拡大先願と翻訳文提出前の審査
拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 短答2年目
2013/01/16 (Wed) 13:05:24
甲がイを発明とする国際出願A(全指定)をアメリカで英語で行った。乙がその後、イを発明とする日本国内出願Bをした。その後、甲の国際出願Aが国際公開された。Aはまだ日本語に翻訳されておらず、日本にて国内公表はされていない。そして、Aの国内公表の前に乙の国内出願Bが公開された。このタイミングで乙が審査請求を行った。この場合、結果はどうなりますか?Aの出願から3年経っていれば、”甲がAを国内移行(翻訳提出)すればAはBの拡大先願となり乙は拒絶査定。甲がAを国内移行しなければAは取り下げ擬制されBの拡大先願とはならずBは特許査定。”だと思います。3年経っていない場合の扱いです。私の予想は、Bが特許査定された後、Aの国内公表の後、Bの無効審決が確定、です。宜しくお願いします。
Re: 拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 管理人
2013/01/16 (Wed) 18:47:06
質問の前提からすると、答えは「分かりません」になってしまいます・・・。
まず、事例を時系列でまとめますと(余談ですが、時系列に並べるのは本試験でも重要なので必ずやって下さい)、
①甲が発明イについて米国にて国際出願Aをした。→②乙が自らした発明イについて日本で出願Bをした。→③甲の国際出願Aが国際公開された。→④乙の出願Bが公開された。→⑤乙が出願Bについて審査請求を行った。
ですね。
ここで出願Bが拒絶される場合として、特29条の2を考えているのですよね?
であれば、⑥として、「国際出願Aの翻訳文が適法に提出された。」という前提が必要で、この場合は拒絶されます。
逆に⑥がないなら特29条の2は成立しませんので登録されるでしょう。
ちなみに、国内公表ではなく国際公開が要件ですので、特184条の13もよく確認して下さい。
なお、試験から離れて実務の話を聞きたいのならば、審査時に特29条の2に当たる未公開の出願があった場合に審査官がどうするのかということになります。
この場合は弊サイトの短答試験講座に書いてある通り(また以前回答したように)、審査を一時保留している旨の通知書が出願人に発送されます。
蛇足ですが、「Aの出願から3年経っていれば」は、「Aの出願から30月経っていれば」です。
未審査請求による取下擬制よりも、翻訳文未提出による取下擬制が先に到来します(翻訳文提出特例期間を考慮しても32月)。
正当な理由があるときの例外(特184条の4第4項)を考慮したというのならば、「Aの出願から3年」も間違いではないですけどね。
ところで、関連条文の確認がちょっとおろそかになっているように思われます。
また、事例の当てはめも雑です(例えば、「甲がAを国内移行しなければ」とか、「Aの国内公表の後、Bの無効審決が確定」とかです。拒絶なり無効なるには、いずれも所定の要件を満たす必要がありますので、各要件を満たしていることを確認する必要があります)。
短答ではあまり問題になりませんが、論文では致命的ですので今のうちから注意して下さい。
Re: 拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 短答2年目
2013/01/19 (Sat) 10:03:55
管理人様、回答およびアドバイスありがとうございます。3年と30ケ月、色々と書き直している間に間違えました。すみません。184条の9から13まで講座を読みなおしました。
184条の13の”国内公表ではなく国際公開が要件”の意味が良く分かりませんでした。どうやら、国内公表と翻訳文提出とをゴッチャにしていたことが原因と分かってきました。
①国際出願の後、適宜翻訳文を提出することが出来る。この場合には、審査官は、国内公表前でも国際公開の内容を把握できる。”国際公開+翻訳文”にて拡大先願として29条の2で後願を拒絶出来る。国内移行されるか、国内公表されるかは要件ではない。ただし、審査を一時保留している旨の通知書が出願人に発送され、国内公表の後、拒絶となる。②国内公表前で、翻訳文のない時には、国際公開は未だ日本では意味を持たない。後願であってもそれは特許査定を得ることがある。③国内公表の後は、翻訳文は当然提出されている。29条の2により拒絶査定となる。
で正しいですか?
国内移行手続きがされていなくても翻訳文があれば国内公表はされるのですか?184条の9の講座も読みましたが、要件になっていないですし、されそうですが。
Re: 拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 管理人
2013/01/21 (Mon) 12:34:36
う~ん・・・どうしてこうなっちゃうんでしょうねぇ?
あてはめが雑というか、適当に「そんな気がする」という程度で考えていませんか?
