先願の地位 – 初心の者
2020/06/26 (Fri) 10:38:11
ある発明を特許Aとして出願し、登録査定後特許権Xが発生したが、その後無効審判請求されて特許権X は消滅した。そのあとに発明Aと同一の発明を出願した場合、この出願は、新規性なし(29条①項)の拒絶理由以外に、39条違反(先願要件違反)でも拒絶されのでしょうか?
といいますのは、無効審決確定により特許権が消滅しても、先願の権利は残るから、という理由です。
基本的なことが理解不十分のようで、疑問がわきました。よろしくご教示下さい。
Re: 先願の地位 – 受験生A
2020/06/29 (Mon) 01:38:18
横から失礼します。
その場合、実務上、新規性無しの拒絶理由が解消しないので、拒絶理由の通知がない扱いになるのだと記憶しております(確か審査基準にあったと思います)。
青本にも、39条1項の解説で、’’二以上の特許出願とは、特許を付与すべき状態にある特許出願のことであり、他に拒絶の理由を有する出願は、重複特許の問題は生じないので本条の対象とはならない。’’とあります。
よって後願は他に拒絶の理由があることになります。
なお、(問題文の事実次第では)法律上は39条5項に無効になった場合がないため先願の地位は残りるため、事実から伺われれば、パリ優先権等の事情で新規性の問題が解決したことを検討(擬制)した上で、39条1項違反はあると考えるケースはあるかと思います(よって答案上、どのような拒絶理由があるか?という問いに対しては、どのような場合が39条1項違反かを検討しないといけないこともある)。
また蛇足ですが、おそらく出願公開あるいは広報発行あるでしょうし(無ければ擬制する形で)29条の2も合わせて検討する必要があるかと思います。
よく言われる29条1項2項、29条の2、39条はセットで検討しましょうというやつですね。
Re: 先願の地位 – 管理人
2020/06/29 (Mon) 11:04:07
受験生Aさん、ご協力ありがとうございます。
さて、ご質問の件ですが、受験生Aさんの御指摘の通り、新規性なし(特29条1項)の拒絶理由があれば、特39条の対象とはなりません。
ただし、無効の場合は先願の地位を有しますので、登録公報発行前に出願されており、且つ発明者又は出願人同一で特29条の2の適用がないような場合には、特39条違反(先願要件違反)で拒絶されることもあり得ます。
あり得る例としては、元の出願の分割出願が審査係属中に元の出願に係る特許権の無効が確定したような場合が考えられます。
Re: 先願の地位 – 初心の者
2020/06/30 (Tue) 09:57:58
受験生A さん及び管理人様、ご説明有難うございます。
青本記載の39条1項の解説で、確かに「二以上の特許出願とは、特許を付与すべき状態にある特許出願のこと」であると解説があります。そうしますと、例えば、同一発明同日出願が協議不調・不能で拒絶になった場合には、この出願は先願の地位を持ちますが、拒絶が確定すれば、「特許を付与すべき状態」ではなくなるので、39条違反は適用できないと考えられないのでしょうか?
Re: 先願の地位 – 管理人
2020/07/07 (Tue) 12:20:42
同一発明同日出願が協議不調・不能で拒絶になった先願は先願の地位を持ちます。
その後願は、他に拒絶の理由を有しなければ、特許を付与すべき状態にある特許出願となり、特39条の適用があります。
Re: 先願の地位 – 初心の者
2020/07/07 (Tue) 17:14:45
管理者 様
そうしますと、青本記載の39条1項「二以上の特許出願とは、特許を付与すべき状態にある特許出願のこと」とは、後願が特許を付与すべき状態にあり、先願は大分以前に拒絶確定していて特許を付与すべき状態になくとも39条が適用される、と解釈できますが、このように理解して良いのでしょうか?
文章の表現に余りにもこだわりすぎていて、偏執的になているのかな、という気もしますが、とにかく、ひかかります。 よろしくお願いします。
Re: 先願の地位 – 管理人
2020/07/07 (Tue) 18:44:35
拒絶確定の先願に先願の地位があるのは例外ですので(特39条5項)、そのように理解して結構です。
一般例を言っているだけの部分を気にしすぎですね。
例えば、同日出願(1項)のケースでは、特39条第2項以外の拒絶理由がある場合でも、協議が指令されます。
※リンク先審査基準の8頁をご覧下さい。
Re: 先願の地位 – 初心の者
2020/07/11 (Sat) 17:57:44
管理人 様
丁寧に解説頂きまして、有難うございます。
今後もよろしくお願いします。
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