断捨離®が狩られている理由


結論からいうと
不正使用取消審判で負けて著名性が否定されたので、普通名称化(希釈化)の防止活動をしている
のではないかと思われます。

騒動の背景

まず背景を説明すると、「断捨離」(登録商標、以下略)を使用しているブロガー・YouTuberに対して
『・動画タイトルに「断捨離」という表示を用いた,又は動画内容に「断捨離」を用いた動画全てを削除すること。
 ・動画に付されたハッシュタグ「#断捨離」全てを削除すること。
 ・今後通知人に無断で「断捨離」という表示を用いた活動を行わないこと。』(Twitterより引用
という要求が商標権者からなされているようです。
「断捨離」は商標登録|個人ブログでの使用はOKだけどYouTubeはNG?(ていないブログ)
「断捨離」商標権の権利行使はやりたい放題?令和の言葉狩りだと思う理由(ていないブログ)

通常、警告するの?

普通名称化・希釈化の防止の観点から、商標表示「®」、「登録商標」を併記することをお願いすることはあります。特に、辞書に掲載された場合には大きなダメージになりますので、辞書への掲載を権利者が憂慮するのは当然です。
(参考:「商標の普通名称化と出版社への商標表示請求権」)

とはいえ、刑事罰までちらつかせて言葉の削除を迫るといのうのはいささかやりすぎだと思います。商標的に使用している場合や、マスコミに対してなら事情も理解できますが、一般のブロガーまで対象にしてしまっては、ブランドイメージを悪化させるのではないかと思います。
(逆に使用に厳しいというイメージを与えるための戦略ならば奏功しているのかな)

突然狩られ始めた理由

さて、話を本題に戻して、何で突然狩られ始めたのかという理由ですが、これには一つ心当たりがあります。具体的には、「取消2016-300860」で負けたこと(商標の不正使用取消審判の請求不成立)です。

簡単に説明すると、本件の商標権者は、「ブランド買取Dan-Sha-Ri-銀座-」というサービスを提供する会社に対して
『登録商標「Dan-sha-Ri」に類似する商標を使用して、登録商標「断捨離」に係る業務と誤認混同を生じさせている』という理由で商標登録の取消しを請求し、そして負けています。
(つまり、「Dan-sha-Ri」商標の登録が維持されている)

そして、その審決の中で
「断捨離」の語が、最初は、山下英子氏が提唱するものであったとしても、2010年にユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた後には、「断捨離」の語は、「執着を捨てることを旨とする片づけ術の標語。断つ、捨てる、離れる。」ほどの意味合い(実用日本語表現辞典:乙13)を表すものとして、新語・流行語として社会に定着し、一般的に通用する語として使用されているといえるものである。
 また、山下英子氏が複数の著書を出版しているとしても、該書籍の作成部数、販売部数及び販売地域等の販売実績に関する立証がない上、本のタイトル(題号)として使用されており、商標的使用ともいい難いものであるから、該書籍の出版の事実のみをもって、「断捨離」の語が、山下英子氏を直ちに想起させるものとして著名であると認めることはできない』(下線は筆者が挿入)
というように、一般的に通用され且つ登録商標として著名ではないと、認定されてしまっているのです。

そして、この審決の発行日が2018年3月30日なので、その後に慌てて著名化の活動を始めたのではないかと推測しています。ただ、そのやり方があんまりよろしくなかったなぁと・・・。

権利者様へのアドバイス

例えば、使用態様によって対応を分けて
1.競業者には使用させない
2.マスコミ、ブロガー・YouTuberには商標表示をお願いする
というようにすれば、評判が悪くなることもなかったと思います。

補足

他にも、取消に失敗したことを弁護士に相談した結果、弁護士から普通名称化の防止活動を提案された可能性があります。特に負けた場合の挽回策として何らかの対策を提案しなければならない状況であれば、多少無理なことを提案することも考えられます。また、今回はあまり丁寧でない警告であるので、コストをかけていないことが予想されます。そのため、無償又は安価な挽回策として警告が乱発されているのかもしれません。

ところで、「断捨離狩りがされている本質的な動機としては、権利者の定義(「モノの片づけを通して自分を知り、心の混沌を整理して人生を快適にする行動技術」)(やましたひでこ公式サイトより引用)とは離れて、この言葉が商業的に使用されている状況に不満があるという可能性があります。

実際、権利者は、上記の「Dan-sha-Ri」の他に、銀座急送株式会社が所有する登録商標「断捨離 だんしゃり」(商標登録第5606900号)に対して、不使用取消審判(取消2016-300671)を請求しています(権利者が負けて登録は維持されている)。他の商標を潰そうとする行動から、権利者としては、許諾なく「断捨離」を商業的に使用する行為を好ましくないと思っていると推測されます。

「断捨離ガーデン」(商標登録第5418416号)、「断捨離オフィス」(商標登録第5418530号)、「断捨離ヒーリング」(商標登録第5840590号)に対しては今のところ取消審判を請求していないようなので、「ダンシャリ」と同一の称呼である商標のみが狩りの対象のようです。

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コメント

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