明に対して)認められた対価の額:17万625円
算定式:
①自社実施について:(超過売上※1×仮想実施料率※2)×(1-会社の貢献度※3)÷発明者数※4
 ※1.売上高×超過売上の割合(50%)
 ※2.5%
 ※3.(1-会社の貢献度95%)=0.05

 ※4. 4人(各発明者の貢献度は同一)
消滅時効の起算点:実績補償金の支給日

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