弁理士試験-量産品の著作物性

量産品の著作物性
著作物の数え方について – TDN
2012/12/01 (Sat) 19:58:38
 著作権法では、一品製作物を著作物とし、量産される工業デザイン等は著作物でないとされています。
 ここで、著作物の数え方が問題となります。
 音楽がCDに格納され量産された場合、プログラムがCDRに格納されされ量産された場合、文章が雑誌に掲載され、量産された場合、ネットで、これら著作物が頒布された場合は、著作物の数え方はどうなるのか。
 これは、私は著作物が「一つ」と考えています。雑誌等は、著作物の複製物と考えられるからです。
 しかしながら、量産されるコーヒーカップ等の工業デザインは、著作物でないとされています。上記の考え方を当てはめますと、納得できません。これが第一の疑問点です。
 第2の疑問点は、いわゆる「ゆるキャラ」をデザインした者は、著作権を有するかどうかです。
 ゆるキャラの関連グッズとして、人形などの商品が量産されることは想定できます。しかし、それを決めるのは地方公共団体です。
 著作者の意図に反してグッズが量産され工業デザインとなった場合でもゆるキャラは著作物になるのでしょうか?
 デザインを利用する者の意思によって著作物かどうかが決まること自体が法的安定性を害し、あり得ないことなのです。ですからこのような考え方は採用できないでしょう。
 いったい著作物の数え方は、どう考えれば妥当なのでしょうか?
Re: 著作物の数え方について – 特訓中
2012/12/08 (Sat) 12:38:47
第2の疑問点について。
http://www.iprchitekizaisan.com/sangyo/isyo.html
によりますと、
「美術品におけるデザインは、基本的に量産が効かないものです。一流の彫刻家は「目の前の素材が何者になりたがっているか」を見極めて彫るといいます。すなわち、人と素材の一期一会によって美術品が生み出されるものであり、大量生産とは対極に位置するものといわれています。一方、工業デザインは大量生産を前提としている為美術品に見られるような奇抜さはさほど高くはありません。工業という枠組みの中で、製品独自の個性を発揮するデザインを追及していくものなのです。」
 だそうです。
 このサイトの内容の真偽はわかりませんが、後に美術の著作物が工業デザインになることはありえない、著作者・デザイナーの意思によって著作物かどうかが決まる、と言ったところでしょうか。
Re: 著作物の数え方について – 管理人
2012/12/11 (Tue) 12:29:13
特訓中さん
回答へのご協力ありがとうございます。
さて、第1の疑問点については、著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定義しており、量産される工業デザイン等であっても著作物には成り得ます。
有名な判例である「博多人形事件」(昭和47(ヨ)53)でも、「美術的作品が、量産されて産業上利用されることを目的として製作され、現に量産されたということのみを理由としてその著作物性を否定すべきいわれはな
い。さらに、本件人形が一方で意匠法の保護の対象として意匠登録が可能であるからといつても、もともと意匠と美術的著作物の限界は微妙な問題であつて、両者の重量的存在を認め得ると解すべきであるから、意匠登録の可能性をもつて著作権法の保護の対象から除外すべき理由とすることもできない。従つて、本件人形は著作権法にいう美術工芸品として保護されるべきである。」と述べられています。
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/428EF669432C728149256A76002F8A74.pdf)
ただし、量産される工業デザイン等は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当しないことが多いので、一般的には著作物に該当しないことが多いというだけです。
というわけですので、著作物が「一つ」という考え方に沿っても、著作物性を有するコーヒーカップを複製して量産したものは著作物の複製物と成り得るので特に矛盾はないと思います。
第2の疑問点についても、「ゆるキャラ」をデザインした者は著作権を有します。
つまり、量産品か否かは、著作物性の要件ではありません(ただし、間接的に著作物性の判断に影響を与えることはあります)。
なお、量産されるグッズであっても、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術(一品製作物)と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されれば著作物に該当すると考えられます。
こちらも有名な判例である「チョコエッグ事件」(平成16年(ネ)第3893号)でも、「本件妖怪フィギュアのうち,石燕の「画図百鬼夜行」を原画としないものについては,制作者において,空想上の妖怪を独自に造形したものであって,高度の創作性が認められることはいうまでもない。そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。以上によれば,本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当する」と述べられています。
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/7FFB9348C09DE87F4925710E002B127F.pdf)
蛇足ですが、疑問点は著作物の数え方の問題ではなく、著作物の定義の問題だと思います。
簡易的に著作物性を判断する場合は別として、法律上は数(量産)は関係ないと考えた方がよいです。
あと、そもそも著作物が二次的著作物の原著作物であるか否かは、原著作物の著作物性の判断に影響しません。
ゆるキャラが原著作物であるとして、そのグッズは単なる二次的著作物と考えられます。
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