部分意匠についての整理
部分意匠についての整理 – 受験生A
2019/04/06 (Sat) 02:10:12
2度目の質問になります。
どうぞよろしくお願いします。
ただいま、部分意匠について整理をしており、考え方に問題がないかのチェック及び誤りがあった場合に指摘をお願いしてもよろしいでしょうか。
(1)審査段階における類否について
①公知意匠が全体意匠-出願意匠が部分意匠
→3条1項3号の類否判断はいわゆる4要件
根拠:審査基準71.4.2.2.1
②公知意匠が部分意匠-出願意匠が全体意匠
→3条1項3号の類否判断は、全体同士を比べて物品と形態の認定作業等によって行う。
根拠:審査基準22.1.3.1.2(1)
③公知意匠が部分意匠―出願意匠が部分意匠
①と同様。根拠も同様
Re: 部分意匠についての整理 – 受験生A
2019/04/06 (Sat) 02:26:54
(2)侵害について(先願意匠後願意匠の衝突の場面)
①先願意匠が部分意匠―後願意匠が全体意匠
実施の前提となる類似の判断基準はいわゆる4要件。
※ところでこの場合、
(イ)ここで4要件を満たす場合には必ず利用関係によって後願意匠が先願優位による制限を受けるという理解でよいでしょうか?
(ロ)物品非類似のケースでは、定義上利用関係となる場合があるものの、そもそも物品をまたいで権利行使できないため後願意匠の実施は非侵害という理解でよいでしょうか?
(ハ)物品同一又は類似のケースでいわゆる4要件の2~4要件の検討の結果部分意匠の類似と言えない場合、後願意匠の実施は利用関係の余地はなく、非侵害でよいでしょうか。
②先願意匠が部分意匠―後願意匠が部分意匠
類似か否かはいわゆる4要件によって決せられる。類似であれば、そもそも後願は過誤登録であり無効理由を有すること、意匠権は排他権が主であるため、後願意匠権を無効とせずとも当然に先願意匠権の侵害である。
③先願意匠が全体意匠―後願意匠が部分意匠
後願製品(完成品)が先願にかかる全体意匠と同一類似であるか否かによって決せられる。
例えば後願製品(完成品)の自転車が、物品自転車の先願意匠の形態と同一類似であれば侵害となる。
Re: 部分意匠についての整理 – 受験生A
2019/04/06 (Sat) 02:47:50
(3)利用関係について
①先願意匠が部分意匠―後願意匠が全体意匠(物品同一)
両者ともに物品が自転車であり、先願がサドル部についての部分意匠である場合。
この場合、いわゆる4要件で検討した結果肯定された場合には当然に利用関係が成立し、後願意匠の実施は制限される。
では、先願意匠すなわちサドル部を採用した完成品を作成した場合に、当該自転車が後願意匠と同一であった場合には実施できるのでしょうか。
26条の解説部分に「先願に係る部分意匠の意匠権者が自己の意匠と同一又は類似の意匠を実施したとしても、後願意匠権を侵害しないと解する。」とありますが、これはこの例で後願と同一の自転車を実施することができるという意味で理解してよいでしょうか。
②物品非類似の場合
利用関係の定義によって利用となる場合がある(例えば先願意匠の物品「椅子」についての脚部が部分意匠の対象とされており、後願全体意匠の物品が「ベッド」であるときに椅子の脚部がベッドに応用された場合。ここで椅子とベッドは物品非類似とします)ものの、(意匠は物品と切り離せないため)物品非類似のため権利行使できない(なお、これは上記(ロ)の内容と同じものを想像してます)。
なお、この際具体的な答案上の検討としてはいわゆる4要件の第一要件を満たさないため、非類似ゆえ非侵害との処理でよいのでしょうか?
質問はさしあたり以上になります。
利用関係が今一つわかりにくいのですが、誤りや知っておくべきケースに抜けがないか等についてご指摘をお願いします。
Re: 部分意匠についての整理 – 管理人
2019/04/09 (Tue) 13:53:32
まず質問が長いので次からは一質問ずつに分割して下さい。
さて、とりあえず聞きたいことが分からないので、わかるところだけ回答します。
(1)
②の「全体同士を比べて物品と形態の認定作業等によって行う」はその意味が分かりませんが、部分意匠の「その他の部分」において具体的な形態を識別できるものは、新規性の判断の資料にできるということだけ覚えておけばよいと思います。
(2)
①(イ)原則利用関係が成立するでしょうが、先出願による通常実施権とかもあるので、必ず制限を受けるわけではないです。
①(ロ)部分意匠と後願に係る全体意匠とが非類似の場合であっても、全体意匠が部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の意匠をそっくりそのまま取り入れていれば、利用関係が類推適用されて後願意匠の実施が制限されます(自己の意匠権をもって抗弁できない)。
なお、昔は「そっくり説」とか言ってましたけど、今は言わないかも。
①(ハ)後願意匠の対応部分が部分意匠の類似と言えない場合は、もちろん後願意匠の実施は利用関係の余地はなく、非侵害です。
②過誤登録の場合に後願意匠権者が自らの意匠権で抗弁できないのはその通りです。
なお、例えば自転車のサドルの座面部分の部分意匠が先願で、自転車のサドル部分の部分意匠が後願で利用関係が成立する可能性もあります。
③先願が全体意匠で後願が物品同一の部分意匠の場合、対応する部分が同一又は類似するなら意3条の2に反する過誤登録の事例では?
