弁理士が説明する「それってパクリじゃないですか?」第7話の専門用語

ブログ
特許法 独学 チワワ

!ネタバレ注意!※ネタバレを含みますので、未見の方はTverでドラマをご覧になってからお読み下さい。
5/24放送の「それってパクリじゃないですか?」第7話では、パテントトロール(特許の怪物)が登場するということで、比較的にドラマでも取り上げられやすいテーマで盛り上がりました。というわけで、今回も専門家として、初学者にもわかりやすいよう条文を交えて説明していこうと思います。

特許出願中と特許表示 -特許法第187条–

「特許出願中」とは、特許出願に係る発明を実施している商品であることを示すために商品・広告等に付させる表示のことです。今回のドラマではこの表示を商品に付けることがグレーな広告方法であると指摘されていました。しかし、実際には「特許出願中」の表示は目にする機会が多く、また、品質が優良であることを誤認させるために付けるものにも限られません。例えば、「特許出願中」の表示を付けることによって、ライバル企業が模倣することをためらわせるような効果を狙うこともあります。

例えば、番組スポンサーでもある花王は、「ハミング フレア フレグランス」のニュースリリースにおいて、「花王独自の香り技術“ミネラルアロマ”(特許出願中)を採用し」と表現しています。この辺り、ドラマにおいてスポンサー企業への配慮があってもよかったのではないかと心配になってしまいました。

ところで、特許法(187条)では「特許表示」について定められています。具体的には、特許権者等は、特許発明に係る物が特許に係る旨の表示(「特許表示」)を付けなければならないという、努力目標が定められています。また、この特許表示の方法は、特許法施行規則第68条に定めれてています。具体的には、物の特許発明の場合は『「特許」の文字およびその特許番号』であり、物を生産する方法の特許発明 の場合は 『「方法特許」の文字およびその特許番号』です。ただし、努力目標ということもあり、法律に定められた特許表示ではなく、「PAT」等の特許を表す文字と特許番号とが付けられることもあります。

虚偽表示と不正競争と景表法 -特許法第188条–

さて、特許表示は付けるように努力するものとされていますが、又坂弁理士が言っていた「特許法第188条」によって、特許表示の虚偽表示は禁止されています。例えば、特許は発明を実施していない物に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付けること等が、虚偽表示として禁止されています。この虚偽表示を行った場合には、罰則もあり三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処するとされています(特許法第198条)。ドラマの中では、「青汁」に対する特許表示がその包装に関する特許であり、これを指しているものと思われます。

また、虚偽表示は、商品などの品質を誤認させるとして不正競争行為(品質誤認惹起行為 ※不正競争防止法第2条1項20号)とされることがあります。例えば、「国際的な特許で保護されている」、「特許を取得している」というHPでの記載が、品質誤認惹起行為に該当するとされた事件(平成23年(ワ)第5742号)があります。(なお、判決文では、一般に商品に付された特許の表示が「品質」の表示といえること、特許発明の実施品ではなくなった場合に、国際的な特許で保護されている等の表示を付ける行為は品質誤認惹起行為に該当すること、等が判示されています。)

また、不正競争行為でないとしても、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)によって、品質について事実に相違して著しく優良であると示す表示(優良誤認表示 ※景表法第5条第1号)とされる可能性もあります。なお、医薬品や化粧品については、医薬品等適正広告基準によって「特許」という文字の使用に配慮が要求されています。具体的に、特許に関する表現は、事実であっても医薬関係者等の推せん等に当たるとされています。ただし、正確な特許表示であれば、例外とされています。なお、ドラマでは猫用シャンプーに「特許出願中」の表示されていましたが、「人間用シャンプー」が医薬品医療機器等法(医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の「化粧品」に当たるとしても、猫用シャンプーは化粧品ではないので医薬品等適正広告基準の対象外でしょう。

パテントトロールとは?

日本語訳は「特許の怪物」とされ、自らは特許発明を実施せずに、他人が創作した発明を購入して他社に対してライセンス料等を要求する企業のことです。ただし、名称はまちまちであり、特許ゴロ、特許ヤクザ、NPE(Non-Practicing Entity)などと様々な呼び名があります。また、定義自体も、自社実施しているケースを含めることがあったり、自社開発しているケースを除くことがあったりします。

パテントトロールは、訴訟費用が高額である米国において特に問題となっており、訴訟費用よりも低額に設定した和解金をせしめるために、手当たり次第に提訴するような事例が挙げられます。そのため、ドラマの中で「(和解金を支払うと)カモにされる」と表現されていたように、高額な訴訟費用を負担せざるを得ないという問題があります。

死蔵特許とは?

死蔵特許とは、無効理由等もなく有効に存在している特許であって、特許発明が実施されておらず且つライセンスの許諾などもされてない特許のことです。別名として、休眠特許などとも呼ばれます。特許を維持するためには特許料(年金)という手数料を特許庁へを支払う必要があるのですが、自動更新をしている場合、実施のめどが立っておらずに特許抹消の判断をしていない場合、又は予め複数年(例えば10年分)の手数料を支払っている場合等に、死蔵特許となることがあります。

なお、死蔵特許の中には、特許権者が実施許諾を受け入れることを公表している開放特許というものがあります。この開放特許は、開放特許データベースにおいて検索することができるほか、特許公報に「特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。」と記載されていたりするので、見分けることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました