弁理士試験-特許受ける権利譲渡後の発明者による出願

特許受ける権利譲渡後の発明者による出願
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Twitterでちょっと議論したが字数が足りないので、ブログでまとめさせてもらう。
さて、特許を受ける権利を譲渡した発明者が出願Aをし、その後に譲受人が出願Bをした場合、どうなるのだろうか?
この場合、文理上、出願Aには、出願B又は譲受人との関係では拒絶理由が無い。
 ※特49条7号の冒認出願は、「発明者でなく且つ特許を受ける権利を承継していない者による出願」である。
一方、出願Bは出願Aの存在により、特39条1項の拒絶理由を有するという不合理な結果となり、取引の安全も害する。
これに対して真の権利者(特許を受ける権利を有する者)は、生ゴミ処理装置事件に判示されたように、特許権の移転又は出願人名義変更を請求することができると解される。
しかし、確定判決が必要となってしまう。
詳しくは「冒認出願に関する救済措置の整備について」を読んで欲しい。
では、他の手段で救済の余地は無いのだろうか?
例えば、出願Aの拒絶査定が確定すれば、出願Bは登録され得る(特39条5項)。
この点、「注解特許法」の上巻には、特許を受ける権利の譲渡後に発明者が出願した場合、文理上は冒認ではないが、特許を受ける権利は既に譲渡して無いのだから冒認として拒絶されるべき、という中山説が書いてある。
ただし、冒認に当たらないというのが多くの考えである、とも述べられているので、あくまで少数説なのだろう。
勝手に解釈すると、この少数説では『特49条7号の「発明者」には、自ら特許を受ける権利を譲渡した発明者は含まない』と解釈することになるであろう。
考え方としては公平であり、うなずける。
しかし、現実的にはどうだろう?
まず、審査官は、真に特許を受ける権利を有する者を認定する能力が無い。
これは、審査基準に何の記載もないことからも理解できる。
よって、学説としてはありえても、現在はそのようには取り扱われていない。
一歩進んで仮に、新たに審査基準を作成したとしよう。
現実的には、特許を受ける権利を譲渡した後の出願であることを譲受人が明白に証明できれば、拒絶理由に該当するといったところだろうか。
現在は譲受人の側から情報を提供することすらできないので、規則改正も必要になるかもしれない。
 ※特施規13条の2の情報提供には特49条7号が対象とされていない点に留意が必要だ。
さて、拒絶理由が通知された発明者はどのような措置を取るか?
まずは、意見書だろう。
譲渡した発明と出願に係る発明とが異なることや、職務発明ではないこと、譲渡の事実がないこと等を述べることになる。
少なくとも、譲受人に対して名義変更の交渉を持ちかけることはないと思われる。
逆に、譲受人はどのような措置を取るか?
出願Bに特39条1項以外の拒絶理由がなければ、放置で良い。
出願Aの拒絶が確定すればよし、しなくとも出願Aは冒認出願となるから先願の地位を失うはずである。
では、出願Bに特39条1項以外の拒絶理由があったらどうか。
この場合、出願Bは権利化できないので、出願Aの譲渡を発明者にお願いするしかない。
これは明らかに譲受人に不利なので、そもそも情報提供をしないだろう。
特許を受ける権利を有することの確認訴訟を提起し、確定判決により出願人の名義変更を行うはずである。
これらのことから、譲受人に利益がある場合は、①出願前譲渡の明白な証拠があり、②先願公開前に後願が出願されている場合、に限られる。
このように限定された利益のために特49条7号の「発明者」を限定解釈する利益は薄いと思われる。
結局、取引の安全は、訴訟を経て権利の所在をあきらかにするという方法によって解決するのが好ましいと思われる。
なお、万が一これが論文試験に出た場合、中山説を書くことは危険であると思う。
原則として条文上は冒認出願に当たらないことを述べた上で、解釈上は冒認出願に当たることを説明しなければならないからだ。
ここで問題は、特49条7号をどのように解釈すれば冒認出願に当たるかを説明できないことにある。
(趣旨は、取引の安全を害しうるとか、不合理とでも書けば足りるだろう。)
可能性としては既に述べたような条文解釈もありうるが、私見に過ぎず評価はされないだろう。
以上、私見でした。
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コメント

  1. アバターバテ丸 より:

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    文理上は冒認ではないが、特許を受ける権利は既に譲渡して無いのだから冒認として拒絶されるべき、という中山説は特49条7号の文言上、ありえないように思います。
    ベン図を描けば分かるとおもいますが、「発明者」の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域とを描き、特49条7号は「発明者でなく且つ特許を受ける権利を承継していない者」と「且つ」と書いてあることから、「発明者」の領域以外の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域以外の領域との共通の領域が特49条7号の拒絶理由となります。「発明者」の領域以外の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域以外の領域との共通の領域には、「発明者」の領域は含まれません。中山先生は数学の集合論が理解できていないのではないでしょうか。

  2. アバタードクガク より:

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    いえいえ、文言上該当しないことは、中山先生もお分かりだと思います。
    その上で、悪意の先願発明者が特許権を取得するのは妥当ではないとして、拒絶されるべきだとおっしゃっているのかと。
    ただ、実際は、法改正をするか最高裁で判決が出るような状態とならなければ、拒絶理由には該当しないと思います。
    (現行の法及び運用で拒絶可能とおっしゃる先生もいるようですが、私は現実的ではないと思います。)
    > 文理上は冒認ではないが、特許を受ける権利は既に譲渡して無いのだから冒認として拒絶されるべき、という中山説は特49条7号の文言上、ありえないように思います。
    >
    > ベン図を描けば分かるとおもいますが、「発明者」の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域とを描き、特49条7号は「発明者でなく且つ特許を受ける権利を承継していない者」と「且つ」と書いてあることから、「発明者」の領域以外の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域以外の領域との共通の領域が特49条7号の拒絶理由となります。「発明者」の領域以外の領域と「特許を受ける権利を承継した者」の領域以外の領域との共通の領域には、「発明者」の領域は含まれません。中山先生は数学の集合論が理解できていないのではないでしょうか。

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