過誤登録でないなら、非類似でおしまい。
(3)
①先願に係る部分意匠の意匠権者が自己の意匠と同一又は類似の意匠を実施したとしても、後願意匠権を侵害しません。
ただし、その他の部分によって全体の美感が大きく異なるような場合に、先願意匠権者が後願意匠を実施する場合、両意匠は非類似となり該抗弁権は否定されます。
例えば、先願がママチャリのサドル部分で、後願がマウンテンバイクのときに、先願意匠権に係るサドル部分を含むマウンテンバイクを実施すると、後願意匠権を侵害することがあります。
なお、通常は後願意匠が意3条2項で排除されると思います。
②先願意匠の物品「椅子」についての脚部が部分意匠の対象とされており、後願全体意匠の物品が「ベッド」であるときにには、物品非類似でいいと思います。
少なくとも、当該物品全体の形態の中での位置、大きさ、範囲が大きく異なるので、外観も非類似でしょう。
問題となるのは、先願部分が「棚(学習机等の上に載置するもの)」で、後願全体意匠が当該棚をそっくり含む「学習机」のような事例です。
弁理士試験では、そっくりそのまま取り入れていれば、侵害(意23条)とか言っておけばいいと思います。
(利用の議論に踏み込みたいなら合格後にしましょう)
Re: 部分意匠についての整理 – 受験生A
2019/04/11 (Thu) 04:07:02
管理人 様
ご回答ありがとうございました。
全てお伺いしたい点につき、お答えして頂けておりました。
(2)③は確かに3条の2で登録されませんでした。色々考えているうちによくわからなくなっておりました(汗
確認および追加の疑問点なのですが
>>(2)①(イ)原則利用関係が成立するでしょうが、先出願による通常実施権とかもあるので、必ず制限を受けるわけではないです。
の部分は後願にかかる全体意匠は先出願にはならないため、あるとしたらいわゆる先使用権のことでよいのでしょうか。
ちなみになのですが、先使用権が成立するケースの時には、
①後願にかかる全体意匠の販売等外部への露出を伴う実施があるケースでは、先願にかかる部分意匠は、いわゆる4要件を満たしていれば公知意匠(後願にかかる意匠の製品)と類似のため3条1項3号の無効理由があるという処理になるという思考でよろしいでしょうか(よって無効審判およびいわゆる無効の抗弁を行うという行動になる)。
他方、
②製造に留まる実施または準備があるにとどまるケースでは公知とは言えないため、必ず先使用権の抗弁ができるに留まるという事でよいでしょうか。
追加になってしまいすいません。よろしくお願いします
Re: 部分意匠についての整理 – 管理人
2019/04/11 (Thu) 09:09:52
(2)①(イ)は先使用ですね。
先出願に係る全体意匠が拒絶されたので、後願全体意匠を出願しなおしたケースを考えましたが、自己が出願した意匠に類似する意匠は実施できないので該当しませんね。
なお、「必ず」が気になったので付言しました。
論文でも短答でも気を付けるべき記載です。
①の無効理由は意3条1項1号(同一)、3号(類似)、同2項(物品は非類似だが容易に創作可能)ですね。
②の抗弁は、「必ず」とありますが、原則できるでしょう。
例外的に、事業を廃止した後に再開した場合等には、抗弁できない可能性があります。
Re: 部分意匠についての整理 – 受験生A
2019/04/13 (Sat) 03:13:13
あ・・・
確かにいわゆる4要件は全部同一であれば同一になるから3条1項1号のケースがあって、類似が否定されても2項の可能性があるんですね。
完全に見落としておりました。。。
必ずというのは例外なくという事の確認のつもりでした。
しかしながら、やっぱり例外があるのですね。
部分意匠周りの知識の整理に大変参考になりました。
ありがとうございました!!!
また勉強が進むうち解決できない疑問が出た際にはよろしくお願いします。
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