・平成31年(ネ)第10003号『特許権侵害差止等請求控訴事件』
特102条1項(被疑侵害者の譲渡数量に、特許権者の製品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を損害の額と推定する)に関する大合議判決です。
結論としては、『特許発明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても、特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定される』です。
特許発明は、軸受け部材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であり、特徴部分は特許権者の製品の一部分であるにすぎませんでした。
また、特許権者の製品においては、顧客誘引力を有する部分として、①ローリング部の構成、②微弱電流を発生させる構成がありました。
そのため、被疑侵害者は、特許発明の特徴部分による製品の販売への寄与率がないと主張していました。
これに対して、大合議では、前提として「特許権者の製品において、特許発明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても、特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定される。」と認定しました。
そのうえで、「顧客誘引力を高めている他の部分が認められる場合、特徴部分が特許権者の製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないから、その販売によって得られる限界利益の全額を特許権者の逸失利益と認めるのは相当でなく、事実上の推定が一部覆滅される。」と判示しました。
さらに、被疑侵害者は、特許権者の製品全体の製造費用に占める、特許発明の特徴部分の製造費用の割合を貢献の程度とすべき旨主張していました。
これに対して、大合議では、「上記推定覆滅は、特許権者の製品の販売による利益に対する特徴部分の貢献の程度に着目してされるものであり、当該部分の製造費用の割合のみによってされるべきものではない。」と判示しました。
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