本日7月1日は弁理士の日です
今年も弁理士の日を勝手に盛り上げるために、
「弁理士の日記念ブログ企画2026」と銘打って
知財系ブロガーの皆様にご協力いただき、共通テーマで記事を書いております
そして、今年のテーマは「知財業界と専門分野」です
弁理士の専権業務
さて、生成AIの進化に伴い素人でもプロ並の出力を得ることができるようなりました
少なくとも形式的には、弁理士と同レベルの出願書類を作成することができる時代です
この時代になると、当然に考えられるのが「弁理士を生成AIで代用しよう」というビジネスです
そこで、今回は弁理士の専門分野である専権業務について諸問題を考察したいと思います
まず、専権業務とは、弁理士法75条によって、弁理士以外が行うことを禁止されている業務であり、具体的には以下のように定められています
(弁理士又は弁理士法人でない者の業務の制限)
第七十五条 弁理士又は弁理士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続若しくは特許、実用新案、意匠若しくは商標に関する行政不服審査法の規定による審査請求若しくは裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理(特許料の納付手続についての代理、特許原簿への登録の申請手続についての代理その他の政令で定めるものを除く。)又はこれらの手続に係る事項に関する鑑定若しくは政令で定める書類若しくは電磁的記録の作成を業とすることができない。
簡単に言えば、①本人として行う手続きではなく他人から依頼されて
②報酬を得て
③特許庁に対する手続の代理、手続に関する鑑定・書類作成等を
④業として行うこと
が禁止されており、これに反する行為を非弁行為と言います
なお、弁護士法72条によって禁止されている非弁行為もあるので、ややこしいですね
これは弁理士会も注意喚起をしており※、特に企業知財部に所属する弁理士の間で話題になりました
※「資格を持たずに弁理士業務を行う者(非弁理士)」にご注意ください
報酬の問題
まず、①他人から依頼されて、②報酬を得て、④業として行うことが必要ですので、報酬を得ないで行う手続は禁止されていません
実際に、ボランティアとして無報酬で手続をしていることを理由として、非弁行為に該当しないとされる場合もあります
また、無報酬で手続をしていると思われる事例として、弁理士法人ではない法人(例えば株式会社)が代理人である出願も存在しており且つ有効に受理されています
一例として、特願2021-569871号、特願2021-569870号があります
特に問題となるのが、親会社及び子会社の一方が他方の手続書類を作成する場合、又はグループ会社に属する会社が他の会社(以下、併せて関連会社という)の手続書類を作成する場合です
弁護士法72条の事例ですが、完全子会社であっても、法人格が別である以上は『他人性』の要件を欠くという法務省の見解※が存在するようです
この見解によれば、完全子会社であっても他人であり、実質的に無償委任であれば実費を受領しても報酬とは言えない、ことになります
※「グループ企業間の法律事務の取扱いと弁護士法第72条の関係について」
また、弁護士法72条に関して、一般的な助言などは非弁行為ではないという法務省の見解があるようです
一方で、一般的ではない訴訟行為の代理については除外されるので、この考えを弁理士法75条に対応させると、少なくとも特許庁に対する手続の代理は関連会社による手続であっても禁止されると考えられます
したがって、関係会社が他の関連企業から依頼されて、実費以外の報酬を得て、手続に関する書類作成等を、業として行った場合には、行為の内容によっては非弁行為に該当すると考えます
つまり、外形上は非弁行為に該当する以上、「絶対に非弁行為ではない」とはならないでしょう
具体的には、ひな形レベルの書類作成であるならば、非弁行為に該当しない可能性が高まるでしょう
逆に、問題なく提出可能なレベルの書類作成であるならば、非弁行為に該当する可能性が高まるでしょう
なお、この内容(知財分社)については、特許制度小委員会で議論されたことがありますが、結論は出されておりません
伝聞の噂レベルですが、弁理士会・特許庁・知財協の三者の議論の結果、グループ会社に留める限りは問題にしない旨の合意があったという話を聞いたことがあります
生成AIの問題
次に、生成AIの問題があります
前提として、人間が行った場合に非弁行為となる行為は、生成AIを使用しても非弁行為です
例えば、他人から依頼されて、報酬を得て、生成AIを使用して手続書類作成等を、業として行うことは非弁行為です
逆に、本人が生成AIを使用して手続書類作成等を行っても非弁行為ではありません
では、関係会社が同様の行為を行った場合はどうでしょうか?
これも、外形上は非弁行為に該当する以上、行為の内容によっては非弁行為に該当すると考えます
さらに、非弁行為が行われたとして、その行為者に生成AIを提供する行為はどうでしょうか?
この場合、生成AIを提供する行為は、外形上は非弁行為に該当しないと考えます
例外的に、生成AIの提供者が非弁行為の教唆・幇助をしているようなケース、すなわち積極的に誘導している場合には、共同で非弁行為を行ったと判断されると考えます
このように、積極的に誘導している場合にまで、生成AIを提供する行為を許容するのは、弁理士法75条の趣旨に反するからです
まとめ
というわけで、なんとも雑な結論で恥ずかしいのですが、関係会社が他の関連企業から依頼されて、実費以外の報酬を得て、手続に関する書類作成等を、業として行った場合には、行為の内容によっては非弁行為に該当すると考えます
また、生成AIを提供する行為は、原則として非弁行為に該当しないと考えます
ただし、あくまで一弁理士の見解であり、また弁理士法による規制を、依頼者の保護や公共の利益を守る消極目的での規制であると解釈しています
そのため、実際に争いになった場合には異なる結論になる可能性も十分にあります
終わりに
いかがでしたでしょうか?
今回は弁理士の専権業務について書いてみました
なお、今回の企画に関して他の参加者様の記事をまとめていますので、
「弁理士の日記念ブログ企画2026」もご覧になって頂ければ幸いです

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