弁理士試験-語句の意味

語句の意味
質問です – のりお
2010/01/08 (Fri) 00:24:35
初歩的な質問で申し訳ないのですが、審決、確定、判決、決定の違い、当事者系審判、予告登録、上位概念と下位概念の用語の意味がいまいちわかりません。
それと「特許無効審判の請求の登録」という文が出てきたのですが審判の請求に登録があるのでしょうか?
また、特134条の3第2項但し書きの「訂正審判が確定しているときは」とはありますが、181条第2項の規定より当該審決が取り消され、差し戻しになった場合に同時で訂正審判が進行しているという状態なんでしょうか?イメージがいまいちわきません。
 
よろしくお願いします。
特許法の用語の意味について(1) – ペンキ
2010/01/09 (Sat) 14:12:24
のりおさんの前段のご質問、特に特許法に用いられている用語の意義について、以下に説明させていただきます。長い説明となりますので、質問ツリーからはずさせていただきました。また、長文故、投稿を二分割いたしました。ご容赦下さい。
まず、民事訴訟法上、「判決」とは、裁判の最も厳格な形式で、裁判所が原則として口頭弁論(民訴87条)を経て、法定の方式により作成した判決原本に基づき、判決の言渡しを行うことにより成立します(民訴250条、252条)。判決は、重要な事項につき裁判を行うときとられる形式であり、通常の訴訟では、訴え・上訴の適否(訴訟判決)、請求・上訴の理由の有無(本案判決)の判断などが判決をもって示されます。判決は、その訴訟事件の審理を完結させるかどうかで、終局判決と中間判決とに分けられます。それに対して、「決定」とは、日常用語では、何かを決めることという意味で用いられますが、民事訴訟法上、裁判の形式の意味で用いられ、「判決」と「決定」は、裁判官の合議体または単独の裁判官で構成される裁判所が行う裁判である点は共通しますが、「判決」が原則として口頭弁論を経て行われるのに対して、「決定」が口頭弁論を経るかどうかは裁判所の裁量に任されている点、「判決」に対する上訴の手段が控訴・上告であるのに対して、「決定」に対する上訴手段が抗告である点等で区別されています(民訴87条1項、328条1項)。また、ある意味において、特許法上の行政手続における一般法として位置づけられる行政不服審査法上では、「決定」は、「裁決」とともに、不服申立てに対する行政庁の応答の形式の意味で用いられますが、「裁決」が審査請求または再審査請求に対して審査庁が行う応答であるのに対して、「決定」は異議申立てに対して、処分庁または不作為庁が行う応答です(行服法40条、47条、50条、51条)。なお、行政不服審査法以外の各個別法で定められた不服申立ての手続に対する応答の形式としても「決定」が用いられています。例えば、皆さんご存知の商標登録異議の申立てに対する審判官の合議体が行う判断表示が「決定」です(商43条の3、商標43の13)。
民事訴訟においては、審理の主導権を当事者に認めるいわゆる当事者主義を基調とし、したがって訴訟の始終や証拠の収集等については当事者処分主義・弁論主義を採っていますが、特許法の審判においてはこれと異なりいわゆる職権主義(特153条)が認められ、当事者の意思は必ずしも絶対とはされません。すなわち、審判においては、審判の請求、審理の対象の確定、請求の取下げ等は当事者の意思にゆだねられていますが、認諾や和解は認められず、当事者の申し立てない理由についても審理することができ、職権による証拠調をすることができます(特150条)。また、民事訴訟においては常に対立する当事者によって行われ弁論の機能が保障されていますが、審判においては特許無効審判以外の審判については対立する当事者というものはなく、また弁論の権能が常に保証されているわけではなく、書面審理による場合が少なくありません。このような民事訴訟と審判との原理的な相違は、前者が争いを当事者の個別的、相対的な問題として解決しようとしているのに対して、後者は事件を全体的、対世的な問題として解決しようとしていることに基づくものです。横道の話が長くなりましたが、このような民事訴訟との相違を理解することにより、特許法上の審判の存在意義が理解できるものと考えます。
「審決」は、審判事件を解決するために審判官の合議体が行う最終的な公権的判断表示であって、裁判における終局判決に該当するものです。審判においては、裁判における中間判決に該当するような判断表示としての中間審決はなく、審決は常に最終的判断としてなされます。また、本案の手続に対して派生的または付随的な事項を解決するために審判官によって判断表示がなされますが、この判断は「決定」と称し審決とは称しません。審決は合議体としての審判官が行う判断表示であって、単独の審判官または審判長が行うことはありません。この点決定については、審判長が単独で行うことがあるのとは異なります。(→2に続く。)
