特73条2項と通常実施権
特73条2項と通常実施権(特94条6項) – Lets’Go!
2017/06/23 (Fri) 21:54:38
特94条6項及び特78条では、通常実施権においては、特73条2項が不準用です。この意味ですが、通常実施権の共有の場合には、「実施に他の共有者の同意が必要」と読むのでしょうか?
その趣旨を含めて、回答よろしくお願いします。
(特73条の解説では、そうでない説明のようですが)
某予備校のテキストでは、中山の新・注解特許法
P.1238~P.1239を根拠としてました。
Re: 特73条2項と通常実施権(特94条6項) – 管理人
2017/06/25 (Sun) 07:48:01
特73条2項不準用なので、通常実施権については、共有に係る際の実施に関して同意を要する旨の「契約での別段の定め」をすることができないと解しています(産業財産権登録の実務第5版382頁)。
つまり、私は同意が不要であると解しています。
理由は、そもそも通常実施権者は実施を禁止する権利を有していないところ、同意を要するとする根拠がないからです。
独占的に実施をする権利を有する特許権者及び専用実施権者ですら同意が不要であるのに、通常実施権者が同意を有すると解釈するのは不合理であると考えます。
受験界的には、同意が必要と解釈しているようです。
Re: 特73条2項と通常実施権(特94条6項) – Lets’Go!
2017/06/25 (Sun) 17:12:13
ご回答ありがとうございます。本件は、考え出すと、むつかしく迷路に入った感じになります。
元々は、民法の共有の問題から来ているようで、民法249条辺りの問題で、不可分債権の行使の問題のようです。
著作権法の65条は、1項で「処分」を2項で「行使」を規定していますが、「行使」とは、「利用許諾、出版権の行使」とか(加戸P.455)。
これらは「複製権、譲渡権、等の権利の利用」の一部です。
「支分権のすべての行使が、他の共有者の同意が必要なのか?」について、「網羅的に規定されていない」というのが、加戸先生の解説のようです(著書読んでません)。
しかし、条文上では「全員(他の共有者)の同意」が必要という立法です。
他方、特73条は、1項と3項が中心で、この点、著作65条の1項、2項の関係に対応するようです(特73条2項に該当する規定がないか、著65条2項に含まれる規定ぶりのようです)。
青本にもあるように、特73条2項は、1項の規定の解釈に引きずられるのを回避するため「念のため」規定したとのことですから、立法者も「つけたしで、あまり重く考えていなかった」が実情のようです。
であるならば、「特78条で、73条2項を準用してもよい所、準用していない(読替え準用もしていない)。73条1項は、通実に関する特別の条文94条で、6項で準用」ですので、これを「あえて、準用していない」という反対解釈が成立しそうです。
しかし、ここで、大きく条文の規定の意味を考えると(独断ですが)、特73条は、大きくは、「他の同意がいります」規定で、著65条も、「同意がいります」規定です。
ということは、通実では、そういう規定を73条1項を除いて準用してないですから、
特に規定していない以上、「同意はいらない」と読むのが、正しいような気がします。
(通実は、民法の二重譲渡のような、ダブル許諾OKの債権ですから、「その一人が、他の権利者に禁止権を行使できない」ということはわかりますが、
一つの債権(通常実施許諾)の共有の問題としては、共有者の一人が「他の共有者の実施に影響を受ける」ことは、あるので、理屈で考えると、第73条3項で規定しているように、「同意必要」とすべき所、
その時の立法者は、民法の有体財産権の不可分債権の行使と同じに考えて「とにかく実施できればよいのだから、他の共有者の権利の意味に影響を与えるとしても、単独行使可能」としたというな流れでこうなったと推量します)
しかし、条文の試験である弁理士試験では、特段の根拠判例や条文がない限り、
「特73条2項を準用していない反対解釈で、通実の共有者は、実施において、他の共有者の同意が必要」と記憶しておくべき問題ではないかと思います。
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