在職中に創作した発明を転職先で出願した件

在職中に創作した発明を転職先で出願した件
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特許を受ける権利の確認等請求控訴事件(平成19年(ワ)第12655号)
特許を受ける権利の確認等請求控訴事件(平成21年(ネ)第10017号)
従業者が転職前にした職務発明に関して、
転職先の会社で特許出願をしたケースにおいて、
元会社が特許を受ける権利を有することの確認を求めた事件です。
まず、元会社では予約承継が規定されていたため、
承継自体は認められています。
しかし、
「社員が会社の業務範囲に属する事項について発明、考案した場合は、遅延なく所定の手続きにより所属長に届け出し、その発明、考案が現在又は過去の職務に関するものであると会社が認めた場合は、工業所有権を受ける権利を会社に譲渡しなければならない。」
との部分で、
「従業者等の届出,原告による職務関連性の認定,従業者等と原告との間の譲渡が必要であるようにも読める。」
と、述べられており、
ちょっと危険だった部分もありました。
この事件では、
「業務に関する発明・考案・意匠の創作をなした時は、その発明・考案・意匠の創作に至った行為が会社における現在または過去の職務に属する時はその発明・考案・意匠の創作につき国内及び外国における工業所有権を出願する権利(以下出願権と言う)および工業所有権を受ける権利は、会社がこれを承継する。」
との規定もあったことから予約承継が認められており、
この規定がなかったら、予約承継が認められなかったかもしれません。
また、
「第8条の工業所有権の出願を行わないものについては会社がなお承継の必要を認めたものを除いて、その工業所有権を受ける権利を発明・考案・意匠の創作者に返還する。」
との規定があり、さらに元会社が特許出願をしていなかったため、
特許を受ける権利を元会社が放棄しているか否かも争点になってしまいました。
ただし、元会社は出願をしなかっただけであり、
返還(放棄)したという事実はなく、
結果、放棄していないと認められています。
これについは、規定通りかなと思いますが、
「工業所有権の出願を行わないものについては、その工業所有権を受ける権利を発明・考案・意匠の創作者に返還する。」
という規定だったら、危なかったでしょう。
出願しない場合に特許を受ける権利を返還するというのは、
会社を報償義務から開放する一方、
従業者が自由に出願や、特許を受ける権利の譲渡を行うことができるようになるので、
注意が必要ですね。
さて、本事件の中心は、
発明者(転職した従業者)が特許を受ける権利を二重譲渡している点にあります。
ご存知の通り、出願前の特許を受ける権利の承継は、
出願が第三者対抗要件になります(特34条1項)。
そのため、原則としては、
元会社は、転職先会社に対抗できません。
東京地裁では、この点をもって、元会社の訴えを退けています。
しかし、知財高裁では、
①退職時に秘密保持義務を負う誓約書を提出していること、
②転職先会社は、元会社で創作された発明であると知っていたと推認されること、
を理由に、
「被控訴人の特許出願は,控訴人において職務発明としてされた控訴人の秘密である本件発明を取得して,そのことを知りながらそのまま出願したものと評価することができるから,被控訴人は「背信的悪意者」に当たるというべきであり,被控訴人が先に特許出願したからといって,それをもって控訴人に対抗することができるとするのは,信義誠実の原則に反して許されず,控訴人は,本件特許を受ける権利の承継を被控訴人に対抗することができるというべきである。」
として、地裁の判断を覆しています。
これにしても、
退職後の秘密保持義務がなければ、
認められなかったでしょうね。
危ない危ない。
職務発明取扱規定等は、
やはり、きちんと整備する必要がありますね。
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