弁理士試験-H25論文商標法問題Ⅱ

H25論文商標法問題Ⅱ
今年の弁理士論文試験 商標について – 初学者
2013/07/28 (Sun) 11:54:51
今年の弁理士論文試験について質問があります。
商標に関してです。
【問題Ⅱ】
日本国内の地域ABC(注:ABCは地域の名称である)の多くの飲食店では、地元特産の牛肉を使った牛丼を「ABC牛丼」の名称で提供しており、また、「ABC牛丼」をパック入りにしてインターネットで販売したところ、好調な売れ行きである。地域ABCにおいて、「ABC牛丼」の提供及び販売促進のための団体甲が結成された。そこで、甲は、「ABC牛丼」の名称について、団体商標又は地域団体商標の商標登録を行いたいと考え、弁理士乙に商標登録出願の代理を依頼した。
この場合において、以下の各設問について答えよ。
解答に関して、マドリッド協定の議定書に基づく特例は考慮しなくてよい。
1.団体商標及び地域団体商標のそれぞれの制度趣旨について説明せよ。
2.「ABC牛丼」の名称について。地域団体商標の商標登録出願を行うことにした場合、出願手続前に、乙が確認すべき事項について説明せよ。
3.地域団体商標の商標登録出願をするにあたり、乙が「ABC牛丼」に関し事前に調査したところ、飲食店主の丙が所有する「牛丼の提供」を指定役務とするゴシック体の「ABC牛丼」の文字と図形からなる登録商標イがあることがわかった。役務「牛丼の提供」及び商品「牛丼」を指定役務・指定商品とする甲の地域団体商標「ABC牛丼」は、商標登録を受けることができるか否かについて理由を付して述べよ。
なお、丙の登録商標イには、無効の理由は存在しないものとする。また、役務「牛丼の提供」及び商品「牛丼」は類似しないものとする。
この設問3について質問があります。
模範解答
----------------------------------------
(1) 指定役務「牛丼の提供について」
① 甲の出願する商標「ABC牛丼」は、他人丙の先願先登録商標と指定役務が「牛丼の提供」で同一である。また、先願に係る丙の登録商標イの図形部分が原則として、登録商標イの要部となる。
② このため、丙の登録商標イの図形部分と甲の商標とを対比して両商標が類似する場合、法4条1項11号の拒絶理由が想定され、類似しない場合、法4条1項11号の拒絶理由は想定されない(15条1号)。
(2) 指定商品「牛丼」について丙の先願先登録商標との関係では、拒絶理由は想定されない。
(3) 結論
指定役務「牛丼の提供」について法4条1項11号の拒絶理由が想定される場合、甲の地域団体商標は登録を受けることができない(15条1号)。
----------------------------------------
となっています。
ここで、(2)の指定商品「牛丼」について、4条1項15号は検討しなくてもいいのでしょうか?
「牛丼」と「牛丼の提供」は非類似ではありますが、出所の混同は招きそうな気がします。たとえば、飲食店主丙と団体甲が関連あるのだろうと考えてもおかしくないと思います。
だから、商標が類似しているのであれば、4条1項15号を検討してもよいような気がするのですが。
なぜ、解答では4条1項15号を最初から考慮していないのでしょうか?
