「ティラミスヒーロー」+ネコのロゴからなる商標(商標登録第6073226号)に対する異議申立について、取消決定が出されています。なお、発送日が9月20日ですので、今後決定取消訴訟が提起される可能性もあり、その場合には取消決定が確定するのはしばらく後になります。また、タイトルにある通り、商標権者が謎の主張をしたようです。
(内容は上記リンク先の「経過情報」→「経過記録」の「審判記録」で決定の内容を確認できます。)
異議の概要
異議の決定は以下の通り、全ての指定商品・指定役務が取り消されています。
「登録第6073226号商標の指定商品及び指定役務中、第30類「全指定商品」、第35類「全指定役務」及び第43類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。」
また、ティラミスヒーロー側が申し立てた異議理由(異議申立の理由)は、以下の4つです。
・周知商標である「ティラミスヒーロー」に類似する:商4条1項10号
・ 周知商標である「ティラミスヒーロー」と混同する:商4条1項15号
・ 他人の未登録周知商標 である「ティラミスヒーロー」 を先取りする悪質な権利の濫用行為である(公序良俗に反する):商4条1項7号
・ 周知商標である「ティラミスヒーロー」を不正の目的で登録した:商4条1項19号
商標権者の意見
商標権者である株式会社gramの意見を抜粋すると以下の通りです。ところで、どういう経緯での話なのか理解不能ですが、「甚大な損害が発生した原因は特許庁にもある」とはよく言えたものです。
・「本件商標と引用商標との同一性・類似性については不知」
・「引用商標の周知性については強く否認(催事出店は常時の出店ではないという点で知名度を有しないことの現れであるなど、引用商標が全国的に知名度のあるものとはいない」
・「防衛目的の取得であり、事業経営上の正当な商標取得である」
・「特許庁の審査によって本件商標の登録が認められたのであるから、甚大な損害が発生した原因は特許庁にもある」
正直、弁解の余地なしという状況で、なぜ意見書(言い訳)を提出したのか理解に苦しみます。また、ティラミスヒーローの運営会社に譲渡すると発表したのは、嘘だったのかと・・・(正確には譲渡するための商標権を維持する必要があるのですが、本家が取消しを申し立てたのならば従うのが筋でしょう)。
特許庁の判断
特許庁の判断を抜粋すると以下の通りです。公序良俗違反についてのみの判断であり、周知性・著名性は認められなかったものと思われます。ただし、証拠不足の可能性もあるので、今後の別の訴訟等において周知性・著名性が認められる可能性もあります。
・「本件商標は引用商標とほぼ同一又は酷似するものである」
・「本件商標は、極めて特徴的な引用商標とほぼ同一又は酷似し、商標権者が引用商標を知り得ることなく、両者が偶然に一致したとは想定し難い」
・「引用商標は、何人も容易に知り得る状況にあったことから、商標権者は、引用商標の存在を知った上で、これが商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、不正な目的をもってひょう窃的に出願したものと優に推認できる」
・「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない」
・・・全否定ですね。ちなみに、「甚大な損害が発生した原因は特許庁にもある」という商標権者の主張に対して、特許庁は以下のようにわざわざ付言しています。
「なお、商標権者は、特許庁の審査によって本件商標の登録が認められたのであるから、甚大な損害が発生した原因は特許庁にもあると考える旨主張している。しかしながら、本異議決定は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かを判断するものであるから、商標権者の上記主張によって、その判断が左右されるものではない。」
補足
商標出願2018-025681の審査過程における拒絶理由通知(2019/9/3発送)では、10,15,19号の拒絶理由も挙げられています。
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[…] 商標は選択物なので、冒認出願という概念はなく、非登録先使用商標を勝手に出願することは先取り出願(又は剽窃出願)と表現します。過去には、大量の先取り出願が問題となり、特許庁が異例のアナウンスをしたこともあります。ただし、先取り出願は、倫理的な問題は置いておくにしても、違法な行為ではなく、拒絶理由に該当しなければ普通に登録されます。例えば、ティラミスヒーロー事件でも、先に使用していた企業の商標が勝手に出願されましたが、登録自体はされています。 […]