弁理士試験-訂正の再抗弁の要件

訂正の再抗弁の要件
シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – Let’s Go!!
2018/06/11 (Mon) 18:16:43
>③特許権者は、無効理由を解消するための訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったが、訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない。そして、特許権者が訂正の再抗弁を主張できなかったとはいえず、その他の特段の事情はうかがわれない
ブログで、上記を拝見しました。
ある予備校の某講師が、
>無効理由を解消するための訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったが、訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない。
で、
「訂正の再抗弁を主張するために、訂正審判の請求又は訂正の請求をしている必要はない」と教えており、「ナイフ加工機事件やH23年法改正本で示された基準が変わった」と主張されてるのですが、
そういうことでしょうか?
しかし、
「訂正請求等をしなくても訂正の再抗弁ができる」というのは、特別の場合(特段の事情がある場合)であって、原則として、「できる場合は、先立つ訂正請求をしてないと、訂正の再抗弁はできない」
が、正解だと考えます。
この点の基準、規範は、変わってない。
シートカッター事件という特殊な場合は、「不要」と理解します。
この理解でよいでしょうか?
よろしくお願いいたします。
別のサイト(下記)では、下記があります。
https://innoventier.com/archives/2017/07/3695
>③特許権者は、無効理由を解消するための訂正審判の請求又は訂正の請求をすることが法律上できなかったが、訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はない。そして、特許権者が訂正の再抗弁を主張できなかったとはいえず、その他の特段の事情はうかがわれないしかしながら,それが,原審で新たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったためであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから,
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – 管理人
2018/06/17 (Sun) 18:17:22
本判決によれば、原則として訂正の再抗弁を主張するために、訂正審判の請求又は訂正の請求をしている必要はないということであり、これはシートカッター事件に限られないものと思われます。
例えば、挙げられたナイフ加工機事件においては、訂正審判を請求しながら、訂正の再抗弁を主張していなかった事例であります。
そして、このような場合には、訂正の再抗弁が紛争の解決を不当に遅延させるものとして却下される可能性があることも指摘されています。
よって、ナイフ加工機事件の判断が変更されたわけではありませんが、訂正の再抗弁に先立って訂正審判を請求することは不要であると思われます。
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – Let’s Go!!
2018/06/18 (Mon) 07:39:38
回答ありがとうございます。
しかし、そうですか、見解が異なりますね。
機会があって、他の予備校のトップ講師、複数名に質問する機会がありましたが、その方々は、原則は変わっていない。判例変更ではない。「原則として、訂正請求や訂正審判をしていないと、訂正の再抗弁はできない」「訂正請求等ができなかったことに特段の事情があった場合だけ、それをしてなくても、訂正の再抗弁ができる」
という見解でした。また、北大の高名な田村義之先生も、1月の論文で、「判例は、従来の訂正の請求等が必要であるという前提の原則を変えていないように読める」(Westlaw Japan、P.13,5冒頭)と述べられています。
元の予備校の先生は、「無効の抗弁が審判請求してなくてもできるのだから、訂正の再抗弁が無条件でできるのは当然」ロジックでしたが、私は、立場の違いがあって、一概に言えないのではないかと思います。
「無効の抗弁」は、個別具体的な問題で、査定が確定した権利の瑕疵を問題にするところ、「訂正の再抗弁」は、権利者が、その裁判の事件においてのみ、「仮定の話」として、一時のがれで「訂正したら無効ではないですよ」と言い逃れをすることを認めるか否か(実際に訂正をして、権利を狭めてしまうことまでは要求しない)?
