野村証券職務発明事件で発明者は賠償金を獲得している
野村証券の元社員が発明の対価を求める訴訟を起こした当事件(平成26年(ネ)第10126号)は、
平成16年改正後の特許法35条が適用された事例として注目を集めています。
本事例を簡単に説明すると、知財高裁は支払に至る手続面(協議の状況、開示の状況、意見の聴取の状況)のいずれについても、法の趣旨を逸脱しているとして、発明規程に基づいて相当の対価を支払わないとしたことは不合理であると結論づけました。
つまり、相当の対価の不合理性判断においては、手続きが適正であるか否かがまず判断されることを示しました。
ただし、最終的な結果としては、会社が本発明を実施していないため独占的利益は生じていないとして、相当の対価が生じていない(つまり対価は0円)とされました。
これにより、発明者は勝負に勝って試合に負けた(内容面では勝ったけれど相当の対価が否定されたので訴訟では負けた)と評されることが多いように思います。
しかし、実際には発明者は損害賠償金として8200万円を勝ち取ってるんですね。
訴訟で負けたのに賠償金を獲得できた理由はこうです。
まず、前訴(平成25年(ワ)第6158号)の判決文をよく読むと、解雇の有効性をめぐる別件訴訟(平成24年(ワ)第22452号)があることが記されています。
そこで、この訴訟の記録を閲覧してみると・・・第一審では野村証券が負け(583万4000円+遅延損害金の賠償)で、控訴審で和解が成立しています。
そして、その和解条項の中に8200万円の損害賠償の支払いが定められているのです。
結局、発明者は勝負に勝って試合(別件訴訟)にも勝ってたんですね。
この辺り、職務発明セミナーのネタになりそうです。
ちなみに、訴訟に至った経緯を簡単にまとめると以下の通りです。
①発明の対価についていさかいが生じる
②野村証券が社外へのデータ転送を理由に発明者を解雇する
③発明者が解雇無効を求めて提訴(別件訴訟)※その後解雇無効で勝訴
④発明者が相当の対価の支払いを求めて提訴※その後相当の対価が否定され敗訴
⑤発明者と野村証券とが和解※8200万円の損害賠償+解雇の意思表示の撤回(ただし、雇用契約は終了)
参考:野村:東京勤務の元幹部と和解成立、解雇撤回と8200万円の支払いで(Bloomberg.co.jp)
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