弁理士試験-国内消尽における特許製品の同一性

国内消尽における特許製品の同一性
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国内消尽 – araichu
2009/09/02 (Wed) 09:09:52
インクタンクリサイクル事件(H19/11/8)
甲がプリンタのインクタンクの特許権者で、乙がその使用済みのものを回収し、インクを詰め替えて販売しているケースで、甲が乙に差し止めを起こした事件に関して、
判例の中で特許製品と同一性を欠く新たな製品が新たに製造されたと認められたときは、特許権の権利行使が可能と示されました。
この「同一性」というのがいまいちよくわかりません。
(1)使用済みインクタンクを、乙が、インクを詰め替えて第三者へ譲渡した場合(本件事案)は、同一性を欠くので権利行使可能と示されました。
(2)使用済みインクタンクを、乙が、何もせずにそのまま第三者へ譲渡したら同一性は欠きませんか?
(3)使用済みインクタンクを、乙が、甲のクレームの範囲から外れるようにタンク自体に加工を施し、インクをつめて販売したら、同一性を欠きますか?
*「同一性を欠くなら権利行使していい」とする判例に違和感を覚えました(同一性を欠くならなおさら権利行使できないのでは?)ので聞いてみました。教えてください。
Re: 国内消尽 – 管理人
2009/09/02 (Wed) 12:29:52
この事件は今年の論文試験でも出題された重要判例なので、よく復習してください。
なお、この事件は弊サイトでも講評しており、事件番号は平成18(受)826号です。(http://benrishikoza.web.fc2.com/hanrei/inkjiken.html)
さて、まず前提のとなるのはいわゆる国内消尽です。
つまり、特許権者等が特許製品を譲渡した場合、当該特許製品について特許権は消尽するというものです(最高裁平成7年(オ)1988号)。
ここで、消尽の対象となる特許製品というのが、特許製品と同一性を有する製品になります。
これを踏まえて本事件で重要なのは下記の点です。
すなわち、加工前の特許製品と同一性を欠く新たな製品を製造していること。
つまり、特許製品に加工が施された別製品であること。
そして、加工の結果、発明の本質的部分に係る構成を再び充足させ、発明の実質的な価値を再び実現し、発明の作用効果を発揮させていること。
つまり、特許発明の構成を具備していること。
具体的に、特許発明AにタンクBを組み合わせた特許製品のタンクBに対し加工を施し、タンクB’とした場合を考えます。
この場合、加工後の新たな製品は、特許発明Aの構成を備えるものの、タンクの構造が異なるため、特許製品と同一性を欠く新たな製品になります。
そして、本事件では、こういう新たな製品については、特許侵害となると判示しているのです。
質問に戻ると、(2)については、使用済みインクタンクに乙が加工せずにそのまま第三者へ譲渡しているので、特許製品と同一性を欠きません。
よって、特許権は消尽します。
(3)については、甲のクレームの範囲から外れるようにタンク自体に加工を施すことにより、特許発明の構成を具備していないので、特許侵害にはなりません。
最後に、本事件の「同一性」は、特許製品についていうものであり、特許発明についていうものではないという点に注意してください。
分かりましたか?
Re: 国内消尽 – araichu
2009/09/02 (Wed) 14:17:12
ありがとうございました。
特許発明(物の発明A)を含む製品(C=A+黒インク)の、特許発明でない部分(黒インク)を交換して販売する行為は、特許発明Aを利用した侵害者の新たな製造行為(C=A+黒インク’)とみなせるので、判例のように「同一性を欠く場合は権利行使可能」となっているのと理解しましたが、これでよろしいでしょうか?
Re: 国内消尽 – 管理人
2009/09/02 (Wed) 14:39:15
惜しい!
理屈は合っていますが、本事件の判断とは違います。
本事件で同一性を欠くと判断された部分は、「インク補充のための開口部を設けた」という部分です。
恐らく黒インクの成分程度では、実質的同一の範疇を超えないと思われます。
まずは、先の回答で添付した判例の解説をよく読んでください。
Re: 国内消尽 – araichu
2009/09/02 (Wed) 15:02:51
どうもありがとうございました。
もっと勉強してみます。
Re: 国内消尽 – araichu
2009/09/02 (Wed) 15:15:20
思い出しましたので、さらにお聞きしますが、
電気屋でCanon等のインクタンクに自宅で穴をあけて、購入者に自分でインクを補充させるインクセットが売っていますが、これは業としての実施にならないので、侵害品ではありませんか?これは、特101条1項の「物の発明の生産(インクの詰め替えによる再利用)のみに用いる物の譲渡」になり間接侵害品でしょうか?
Re: 国内消尽 – 管理人
2009/09/03 (Thu) 11:58:30
結論からいうと、インクの補充行為はインクタンクに係る発明の実施行為ではないので、特101条1項には該当しません。
これが、インクの製造キットの場合は、該当する可能性があります。
また、市販の補充用インクセットは、特許製品以外の他社製品などにも使用できると思われますので、「のみ」品にも該当しないと思います。
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