という問題で、
大体、「訂正」というのは、権利の減縮ですから、実際に訂正確定にまで、進まない段階で、「裁判外では、行政処分として訂正しない広い権利を認めたままでよい」ということの奨励になるので、権利者の2枚舌を許す結果になるので、審査で登録を認めた公権というものに、都合の良い恣意的な利用を許し、法定安定性を欠くことになり、特許に無効理由があるままで権利行使を許すことに繋がるので、ダメだ。
(もし、訂正確定に進まないとしても「やる気本気を見せろ」という権利者へのプレッシャー、「侵害を理由に損害を主張して、金をとろうというのなら、自分の権利の無効理由を解消するのが権利者として先だろう」ということで、権利というものや、権利者、権利行使に対して厳しさを要求する立場)
権利行使したいなら、合理的にできる状況では、無効理由がない状態にする訂正請求等をしていないければダメだ。
ということだと理解し、判例変更ではないと理解するのですが。
下記は、地裁判例の解説ですが、わかり易いです。
ご参考URL: 
https://innoventier.com/archives/2017/09/4009
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – 管理人
2018/06/18 (Mon) 12:06:20
判例変更ではないという考えには同意します。
しかし、訂正審判の請求(訂正の請求)が可能であること(訂正可能であること)が訂正の再抗弁の要件であることは確かですが(そういう意味では、無効審決が確定すると訂正できなくなるので、無効審判係属中に訂正の請求をしない場合の訂正の再抗弁は認められない)、そもそも実際に訂正審判の請求をしなくとも、訂正の再抗弁は可能である(少なくとも否定されていない)と考えます。
判例においては、紛争の解決を不当に遅延させること(時期に遅れた攻撃防御)が重視されており、いわゆるダブルトラックはさほど重視されておりません(これもどうかと思いますが・・・)。
したがって、訂正の再抗弁は紛争解決のために適時に行われるべきものであり、そのためにも訂正審判の請求自体は訂正の再抗弁の要件ではないと考えます。
仮に訂正の確定を要件とすると、紛争の解決が遅れる可能性があり、紛争解決の迅速化の要望にも反します。
また、2枚舌という観点では、裁判外では行政処分として無効にしないで権利を認めたままでよいとする特104条の3の規定が説明できません。
なお、現在はシートカッター事件のような事例を除いて、訂正可能であることを証明するためにも、権利濫用(権利無効)の抗弁がされている状態で、訂正をせずに訂正の再抗弁をすることは実務上ないと思われます。
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – Let’s Go!!
2018/06/18 (Mon) 16:25:53
ご回答ありがとうございます。
前半部分は、原則は、「訂正の再抗弁をするためには、前段階でできる時には訂正の請求(訂正審判の請求を含む)が必要」だが、それができない事情がある場合は、「直接の訂正の再抗弁も認める」ということだと考えます。
後半ですが、
>また、2枚舌という観点では、裁判外では行政処分>として無効にしないで権利を認めたままでよいとする>特104条の3の規定が説明できません。
「侵害を問われている被告の救済を厚くするために、無効審判の請求なしに、無効の抗弁(104条の2第1項)を認めているが、
それ以上に、公権たる特許権を無効にする利益がある者は、審判請求しなさい」
ということで、説明がつくと考えます。
つまり、特許権者の2枚舌だけが問題であり、
「無効審判を請求してまで無効とするか否かは、
元々、一般ユーザに広く任せています(職権無効ではなく、利害関係人の請求による審決無効)」ということで、説明がつくと考えますが...
いかがでしょうか?
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – 管理人
2018/06/19 (Tue) 13:36:25
本BBSは議論の場ではありませんので、この辺にしておきますが、実際に訂正審判の請求をしなくとも、訂正の再抗弁は可能であって、そのことのみを理由として却下はされないと考えます。
しかし、訂正が認容されることを特許権者が立証する方法としては、実際に訂正審判を請求することが確実であると思われます。
それをせずに訂正が認容されると主張しても、当該主張が認められない可能性はあります。
なお、無効の抗弁(特104条の3)は、被告の救済を厚くする規定ではなく、紛争の早期解決のための規定です。
そもそも被疑侵害者を救済する必要はないかと思われます。
Re: シートカッター事件、訂正の再抗弁に先立つ訂正請求等は必要か? – Let’s Go!!
2018/06/19 (Tue) 13:55:15
回答ありがとうございました。
よくわかりました。
趣旨の理解間違いの指摘、ありがとうございました。
よくわかりました。
19/2/22追記
現在の通説では、訂正審判の請求を要すると解釈するようです。
例外的に、訂正審判を請求できない事情がある場合には、訂正審判を請求せずに訂正の再抗弁が認められます。
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