特許法の用語の意味について(2) – ペンキ
2010/01/09 (Sat) 14:24:14
(1から、つづく。)
「確定」とは、確定力を差すものと考えますが、通常は、裁判(判決、決定)について用いられます。すなわち、当事者がその訴訟手続内で、もはや通常の不服申立てをすることができなくなり、したがって裁判が上級裁判所によって取消される可能性のなくなった状態をその裁判が確定したといいますが、その状態における裁判の取消不可能性を確定力といいます。この意味における確定力は、確定した裁判の内容上の効力である実体的確定力(既判力といもいわれています)と区別して形式的確定力といわれています。なお、当事者が通常の手続で不服申立てをすることができなくなる状態は裁判だけではなく、裁判類似の行政行為(例えば、特許庁の審決等)にも、またその他一般の行政行為にもありますから、これらの行政行為にも形式的確定力はあるといえます。因みに、特許法上での「審決の確定」とは、審決に対して不服かある者は訴えを提起することができ(特178条)、もし訴えが提起されときはその訴訟において審決が取り消される可能性がありますが、その訴えが提起されなかったときまたは、訴えを提起したがその審理における終局判断もなされ不服申立の方法が尽きたときは、その審決は取り消される可能性もなくなります。このように審決が取り消される可能性のなくなったことを審決の確定といいます。審決の確定の対世的効力、一事不再理の効力等はすべて確定審決についてのみ生ずることとなります。
「当事者系審判」とは、確定した行政処分に対して、対立した当事者が争う審判をいい、無効の審判、存続期間の無効の審判が含まれ、当事者対立構造がとられます。特許無効の審判では、当事者として請求人と被請求人の二者が存在し、両者の攻撃、防御のやりとりで進行されます。口頭審理を原則としてますが、従来実務はほとんど書面審理で進められ、証拠調べなどが口頭審理によって行われるにすぎませんでしたが、現行では、口頭審理を技術内容の議論の実質的な場とすることとして、審判の審理促進、審理内容の充実がなされるよう大幅な改善が図られています。
「予告登録」は、譲渡等の登録の原因の無効または取消しによる登録の抹消等の訴えが提起された場合(特登令3条1号)、または、特許無効の審判の審判の請求があった場合等(特登令3条2号、3号、4号、5号)に、それらを第三者に公示して警告するために行う登録です。すなわち、将来、終局(本)登録がなされる可能性があることの警告のため行う登録です。特許権に関する登録においては、特許法が特許無効の審判等の審判制度および通常実施権の裁定制度を採用しているため、不動産登記等と比較して予告登録を行う場合が多くなっています。
最後に、「上位概念・下位概念」は、上位概念・下位概念の発明と理解しますが、一般的に概念とは、経験される多くの事物に共通の内容を取出し(抽象)、個々の事物にのみ属する偶発的な性質を捨てる(捨象)ことによって形成されるもので、形成されたある概念の外延(概念の適用される範囲)が、他の概念の外延よりも大きく、それを自己のうちに包含する場合、前者を上位概念、後者を下位概念といいます。特許関係においては、ある技術的事項によって構成される発明の技術思想の外延が他の発明のそれよりも大きく、それを自己のうちに包含するような関係にある場合、上記の哲学的用語の使用法を借りて、前者を上位概念の発明、後者を下位概念の発明と称しています。
以上、それぞれの用語について長々説明いたしましたが、弁理士の方は、いわゆる工業所有権法のある意味で偏った知識しか持ちあわせしていない場合が多く、特に審決取消訴訟の実務においては、裁判長から「もう少し、法律の勉強をしてきて下さい。」と諭され門前払いされる場面が多いと聞いております。工業所有権法は、ご承知の通り、あくまで、民法や民事訴訟法等の特則(特別法)として規定されているものです。特別法に規定される用語は、一般法において定義されており、その理解の前提の上で、用語なり条文を解釈する必要があります。ここで質問される方々は、弁理士資格を取得されることを第一義とされるため、法律用語の意義や条の本来の立法趣旨の学習については、二の次にならざるを得ない面があると思いますが、弁理士資格取得後でも結構ですので、是非、一般法の学習と、特に専門とされる工業所有権法の条文の解釈の前提となる制度全体の理解の上で、単に表面上の解釈に泥酔することなく、各条文の本来の立法趣旨の理解の学習をしていただければと切に願っております。

なお、本日の本室更新は「お休み」です。
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