訂正の請求に対する独立特許要件
質問 – のりあす
2010/01/16 (Sat) 05:21:57
特134条の2第5項の読み替え準用について、使用しているテキストの解説で無効審判の審理の迅速化促進が理由になっていました。
ここで、何故読み替える必要があるのかと、どうして審理の迅速化に繋がるのかについてお願いします。
Re: 質問 – 管理人
2010/01/16 (Sat) 23:27:24
正確なところが分かりませんので、以下私見になります。
特134条の2第5項で読み替えた特126条5項には、特許無効審判の請求がされていない請求項に係る(所定の事項を目的とする)訂正は、独立特許要件(特126条5項)を要する旨を規定しています。
つまり、特許無効審判の請求がされた請求項については、無効審判中で独立特許要件を判断し、特許無効審判の請求がされていない請求項のみ、無効審判外で独立特許要件を判断するということです。
これにより、無効審判中で当事者の主張立証を委ねることになり、特許庁では得ることができない証拠が得られ審理の充実及び迅速化に資することになります。
また、無効審判外で独立特許要件を審理した後に、無効審判内で再審理する必要がなくなり不要な遅延を防止できます。
なお、これが同項を読み替えた理由であると思われます。
Re: 質問 – ペンキ
2010/01/18 (Mon) 18:01:22
特134の2第5項は、平成5年の一部改正により追加された規定です。特許権の設定登録がなされた後は、明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、明細書等という)は権利書となることから、その内容をみだりに変更することを許容すべきではありません。しかし、特許後においても、①特許請求の範囲が広すぎたため、本来有効な部分も含めて特許権全体が無効であることとそれること、②明細書等の記載に誤りがあったり、記載が不明瞭であるために特許の有効性又は特許権の範囲の解釈に問題が生じること、等により、特許権者が不利益を被る場合も考えられますことから、第三者に不測の損害を与えない範囲において、特許権者に特許を訂正する機会を与えることにより、発明の保護を図る制度が従来から設けられていました(特126条)。
ところが、従来の制度においては、特許の訂正は、多くの場合、特許無効審判の請求がなされたことに対する防御策としてなされるにもかかわらず、訂正審判により審理されることとされており、特許無効の審判の手続おいて訂正を行うことは認められていませんでした。そして、特許無効審判と訂正審判が同時に係属している場合は、訂正審判の審理結果により、特許無効審判の審理対象が変化し、それまでになされた審理が無駄になることも考えられるため、通常は訂正審判の審理結果がでるまで特許無効審判の審理が中断される等、特許の有効性についての審理が迅速かつ的確に行われない場合も生じていました。このため、平成5年の一部改正においては、審理の迅速性及び的確性を確保する観点から、主要国の制度も考慮した上で、①特許無効審判が係属している場合は、当該審判の手続において従来と同様の範囲の特許の訂正を行うこと及び②特許無効審判において訂正の是非についても争えることとし、特許無効審判が特許庁に係属している間は、独立して訂正審判の請求を行うことは認めないこととしました。したがって、特許権者に対しては、訂正審判という形ではなく特許無効審判の手続における訂正請求を行うことにより特許無効に対する防御の機会を認めることにより、全体として審理の迅速化が図られることになりました(特134条の2)。
この立法趣旨の理解を前提にして本項を説明しますと、前段は、第1項において、特許無効審判の手続中に訂正を請求することができることとしたことに伴い、訂正の要件、手続、効果等について関連する条文を準用したものです。これにより、特許無効審判の被請求人は、訂正審判の場合と同様の範囲において訂正を行うことができます。本項後段(「この場合において、・・」以下)は、平成11年の一部改正により追加された規定であり、特許無効審判の請求がされていない請求項についての訂正請求に限り、いわゆる独立特許要件を判断する旨の規定です。その趣旨は、訂正できる範囲を規定する特126条1項但し書第2号は、誤記又は誤訳の訂正を認めていますが、必ずしも特許請求の範囲の訂正に限定していません。そのため、誤記又は誤訳に基づき発明の詳細な説明における記載を訂正する場合も起こり得ます。しかしながら、この訂正が特許請求の範囲に影響を及ぼす可能性は極めて低く、仮に影響を与えるような訂正があったとしても、そのほとんどが「誤記又は誤訳の訂正」を目的としないもの又は「実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するもの」として認められないものです。
したがって、平成11年の一部改正においては、特許無効審判がなされていない請求項について訂正された場合に限りいわゆる独立特許要件の判断を行うこととしたものです。なお、この改正は、いわゆる独立特許要件についてのものにすぎず、特許無効審判の請求があった請求項に対する訂正であっても、その他の要件(新規事項の追加、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものであるか否か等)は、従来どおり判断されます。なお、訂正請求に関しては、従来答弁書等に関する特134条に規定がありましたが、平成15年の一部改正により理由証拠の追加の容認及び差戻し決定の導入に伴ってさらに関連規定が新設されたため、新たに、訂正請求のついての通則として特134条の2及び差戻し等があった場合の特則である特134条の3を設け、関連条文を整備したものです。
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