未登録意匠での利用
23条と26条 – 論文受験者A
2013/05/19 (Sun) 08:50:33
意匠法についてうかがいます。
甲はハンドルの部分意匠イの権利を有しており(物品は自転車)、乙は当該自転車を販売しているとします。この自転車はハンドルを含んでいます。この場合、甲は23条と26条のどちらで権利行使することになるのでしょうか。よく審査基準にあるいわゆる4要件で類比判断をした場合、類似するのなら23条侵害とするのでしょうか。仮に非類似の場合は利用関係で侵害とするのでしょうか。
Re: 23条と26条 – 碧
2013/05/19 (Sun) 22:53:00
自分の復習も兼ねて…。
ハンドルの部分意匠に係る意匠権(物品:自転車)であれば、物品同一ですので、乙の自転車のハンドルに係る部分の形態等の類否判断で、類似ならば侵害(23条)、非類似ならば非侵害ではないでしょうか。
また、部分意匠の意匠権と全体意匠の被疑侵害品の場合、そもそも意匠に係る物品が同一であれば23条のみの問題なのではないかと思います。
なお、利用関係については26条1項で登録意匠と同一、26条2項で類似を規定しているので、形態非類似であれば利用関係は生じないのではないでしょうか。
部分意匠に係る意匠権と全体意匠に係る被疑侵害品の間で26条の適用を検討する必要性が生じるケースは、自転車の例ですと、「ハンドルの取っ手の握り部分の部分意匠(物品:自転車のハンドル)」の意匠権に対して、被疑侵害品が「自転車」の場合のように思います。
Re: 23条と26条 – 白服 URL
2013/05/20 (Mon) 00:59:25
私は碧さんの考えに賛成です。
この事例は、部分意匠制度を利用する意義を表した単純な設問であると思います。26条を考える必要はありません。
余談ですが、「26条で権利行使」とは、どういう意味なのでしょうか? 何らかの誤解があるように見受けられます。
26条が示しているのは、「利用」関係が成立する場合の先願権利者と後願権利者との調整であって、後願に係る意匠権を有しているからといって、先願に係る意匠権の排他権に対抗することはできないということです。つまり、侵害を追及された後願権利者が、「自己の意匠権を実施しているのだ」と主張するのは、抗弁にはならないということです。
このように、26条は、直接的に権利侵害を追及する条文ではありません。条文上、意匠権の侵害の根拠条文は、23条と38条しかありません。「利用」が成立する場合も、侵害の根拠は結局は23条です。「利用」の概念を用いるとしたら、訴状の請求の理由における理論構成に用いることになるでしょう。
いきなり部分意匠と26条との関係を考えるのは難しいので、まずは、部品の意匠(ハンドル)と、これを含む完成品の意匠(自転車(=ハンドルとは物品非類似))との関係から掴んでいってはいかがでしょうか?
なお、部分意匠の「利用」の事例としては、碧さんの回答の最終段落のような事例が考えられます。
Re: 23条と26条 – 論文受験者
2013/05/21 (Tue) 12:36:53
回答ありがとうございます。
「26条で権利行使」は私の間違いです。申し訳ありません。
よく、問題でいわゆる4要件で類比判断をした場合、類似するのなら23条侵害。非類似の場合であっても利用関係の場合を検討する回答例があります。
部分意匠と全体意匠の利用関係の有無を調べる場合も4要件を検討して、「後願の意匠の要旨が先願のこれを含む場合は利用関係なので、非類似であっても侵害となる。」と回答がある場合があります。
非類似であっても要旨を取り込んでいる利用関係の場合は侵害するということでしょうか。
ただ、その場合も4要件で結局、類否判断と同じ検討を行っているように思え(23条の場合・・4要件で類否判断。26条の場合・・4要件で要旨を取り込んでいるかという(類否?)判断?)、これがよく分からない点です。
Re: 23条と26条 – 管理人
2013/05/22 (Wed) 11:56:37
御質問の点は「学習机事件」(http://benrishi-hanrei.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-5891.html)そのままなので、こちらを把握すれば御理解いただけると思います。
簡単に言えば、意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するということです。
例えば、第三者が実施する意匠が、その一部に他人の登録意匠利用するものである場合には、当該登録意匠の実施に当たり、侵害となるということです。
これは意26条の考え方に基づくものですが、意26条を適用しているわけではないので注意して下さい。
ポイントは、全体として非類似であっても、利用関係(意26条類推)が成立する場合には意23条に基づく侵害となるということです。
そのため、後の事例のあてはめは、意26条の場合とほぼ同じになります。
つまり、4要件の判断→非類似→利用の認定(しかし、他人の登録意匠等の内容をそっくりそのまま自己の意匠の中に取り込んでおり、利用関係が成立する等)→侵害の結論→理由付け(意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するからである等)となります。
Re: 23条と26条 – 管理人
2013/05/22 (Wed) 15:00:55
念のために補足します。
「甲はハンドルの部分意匠イの権利を有しており(物品は自転車)、乙は当該自転車を販売している」という事例については、碧さんがおっしゃる通りです。
つまり、物品同一で類似ならば侵害(意23条)、非類似ならば非侵害となります。
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