今後は条文通りに考えるように工夫してみてください。
例えば①の場合は、
国際出願の後、適宜翻訳文を提出することが出来る(特184条の4)。
先願の国際公開(又は特許掲載公報の発行、出願公開など)+翻訳文提出にて拡大先願として特29条の2で後願を拒絶出来る(特184条の13)。
国内移行されるか、国内公表されるかは要件ではない(特184条の13)。
ただし、翻訳文未提出の場合は、審査を一時保留している旨の通知書が出願人に発送される(特許庁での運用)ので、
「国内公表の後、拒絶となる」が間違いです。
というか、翻訳文が出ているなら、すでに拒絶できる状態ですよね?(国内移行が要件にならないことを前提としてですが)
②の「国内公表前で、翻訳文のない時には、国際公開は未だ日本では意味を持たない。」は正確には、「いわゆる拡大された先願の地位を有さない」です。
国際公開によって、公知文献として特29条の引例にはなりますからね。
③「国内公表の後は、翻訳文は当然提出されている」はそうなんですけど、何度も言っているように、特29条の2と「国内公表」は関係ないですよね・・・
国内移行手続きがされていなくても翻訳文があれば国内公表はされるのかは不明ですが、出願却下されるので(特184条の5)、特64条と同様に解して国内公表されないように思います。
(※出願却下によって、もはや特許出願ではなくなる。)
Re: 拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 短答2年目
2013/01/21 (Mon) 14:51:57
管理人様。どうもすみません。確実に条文を入れて書くようにします。以前に長文になってしまったので、短文にしようとして、更に滅茶苦茶になってしまいました。努力します。少しずつ改善する予定?ですので、見捨てないでください。今からクセをつけないと後々全く使えない人になりそうですよね。
追加の質問、すみません。
Question1:国際公開(英語)で翻訳文の提出されていない特許について審査官は拡大先願の可能性をチェックするのですか?→しないで正しいですよね。
Question2:ケース①の場合で、翻訳文未提出の場合、二つの答えを頂きましたが、どちらですか?
翻訳文提出(⑥)がないなら特29条の2は成立しませんので登録されるでしょう。(1/16, 18:47:06, 11行目)
翻訳文未提出の場合は、審査を一時保留している旨の通知書が出願人に発送される(特許庁での運用)(1/21,12:34:36,10行目)
Question3:私の疑問の元は、条文(184条の13)をそのまま読むと、”翻訳が提出されている時には29条の2により拒絶理由が通知される”となりそうなのですが、通知を受ける人間は翻訳を合せて知り得ているのだろうかということです。翻訳は拒絶理由を通知される人間に知らされるのか、翻訳が閲覧できるのか、翻訳は公開されるのか?から頭がおかしくなって行きました。このような記述はどこにも見当たらないので、”国内公表?”となってしまったのです。どのように拒絶理由が通知されるのですか?
私の元の質問や追加のものが要領を得ず、混乱させて申し訳ありません。どうか宜しくお願いします。
Re: 拡大先願と国内公表まえの審査請求 – 管理人
2013/01/22 (Tue) 11:50:41
ようやく解決しそうですね。
どうやら、そもそも「翻訳文がなければ拒絶理由を通知できない」という誤解が原因のようです。
以下に述べたように、審査官には翻訳文を添付するような親切さはないですね(人によるかもしれませんけど)。
Question1:翻訳文提出により特29条の2の先願になる出願がある場合は、審査を一時保留している旨の通知書を審査官名で出願人に通知しているそうです。
(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa/34.pdf)
よって、翻訳文の提出されていない特許についても、審査官は拡大先願の可能性をチェックするのでしょう。
なお、質問が審査官にあらゆる外国語でされた国際出願の調査義務があるのか、という意味ならば、義務はあるでしょうけど実際には不可能ですよね。
Question2:両方正しいです。
例えば、甲が日本で外国語書面出願した後に、乙が自らした同一の発明について日本で特許出願をして且つ審査請求をしたとします。
ここで、①甲の出願から1年2月経過後の時点であれば、特29条の2は成立しませんので登録されるでしょう。
一方、②甲の出願から1年2月経過前の時点であれば、審査官が甲の翻訳文提出により特29条の2の先願になることに気付いたのならば、審査を一時保留している旨の通知書が出願人に発送されるでしょう。
Question3:審査官の裁量によると思います。
そもそも、特29条1項3号にあるように、外国語文献で拒絶することもできますので、拒絶理由通知よsに翻訳文を添付しなければならない必要がないからです。
簡単にいえば、特29条の2であっても、「国際公開第2000/○○○○○○号には請求項1に係る発明が開示されている(特に第○頁参照)。」で拒絶を通知できます。
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