商68条の32第5の青本の解釈 – 杉浦 端
2020/05/13 (Wed) 14:55:44
工業所有権法逐条解説第20版の解説についてお尋ねします。
ページ1705の最終行からページ1706の3行目に「・・もとの国際登録【A】において指定した商品又は役務の範囲を超えた内容の商標登録出願【X】をして、その超えた範囲について出願の分割に係る新たな商標登録出願【X1】をしたときに、その範囲がもとの出願の範囲であるがもとの国際登録【A】の範囲外であるような場合にまで、出願時の遡及を認めることは妥当でないことから、出願の分割のできる範囲について限定したものである。」とあります。【】はわたしが追加。
ここでいう「もとの出願」とは、商標登録出願【X】でしょうか。
ここでいう「出願時の遡及」とは、商68条の32第2項「・・国際登録の日にされたものとみなす。」のことでしょうか。
上記の商標登録出願【X】は、拒絶理由が通知されることになると思いますが(商15条、商68条の34第1項又は第2項)、拒絶理由を解消するために分割に係る新たな商標登録出願【X1】は、国際登録【A】の出願時への遡及は認められないが、商標登録出願【X】の出願時への遡及は認められる(商10条2項)と解釈してよろしいでしょうか。
あるいは、商標登録出願【X】はそもそも方式違反(商68条の32第5項違反)であるから、準特17条3項2号に該当し補正命令を受けるのか、それとも補正できない不適法手続として手続却下(準特18条の2第1項)されるのでしょうか。
Re: 商68条の32第5の青本の解釈 – とおりすがり
2020/05/14 (Thu) 10:53:36
まず頂いた内容に沿ってお答えいたします。
「・・もとの国際登録【A】において指定した商品又は役務の範囲を超えた内容の商標登録出願【X】をして、その超えた範囲について出願の分割に係る新たな商標登録出願【X1】をしたときに、その範囲がもとの出願の範囲であるがもとの国際登録【A】の範囲外であるような場合にまで、出願時の遡及を認めることは妥当でないことから、出願の分割のできる範囲について限定したものである。」
指定商品をabcとします。
国際登録【A】(ab)
商標登録出願【X】(abc)←もとのAにおいて指定した商品等の範囲を超えた内容
分割出願【X1】(c)←その超えた範囲
その範囲(=X1の範囲c)がもとの出願の範囲(=Xの範囲abc)であるが、
もとの国際登録の範囲(=Aの範囲ab)外であるような場合にまで、
出願時の遡及(=分割が適法ならば10条2項によりXの出願日→Xの出願日はさらに68条の32第2項により国際登録の日)を認めるのは妥当でない
→妥当でないなら出願時の遡及を認めない(=X1の現実の出願日)
68条の32第5項で読み替える10条違反は、通常の商標登録出願における不適法な分割と扱いは同じです。
そのため、遡及効は得られず、現実の出願日になるだけです。
○質問への回答
ここでいう「もとの出願」とは、商標登録出願【X】でしょうか。
→はい。
ここでいう「出願時の遡及」とは、商68条の32第2項「・・国際登録の日にされたものとみなす。」のことでしょうか。
→はい。
上記の商標登録出願【X】は、拒絶理由が通知されることになると思いますが(商15条、商68条の34第1項又は第2項)、拒絶理由を解消するために分割に係る新たな商標登録出願【X1】は、国際登録【A】の出願時への遡及は認められないが、商標登録出願【X】の出願時への遡及は認められる(商10条2項)と解釈してよろしいでしょうか。
→いいえ。68条の32第5項で読み替える10条に違反していますので、不適法な分割で遡及しません。
あるいは、商標登録出願【X】はそもそも方式違反(商68条の32第5項違反)であるから、準特17条3項2号に該当し補正命令を受けるのか、それとも補正できない不適法手続として手続却下(準特18条の2第1項)されるのでしょうか。
→いいえ。結局は、通常の分割出願と同じ扱いです。
以上です。
管理人様ご確認をお願いいたします。
Re: 商68条の32第5の青本の解釈 – 管理人
2020/05/15 (Fri) 08:58:50
とおりすがりさん、ありがとうございます。
さて、ご質問ですが、とおりすがりさんの解説通りですね。
二点だけ捕捉コメントします。
①Q.「上記の商標登録出願【X】は、拒絶理由が通知されることになると思いますが(商15条、商68条の34第1項又は第2項)、拒絶理由を解消するために分割に係る新たな商標登録出願【X1】は、国際登録【A】の出願時への遡及は認められないが、商標登録出願【X】の出願時への遡及は認められる(商10条2項)と解釈してよろしいでしょうか?」
①A.適法な分割出願と認められないので、出願日の遡及効のない通常の商標登録出願として処理されます。
②Q.「商標登録出願【X】はそもそも方式違反(商68条の32第5項違反)であるから、準特17条3項2号に該当し補正命令を受けるのか、それとも補正できない不適法手続として手続却下(準特18条の2第1項)されるのでしょうか?」
②A.商標登録出願【X】は通常の出願と同じ扱いですので、方式違反にはなりません(とおりすがりさんの回答中、「分割」は誤記でしょう)。
なお、仮に方式違反とすると、そもそも審査されないので、拒絶理由が通知されることはないです。
コメント