Re: 今年の弁理士論文試験 商標について – 太陽王
2013/08/04 (Sun) 21:38:43
初学者さん、
私は、「「牛丼」については他の登録要件を具備することにより(特に4条1項15号違反がないこと)登録を受けることができる」といった趣旨で回答した記憶があります。気力体力を使い果たした後の朦朧とした意識の中でしたが…(苦笑)
「牛丼」と「牛丼の提供」が非類似扱いという前提がそもそも私的にはしっくりこないところです…。
Re: 今年の弁理士論文試験 商標について – JD
2013/08/05 (Mon) 19:38:44
弁理士です。特許屋なので誤謬を含んでいるかも知れません。
特許庁の公表論点には確かに十一号しか挙げられていない(つまり、十一号について、先願先登録商標商標の周知性及び要部の話をきっちり書けということ。地域団体商標出願の審査基準にあります)のですが、その過程で先願先登録商標の周知性の有無を場合分けするので、十五号も検討することになるはずです。
(1)「牛丼の提供」
指定役務が被るので十一号に該当する可能性。よって、先願先登録商標の識別能力を発揮する要部がどこであるか検討する。
先願先登録商標が特に周知でないならば、図形部分が要部であり(「ABC牛丼」は本来は3条1項三号に該当して登録を受けられない商標だ)、「ABC牛丼」部分に識別力はなし。よって商標が非類似で登録可能。
他方、先願先登録商標がかなりの周知(極端な場合には、3条2項が適用できるほど全国的周知)性を獲得している場合には、「ABC牛丼」が丙の業務に係るものであると需要者が認識している可能性がある。この場合、「ABC牛丼」部分が出所表示機能を発揮する要部になってしまうので、4条1項十一号の拒絶になる。
ちなみに、十号及び/または十五号違反になる可能性もあるが、十一号を優先的に適用することが実務(審査官として証拠を挙げやすいし、両時判断の問題もないから)。
(2)「牛丼」
指定役務が被らないので、十号及び十一号の問題はない。よって、十五号の適否を検討する。
十五号は一応、先願商標の十分な周知性を必要とする(審査基準及びレールデュタン事件判例を見て下さい)。
先願先登録商標が特に周知でないならば、出所混同のおそれはなく、十五号適用はない。よって出願は登録を受けられる。
他方、先願先登録商標がかなりの周知性を獲得しており、「ABC牛丼」が丙の業務に係るものであると需要者が認識している場合、「ABC牛丼」が丙の出所表示と認められる。さすれば、指定商品役務が非類似であったとしても、広義の出所混同(レールデュタン事件判例)として4条1項十五号の拒絶となる。
但し、丙が周知性を獲得していたとしてもその周知性は図形の部分に限られるとすれば、出所混同のおそれはない、ということもあり得ます。結局は先願商標の要部はどこか?という議論に帰結します。
Re: 今年の弁理士論文試験 商標について – JD
2013/08/05 (Mon) 20:13:04
上の回答に補足・訂正させて下さい。
そもそも、地域団体商標登録を受けるためには、「その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」ことが必要です(7条の2)。
「ABC牛丼」が自己または構成員の業務に係るものとして数県レベルで周知でない限り、地域団体商標登録出願としては拒絶されます(7条の2第1項違背(第15条)。3条や4条の問題ではない)。
逆に、「ABC牛丼」が自己または構成員の業務に係るものとして数県レベルで周知であるということは、丙の商標との間で十五号にいう「出所混同」は起こらない、ということでよいのかもしれない(そのように決め打って解答用紙に書けばよい)??。100%の確信はないのですが・・・
ただ、「牛丼の提供」については、審査便覧
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyoubin/47_101_06.pdf
に明記してあるように、十一号の拒絶の可能性はあります。上の十五号の話と矛盾するようですが。
Re: 今年の弁理士論文試験 商標について – 管理人
2013/08/07 (Wed) 14:53:20
太陽王さん、JDさん
回答への御協力ありがとうございます。
さて、質問の回答ですが、11号に該当する場合は15号の適用がないので、そのために模範解答では同号を考慮していないのではないでしょうか。
なお、丙の先願先登録商標は識別力のある図形が商標の要部であるために登録されたと解されます。
従って、甲の出願する地域団体商標とは類似しないと判断されるので、甲の出願する地域団体商標は「牛丼の提供」についても商4条1項11号の拒絶理由には該当しない(登録可能)と考えるのが楽だと思います。
(原則論なので絶対に類似しないとまでは言い切れませんが)
わざわざ図形についての記載があることからすれば出題の意図は11号でしょうから、商4条1項15号の混同については書かないか、商標の非類似を理由に混同は生じないと書く程度かと思います。
また、丙の商標が著名である場合の場合分けをしてもいいと思いますが、後は時間との兼ね合いでしょうかね。
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